司法試験論文式過去問演習

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2011年 司法試験 論文式 労働法 第1問

問題

配点 50点

[労 働 法]

〔第1問〕(配点:50)

次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。

【事 例】

Y社は,トラック運送業を営む会社であり,期間の定めなく雇用されたトラック運転手15名,総務担当2名,経理担当2名及び配車担当2名の社員計21名のほか,期間1年の労働契約を締結して雇用されたトラック運転手5名及び事務職を補助するパートタイマー6名を擁する会社である。Y社の就業規則には,別紙のとおり規定されている。

Xは,平成21年4月1日にY社にトラック運転手として雇用された者であり,これまで15年のトラック運転歴を有していた。Xの賃金は,基本給15万円,乗務手当10万円,無事故手当3万円,家族手当1万円及び通勤手当1万円の合計30万円であった。

Xは,給料が入ると暴飲暴食をするなどの不摂生な生活を送っていたことから,Y社に入社する前から内臓疾患及び糖尿病を患い,投薬治療を受けていた。Xは,Y社に入社後も同様の生活状態が続き,乗車前の飲酒検査で乗車不適とされたことが数度あり,同年10月30日に厳重注意を受け,反省文を提出した。Xは,それからしばらくは問題なく就労していたが,平成22年6月18日に無断欠勤をした上,その翌日の乗車前の飲酒検査で乗車不適とされたことについて,懲戒処分としてけん責処分を受けた。

Xは,同年10月20日,トラックを運転し,高速道路を走行中に軽い意識もうろう状態に陥り,中央分離帯のガードレールに自車を接触させ,自車右前部を破損させ,その場で立ち往生するという事故を起こしたことがあった。上記意識もうろう状態は,その前日に暴飲暴食をした上,十分な睡眠を取らなかったことによるものであった。Y社は,Xに対し,生活習慣を改め,安全運転に支障を生じさせるような暴飲暴食をやめるように注意し,Xは,Y社に対し,二度と暴飲暴食をしない旨の誓約書を提出した。

Xは,その後約1か月の間,誓約を守り,支障なく運転業務を行っていたが,再び暴飲暴食を繰り返す生活に陥った。その結果,Xは,疲れると運転中に意識もうろう状態になることがあり,平成23年1月15日には,乗務開始直前に意識を消失して病院に運ばれ,1週間入院した。Xは,退院後,7日分の有給休暇を取得したところ,Y社は,Xが出社してきた同月31日,Xを同日限りで解雇し,Xに対して基本給30日分相当額の解雇予告手当を支払った。その後,Xに交付された解雇理由証明書には,解雇事由として,「Xは,糖尿病や内臓疾患を患っていて,疲労等を引き金に意識障害に陥ることがあり,その結果,重大な交通事故を発生させる危険性を常に有しているため」と記載されていた。

なお,内臓疾患と糖尿病を併発している場合,アンモニア高値になると,多幸感,記銘力低下が生じ,更に悪化すると意識の混濁が生じる可能性があり,血糖値が高くなると,糖尿病性昏睡に至ることがあるとされている一方,これらの疾病は,適正な食生活と投薬治療により,通常の運転業務に支障は生じない程度のコントロールができるとされている。

[設 問]

⑴ Xが期間の定めなく雇用された者である場合,Xに対する解雇の効力について,あなたの見解を述べなさい。

⑵ Xが平成21年4月1日に期間1年の労働契約を締結して雇用され,平成22年4月1日に同じ期間で労働契約を更新された者である場合,Xに対する解雇の効力について,あなたの見解を述べなさい。

別 紙

【就業規則(抜粋)】

(賃金の構成)

第27条 社員の賃金は,別に定める賃金規程により支給する。

(普通解雇)

第37条 社員が次のいずれかに該当するときは,解雇することができる。

① 勤務成績又は業務能率が著しく不良で,向上の見込みがなく,他の職務にも転換できないなど,就業に適さないと認められたとき。

② 勤務状況が著しく不良で,改善の見込みがなく,社員としての職責を果たし得ないと認められたとき。

③ 精神若しくは身体の障害により,又は適性を欠くため,業務に堪えられないと認められたとき。

④~⑧ 省略

⑨ その他前各号に準ずるやむを得ない事情があったとき。

2 前項の規定により社員を解雇する場合は,少なくとも30日前に予告をするか,予告に代えて平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う。

3 第1項の規定による社員の解雇に際し,当該社員から請求のあった場合は,解雇の理由を記載した証明書を交付する。

(懲戒の種類等)

第58条 懲戒の種類は次の各号に定めるものとし,処分書を交付して原則として公示する。

① けん責
始末書を提出させ,将来を戒める。
② 減給
減額は,1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えず,その総額が賃金支払期間における賃金総額の10分の1を超えない範囲で行う。
③ 出勤停止
7日以内の期間を定めて出勤停止を命ずる。出勤停止期間中の賃金・賞与は支給しない。
④ 降格
従事する職種の階級を引き下げる。
⑤ 懲戒解雇
予告期間を置かないで即日解雇し,退職金を支給しない。この場合,行政官庁の認定を受けたときは,解雇予告手当を支給しない。

出典:法務省「2011年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。