2013年 司法試験 論文式 知的財産法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
小説家であるAは,古代中国の春秋戦国時代に生きた武将αの数奇な生涯を描いた小説(以下「本件小説」という。)を執筆した。
漫画家であるBは,Aの承諾を得て,本件小説を原作とした連載漫画(以下「本件漫画」という。)を執筆した。その際,Bは,本件小説に登場する主人公の武将αその他の登場人物の特徴について,本件小説に言語で描かれている特徴を踏まえながらも漫画として描くにふさわしい容姿を自ら考え出し,それぞれが身に着ける甲冑や衣装についても,数々の古代中国の資料を参考にし,さらに漫画としての特徴を出すべく,西洋風の甲冑や衣装の要素も取り入れながら,独自の視点を加味して描いた。
以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えよ。ただし,著作者人格権について触れる必要はない。
〔設 問〕
1.映画製作会社Cは,本件漫画に登場する武将αを主人公としたアニメーションを製作し,それをDVDとして販売したいと考え,この企画をBに持ちかけたところBの承諾を得たので,Aの承諾を得ないまま,同アニメーション(以下「本件アニメ」という。)を製作した。本件アニメは,Bが描いた本件漫画の登場人物の作画を忠実にアニメ化したものではあるが,その物語の展開は本件小説には全く描かれていない独自の内容であった。
Aは,Cに対して,本件アニメのDVDの製造・販売の差止めを求めるためにどのような主張をすべきか。
これに対するCの反論としてどのような主張が考えられるか。
双方の主張の妥当性についても論ぜよ。
2.イベント主催会社Dは,各漫画雑誌に掲載された人気漫画の原画を展示して紹介するイベント(以下「本件イベント」という。)を企画し,その際,所有者の承諾を得て本件漫画の原画を展示する予定であるが,その一方で,A及びBに無断で,展示される武将αが描かれている本件漫画の原画の1枚を,A5版30頁の観覧者向けパンフレット(以下「本件パンフレット」という。)において,1頁の約3分の2の大きさで掲載し,それに簡単な解説を付けた上で,これをイベント会場において観覧者に販売しようとしている。
また,Dは,本件イベントの入場前売りチケット(以下「本件チケット」という。)にも,A及びBに無断で,本件漫画の原画の1コマを印刷して,これを販売しようとしている。なお,本件チケットは,上記原画の1コマを除けば,本件イベントの名称,本件イベントの日時場所が記載されているにすぎないものであった。
Bは,Dに対して,本件パンフレット及び本件チケットの販売の差止めを求めるためにどのような主張をすべきか。
これに対するDの反論としてどのような主張が考えられるか。
双方の主張の妥当性についても論ぜよ。
3.玩具製造業者Eは,A及びBの承諾を得て,本件漫画の主人公である武将αの小型のプラスチック製人形(以下「本件フィギュア」という。)を製作し,これを大量に販売している。本件フィギュアは,手足の関節が自由に屈折し,付属の甲冑の着せ替えができる高さ8センチメートルほどのおもちゃの人形ではあったが,その模型原型は,武将αの全体像についてEの従業員である造形師が想像力を駆使して造形したものであり,本件漫画では十分に描かれていない前後左右から見た武将αの容姿及び甲冑の立体的形状や色彩,金属としての光沢などがまるで本物のような質感で造形されており,小さいながらも極めて精細かつ色鮮やかで躍動感にあふれる形態のものであった。
菓子製造販売業者Fは,A,B及びEに無断で,自らが製造販売するスナック菓子のおまけとして本件フィギュアを細部まで模倣して小型化した武将αのプラスチック製人形を製造して,これを消費者に提供しようとしている。
E及びBは,Fに対して,上記行為の差止めを求めるためにどのような主張をすべきか。
これに対するFの反論としてどのような主張が考えられるか。
双方の主張の妥当性についても論ぜよ。
出典:法務省「2013年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。