2017年 司法試験 論文式 国際関係法(公法系) 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
A国は海に面する国であり,国内法によって基線から200海里までを排他的経済水域として定めている。また,A国では,水産資源枯渇のためA国民に対してもタコの漁獲を厳しく規制しており,同国の排他的経済水域内では,外国人によるタコの漁獲を国内法の外国漁船取締法により禁止している。
A国の巡視艇甲に乗船していたA国の沿岸警備官は,A国の基線から約180海里の排他的経済水域内で,B国の国旗を掲げた漁船乙がタコを漁獲している現場を視認した。巡視艇甲が,漁船乙に対して停船を命じたところ,漁船乙はこれを無視して逃走を開始した。巡視艇甲は,漁船乙に対して停船を命じながら継続して漁船乙を追跡し,A国の基線から約210海里の公海上でようやく漁船乙を停船させることに成功した。A国の沿岸警備官がその場で漁船乙に乗船して漁船乙の船内を検査したところ,タコが船内に大量に保管されているのを発見した。このためA国の沿岸警備官は,漁船乙の船長X以下乗組員全員の身柄を拘束し,漁船乙をA国の港まで曳航した。
A国の検察当局は,外国漁船取締法違反の容疑で漁船乙の船長XをA国の裁判所に起訴した。その後,船長X以外の漁船乙の乗組員はA国当局から身柄を釈放され,本国であるB国に帰国したが,船長XはA国当局に身柄を拘束され続けた。なお,漁船乙はB国の水産会社であるY社が所有するものであり,B国の船籍を有する。また,漁船乙の乗組員は,船長Xを含め全てB国の国籍を有している。A国とB国は,いずれも海洋法に関する国際連合条約の当事国である。
〔設 問〕
1.A国の巡視艇甲がB国の漁船乙をA国の基線から約210海里の公海上で拿捕した行為は,国際法上どのように評価できるか。関係する条文等その法的根拠を挙げながら論じなさい。
2.B国が本件に関してA国に対して取り得る国際法上の手段について,漁船乙を所有するY社の対応も視野に入れつつ,関係する条文等その法的根拠を挙げながら論じなさい。
3.A国の外国漁船取締法は,A国の排他的経済水域内で違法に漁業を行った外国人に対して1年以下の懲役又は10万米ドル相当以下の罰金を科すことを定めており,A国の第一審裁判所は,B国が本件に関してA国に対して何ら具体的な行動を取らない間に,Xに対して同法違反を理由に懲役6か月の実刑判決を下し,この判決が確定したとする。この場合,B国は本件に関してA国に対してどのような国際法上の請求を行うことができるかについて論じなさい。
出典:法務省「2017年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。