2012年 司法試験 論文式 租税法 第1問
問題
配点 50点[租 税 法]
〔第1問〕(配点:50)
上場会社であるX社(暦年を事業年度とする内国法人。)は,同社の知名度を上げるとともに,同社の新規投資先発掘を目的として,X社の商号を冠した「X起業大賞」という起業企画コンペを行った。X社は,平成21年10月に,X社が大賞受賞者と起業支援のための起業支援契約を締結することなどを盛り込んだ募集要項を発表,平成22年10月に優秀者5名を決定し,うち1名を最優秀者としてX起業大賞を授与することとした。
甲(居住者)は,子供の頃から,いつかは自分が発明したロボット製品を世界中に広めたいという夢を持ち,工学系大学院修了後は,実家に住み,叔父が経営するY精密機械工場(以下「Y」という。)で働きながら,実家の物置を改装した作業場で,大学院在学中に自分が取った特許技術を応用した比較的低価格で製造可能な介護支援用ロボット「OKくん」の商品開発を続けていた。甲は,ロボット専門誌でX起業大賞のことを知り,ここが人生の正念場と考えて起業の決意を固め,平成21年末にYを退職し,その後,退職時にYから受けた退職金100万円を軍資金とし,叔父の好意でYの工場の一角と工作機械を使わせてもらい,OKくんの商品性の改良と企画書作りに専念した。甲は,平成22年3月の締切りぎりぎりにOKくん起業企画書を仕上げて応募し,同年4月から発表までの間も,父親から300万円を借金してOKくんの商品性の改良にまい進していたところ,最優秀者に選ばれた。
平成22年11月1日に行われたX起業大賞表彰式において,優秀者5名に対して,X社から奨励金として500万円が入った金一封が授与され,最優秀者甲には,この金一封に加えて,甲を宛先とし,X社代表取締役社長名義で記名押印され,「貴殿がX起業大賞に応募したOKくん起業企画書を最優秀と認め,奨励金500万円を授与するとともに,①正賞として,総額で最高5000万円までの起業支援金を授与し,②副賞として,貴殿がX社のビジネス・パートナーとなった証として,X社普通株式1000株を授与する。また,X社は,本日付けで募集要項記載の起業支援契約を貴殿と締結したことを確認する。」と記載されたX起業大賞目録が授与された。「起業支援契約」の主要な条項は下記のとおりである。
第1条(起業支援金支払条件)
X社は,甲に対し,本契約に定める条件に従って,X起業大賞目録記載の正賞として,起業支援金を支払う。ただし,X社は,OKくん起業企画書(以下「甲起業企画書」という。)の企画を実行するための費用として,本契約有効期間中に発生したものにつき,甲がX社に対してその請求書又は領収書を提出することを条件として,当該費用相当額を,本条に基づく起業支援金として,累積合計5000万円に至るまで支払うものとする。
第2条(協議及び独占販売権)
甲は,甲起業企画書の企画達成状況につき,本契約有効期間中,少なくとも1か月に1回,更にX社が希望する場合には随時,X社に報告しなければならない。X社は,甲起業企画書記載の商品につき,別途合意する売買条件で,本契約の期間満了日前でX社が指定する日(以下「独占販売契約開始日」という。)から2年間の独占販売権を甲から受ける権利を有する。
第3条(起業支援金残額の取扱い)
第1条の規定にかかわらず,①甲が独占販売契約開始日までに同条に基づいてX社に請求した起業支援金の累積合計が5000万円に満たなかった場合には,X社は甲に対し,未請求分の起業支援金残額を独占販売契約開始日に支払うものとするが,②X社が本契約の期間満了日までに独占販売契約開始日を指定しなかった場合には,甲はX社に対し,未請求分の起業支援金残額の支払を請求することはできない。
第4条(契約期間)
本契約の有効期間は,平成22年11月1日から,①X社が第2条に基づいて独占販売契約開始日を指定した場合には,X社が指定した独占販売契約開始日の前日,又は②平成23年11月1日のいずれか早い方の日までとする。
甲は,奨励金500万円で父親からの借金の返済もでき,平成22年11月にはようやく念願の新作業場を賃借し,アルバイトを雇って試作品の製作を開始した。その後のOKくん発売までの道のりは次のとおりであった。
平成22年
平成23年
甲に対する副賞のX社普通株式1000株は,X社側の必要手続や甲側の証券口座開設手続等いろいろな手続に時間が掛かり,結局,平成23年4月1日にX社から甲に引き渡された。なお,甲が表彰式においてX起業大賞目録を受け取った日である平成22年11月1日におけるX社普通株式の株価は,1株2万円であったが,その後急落し,甲がX社から同社普通株式1000株の引渡しを受けた日である平成23年4月1日の終値は,1株1万円であった。しかし,OKくんが爆発的なヒット商品となったことから,同年12月末には,1株3万円まで株価が上昇した。
以上の事案について,次の設問に答えなさい。ただし,租税特別措置法は考慮しないこととする。
〔設問1〕
あなたは,甲から,次に掲げるX起業大賞の賞金・賞品は,それぞれ,所得税法上,どの年に,幾らの金額が,いかなる種類の所得として取り扱われるかについて意見を求められた。あなたの意見を,理由を明らかにして述べなさい。
⑴ 奨励金
⑵ 起業支援金
⑶ X社普通株式1000株
〔設問2〕
X社がX起業大賞の受賞者(優秀者及び最優秀者)に対して支払う奨励金及び起業支援金は,法人税法上,どの年度においてどのように取り扱われるか。根拠条文と理由を付して答えなさい。
出典:法務省「2012年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。