司法試験論文式過去問演習

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2014年 司法試験 論文式 租税法 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

A(居住者)は,住所地の市内に甲,乙及び丙の3棟の建物を建てることにし,建築施工をH株式会社(以下「H社」という。)に請け負わせた。3棟はいずれも昭和49年中に竣工した。Aは甲を自身及び家族の住居として使用し,乙を自身が営む小売業の店舗の1つとして使用してきたが,丙は竣工の直後,自身が代表取締役社長を務めるB株式会社(暦年を事業年度とする内国法人。以下「B社」という。)に売却し,B社は丙を本店の建物として使用してきた。

Aは,平成24年に,甲にはまだ十分に資産価値があったものの手狭になったことから,甲を建て替えることにし,P社に解体工事を請け負わせた。P社は,解体工事の過程で,甲の建築部材の一部にアスベストと思われる物質が使用されていることが判明したため,Q社にアスベストの使用の有無に関する事前調査を実施させたところ,アスベストの使用が確認されたので,Q社にアスベスト除去作業をも実施させ,Aから解体費用の一部として当該事前調査及び除去作業に要した費用(以下「甲費用」という。)の支払を受けた。

Aは,甲,乙及び丙の建築に当たりH社に対し,アスベストの使用の可否に関する指示を全くしていなかったことから,H社に乙及び丙に関するアスベストの使用の有無を照会したところ,「弊社では,昭和50年4月1日から開始した事業年度以降はアスベストは全面的に使用しておりませんが,それ以前は建築施工を請け負った建物の全てにアスベストを使用しておりましたので,御照会のありました乙及び丙にもアスベストが使用されております。」との回答があった。Aは,この回答を受けて両建物の扱いについて検討したが,両建物はまだ十分に使用可能であり減価償却に係る未償却残高も少なくなかったので,あれこれ迷った末に,乙については,同店舗での売上げがずっと不振であったことや乙の敷地は更地にした方が高く売却することができると前々から聞いていたことから,乙を取り壊した上で,その敷地を更地にして売却することにし,他方,丙については,B社の取締役会に諮ることにした。B社の取締役会では,「当社の業績が好調な今のうちに建て替えておくべきだ。」との意見が多数を占めたため,丙は建て替えられることになった。

乙及び丙についても解体工事はP社が請け負ったが,P社は,アスベスト除去作業をQ社に実施させ,平成24年末に,A及びB社からそれぞれ解体費用の一部として当該除去作業に要した費用(以下「乙費用」,「丙費用」という。)の支払を受けた。乙の解体工事は乙費用の支払の10日前に完了したが,床面積が乙の10倍ほどあった丙については,Q社によるアスベスト除去作業は丙費用の支払の10日前に完了したものの,解体工事は平成25年3月末までかかった。P社は,その翌月,A及びB社から解体費用の残額の支払を受けた。

Aは,乙の敷地であった土地を,乙の取壊しの前よりもかなり高い額で売却する契約を,乙の解体工事完了の翌日に締結することができ,平成24年中に当該土地の引渡しを行い,その売却代金を小売業の借入金の返済に充てた。

アスベストは,甲,乙及び丙の建築当時は,法的規制の対象とはされておらず,これを建築部材として使用することは何ら違法ではなく一般に行われていたが,その後アスベストに対する法的規制が段階的に強化され,平成16年には製造,使用等が法令上原則的に禁止され,平成17年には,建築物等の解体等の作業を行う事業者に対して,作業員の健康被害を防ぐために、アスベストの使用の有無に関する事前調査,アスベストが使用された建築物等の解体等の作業を行う場合におけるアスベストの除去等の作業などが,法令上義務付けられた。

以上の事案について,以下の設問に答えなさい。

〔設 問〕

1 Aは甲費用について雑損控除の適用を受けることができるか。雑損控除制度の趣旨に言及しつつ,検討しなさい。

2 乙費用は,Aに対する所得税の課税上,どのように取り扱われるか。

3 丙費用は,B社に対する法人税の課税上,どのように取り扱われるか。

(参照条文)所得税法施行令

(災害の範囲)

第9条 法第2条第1項第27号(災害の意義)に規定する政令で定める災害は,冷害,雪害,干害,落雷,噴火その他の自然現象の異変による災害及び鉱害,火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫,害獣その他の生物による異常な災害とする。

(雑損控除の対象となる雑損失の範囲等)

第206条 法第72条第1項(雑損控除)に規定する政令で定めるやむを得ない支出は,次に掲げる支出とする。

一 災害により法第72条第1項に規定する資産(以下この項において「住宅家財等」という。)が滅失し,損壊し又はその価値が減少したことによる当該住宅家財等の取壊し又は除去のための支出その他の付随する支出

二 災害により住宅家財等が損壊し又はその価値が減少した場合その他災害により当該住宅家財等を使用することが困難となつた場合において,その災害のやんだ日の翌日から1年を経過した日(大規模な災害の場合その他やむを得ない事情がある場合には,3年を経過した日)の前日までにした次に掲げる支出その他これらに類する支出

イ 災害により生じた土砂その他の障害物を除去するための支出

ロ 当該住宅家財等の原状回復のための支出(当該災害により生じた当該住宅家財等の第3項に規定する損失の金額に相当する部分の支出を除く。第4号において同じ。)

ハ 当該住宅家財等の損壊又はその価値の減少を防止するための支出

三 災害により住宅家財等につき現に被害が生じ,又はまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合において,当該住宅家財等に係る被害の拡大又は発生を防止するため緊急に必要な措置を講ずるための支出

四 盗難又は横領による損失が生じた住宅家財等の原状回復のための支出その他これに類する支出

2 法第72条第1項第1号に規定する政令で定める金額は,その年においてした前項第1号から第3号までに掲げる支出の金額(保険金,損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)とする。

3 法第72条第1項の規定を適用する場合には,同項に規定する資産について受けた損失の金額は,当該損失を生じた時の直前におけるその資産の価額を基礎として計算するものとする。

出典:法務省「2014年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。