2017年 司法試験 論文式 労働法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。
【事 例】
1.Y社は約200名の従業員を擁する会社であり,その従業員によって構成されるA労働組合(以下「A組合」という。)との間で締結した労働協約(以下「本件協約」という。)において,従業員はA組合の組合員でなければならないこと,A組合に加入しない者,A組合から脱退した者又は除名された者は解雇すること,A組合を唯一の交渉団体とすること等の定めを置いており,実際にも組合員となる資格を有するY社の従業員全員がA組合に所属していた。
Y社の従業員であるX1は,Y社に対して協調的姿勢に終始し,労働条件の改善に向けた積極的姿勢が見えないA組合の執行部にかねてより強い不満を抱いており,平成28年の冬季賞与の支給額についてA組合が前年度より低い水準でY社と合意したことをきっかけとして,同じような不満を抱いていた同僚約20名を誘いA組合を脱退することを決意し,同年12月15日にA組合に脱退届を提出した。X1は,同日の脱退届提出後,同年中には新組合を結成することを予定していた。しかし,「A組合を脱退した場合には解雇が避けられない」などと警告するA組合の委員長名の文書が社内のA組合の掲示板に掲示されたことにより,脱退を予定していた同僚の間で動揺が広がった。その結果,最終的にA組合に脱退届を提出したのはX1のほかにはX2~X15の14名にとどまり,14名が脱退届を提出した時期も平成29年1月15日にずれ込んだ。同月30日には新組合であるB労働組合(以下「B組合」という。)の結成総会が開催されて,X1が委員長に選任されたが,A組合に脱退届を提出した計15名のうち,B組合に参加したのはX1のほかX2~X10の9名であり,X11~X15の5名はB組合に参加しなかった。
この間,A組合は,Y社に対して,脱退届が提出される都度,脱退者名を通知した上,本件協約に基づき解雇するよう求めた。これを受け,Y社は,X1に対しては,平成29年1月5日に解雇の通知を行い,同年1月15日に脱退届を提出した者のうち,早くから新組合への参加を表明していたX2,X11に対しても,A組合からの集団脱退を扇動した立場にあるとして同年2月5日に解雇の通知を行ったが,それ以外の者は解雇しなかった。
2.B組合は,結成総会の開催後直ちに,Y社に対して,組合脱退を理由とする解雇は許されないとしてX1の解雇の撤回を要求し,2月5日に解雇通知を受けたX2についても,同様に解雇の撤回を要求し,これらにつき団体交渉を求めた。また,B組合は,Y社施設内において,A組合と同様の組合事務所及び掲示板のためのスペースの供与,具体的には,机や椅子等の備品を収納するために使用していた部屋を組合事務所として,従業員食堂出入り口に設置してある会社広報掲示板の一部をB組合の掲示板として,それぞれ利用することについても団体交渉を要求した。
これに対してY社は,B組合に対し,⑴本件協約においてA組合を唯一の交渉団体とする旨の条項を置いているので,B組合との団体交渉には応じられない,⑵X1,X2の解雇は本件協約に基づくもので適法であり,その効力を争うのであれば,団体交渉ではなく,訴訟によるべきである,⑶そもそも現状では,B組合に対する事務所,掲示板スペースを確保することは困難であるので団体交渉を行っても意味はない旨,文書で回答した。
〔設 問〕
1.X1,X2,X11が,Y社に対し,解雇の無効を主張して労働契約上の地位の確認を求める場合に,検討すべき法律上の論点を挙げて,あなたの意見を述べなさい。
2.B組合のY社に対する要求とこれに対するY社の対応について,検討すべき法律上の論点を挙げて,あなたの意見を述べなさい。
出典:法務省「2017年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。