司法試験論文式過去問演習

過去問の答案を投稿・採点

2013年 司法試験 論文式 国際関係法(公法系) 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

公海上を航行中のA国を旗国とする豪華旅客船甲において,B国籍の乗組員乙と,旅客として乗り合わせたC国籍の丙が,些細なことで口論となり,激高した丙が乙を突き飛ばした。乙は,そばにあった階段を転げ落ち,頭部を強打して死亡してしまった。船長の緊急連絡を受け,近くに居合わせたB国のコーストガードの艦艇が当該旅客船甲に接近して,最寄りのB国の港に入港するように呼び掛けた。船長はこれに同意し,当該旅客船甲はB国の港に緊急入港したところ,急遽,B国の警察官数名が船舶内に乗り込み,直ちに旅客丙を逮捕した。丙は,現在,B国における刑事手続に服している。旅客丙の国籍国C国は,自国民丙に対するB国による管轄権の行使に対して抗議している。なお,当該旅客船甲の旗国であるA国は,丙に対する刑事手続の執行に関するB国からの照会に対し,特段の異議を表明していない。

ところで,B国とC国との間には犯罪人引渡条約が締結されており,同条約は,政治犯罪人の不引渡しを規定する条文を含んでいる。C国は,人権抑圧政策で国際社会から非難されている国であり,旅客丙はC国政府に対して,人権擁護運動を積極的に行っている著名な反政府活動家である。このような中C国は,犯罪人引渡条約に基づいて,傷害致死罪を引渡事由としてB国に対して旅客丙の引渡しを求めた。これに対して,丙は,C国に引き渡されれば,傷害致死罪以外の政治犯罪を含む他の罪で訴追される可能性があると疑っている。

また,当該旅客船甲にB国警察官が乗り込んだ際に,旅客丙の客室を捜索していた警察官が,適切な令状もないままに隣の客室をも捜索する必要があると述べて丙の客室の隣にあるC国籍の旅客丁の客室内に押し入り,当該客室内にあった高額の宝石類を盗んでいたことが発覚した。当該警察官は,既に宝石類を換金し,手に入れた金銭を全て費消している。

以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。

〔設 問〕

1.B国による刑事管轄権行使に関し,B国は,自らの執行管轄権の行使を正当化する根拠をどのように主張できるかを論じなさい。

2.C国からの犯罪人引渡条約に基づく旅客丙の引渡要請に対して,仮にB国が丙をC国に引き渡す意思があるとして,政治犯罪人不引渡しの観点から,丙をC国に引き渡すことができるか,また,引き渡す場合,丙が政治犯罪人として訴追されないようにするために,どのように応ずるべきか論じなさい。

3.B国警察官による旅客丁の財産の窃盗により丁が損害を被ったことについて,C国は,国際法上,B国に対しどのような責任追及ができるか事実関係に即して論じなさい。

出典:法務省「2013年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。