司法試験論文式過去問演習

過去問の答案を投稿・採点

2017年 司法試験 論文式 経済法 第1問

問題

配点 50点

[経 済 法]

〔第1問〕(配点:50)

A社,B社及びC社は,特定の化学物質の検査機器甲を製造して日本国内の検査機関に販売する事業を営んでおり,日本国内の甲の市場におけるシェアは,順に40パーセント,30パーセント及び30パーセントである。日本では当該化学物質に対する規制が特に厳しく,その規制に対応する甲が必要となるため,日本国内の検査機関においては,外国製の甲は使用されていない。A社製の甲は,他社製の甲に比してやや価格が高いものの,その機能と信頼性により高い評価を得ている。ただ,近年はB社及びC社も甲の機能向上と売り込みに力を入れており,甲の販売競争は激しくなっている。

甲は,1台数億円で販売される精密機器であり,その検査精度を維持するためには,年1回,当該甲を製造したメーカーによる定期点検を受けることが不可欠である。A社,B社及びC社は,甲の販売後10年間は無償で当該甲の定期点検を行っているが,10年経過後は,A社は1回につき600万円,B社及びC社も1回につき500~600万円の費用を徴収して定期点検を行っている。さらに,甲が古くなり不具合が度々生じるようになった場合には,当該甲を製造したメーカーにオーバーホール(部品単位まで分解して点検・洗浄を行い,新品同様の状態に戻すこと)を依頼することもできるが,その費用は,A社は1200万円であり,B社及びC社も同程度である。甲の仕様はメーカーごとに相当に異なり,当該メーカー固有の部品が使用されている箇所も多いため,当該甲を製造したメーカー以外の者が定期点検やオーバーホールを行うことは困難である。

甲を使用するには,メーカーごとの規格に適合する検査キット乙(消耗品)が必要である。A社製の甲向けの乙はB社及びC社製の甲には使用できず,B社及びC社製の甲向けの乙はA社製の甲には使用できない。A社製の甲向けの乙は,A社が製造販売しているほか,甲を製造していない日本国内の独立系事業者D社及びE社も近年製造販売を開始している。A社製の甲向けの乙1年分の販売価格は,A社は1000万円であるが,D社及びE社は800万円前後である。A社製の甲向けの乙の市場シェアは,現在はA社70パーセント,D社20パーセント,E社10パーセントであるが,D社又はE社製の乙でも使用上は特に問題ないとの評価が定着しつつあり,上記のような販売価格差もあって,A社製の乙のシェアは低下し続けている。乙の利益率(販売価格に占める利益の割合)は大きく,ここ数年,A社では乙の売上げが主要な収益源となっている。

近年,A社製の甲にD社又はE社製の乙を使用した際に異常な検査結果が出力されるトラブルが生じたとの報告が散見されるようになった。ただ,A社製の乙を使用した際に類似のトラブルが生じたとの報告もかねてより存在しており,D社又はE社製の乙の使用が上記のトラブルの原因であることが科学的に立証されるには至っていない。

A社は,D社又はE社製の乙の使用が上記のトラブルの原因である可能性は否定できず,D社又はE社製の乙が使用された場合には,定期点検だけでは甲の検査精度を保証できないとの理由により,今後販売する甲については,「顧客が当該甲に他社製の乙を使用した場合には,その使用後最初に到来する定期点検の時期においては,販売後10年経過前であっても,定期点検は行わず,600万円の追加費用の支払を条件としてオーバーホールを行う。オーバーホールの後に再び他社製の乙を使用した場合も,同様とする。」との約定を付して販売することを計画(以下「本件計画」という。)している。

〔設 問〕

本件計画の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)上の問題点について検討しなさい。

出典:法務省「2017年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。