司法試験論文式過去問演習

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2011年 司法試験 論文式 民事系科目 第3問

問題

配点 100点

[民事系科目]

〔第3問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,3:4:3〕)

次の文章を読んで,後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。

【事例1】

Aは,医師であり,個人医院を開設しているが,将来の値上がりを期待して,近隣の土地を購入してきた。しかし,同じ市内に開設された総合病院に対抗するために,平成19年5月に借入れをして高価な医療機器を購入したにもかかわらず,Aの医院の患者数は伸び悩み,Aは,平成21年夏頃から資金繰りに窮している。

Bは,Aの友人であり,Aが土地を購入するに際して,購入資金を貸与するなどの付き合いがある。Bは,かねてAから,甲土地は実はAの所有地である,と聞かされてきた。

Cは,Aの弟D(故人)の子であり,Dの唯一の相続人である。

甲土地の所有権登記名義は,平成14年3月26日に売買を原因としてEからDに移転している。

Bは,弁護士Pに依頼し,Dの単独相続人であるCを被告として,Aの甲土地の所有権に基づき,甲土地についてDからAへの所有権移転登記手続を請求して,平成22年12月8日に訴えを提起した(以下,この訴訟を「訴訟1」という。)。

平成23年1月25日に開かれた第1回口頭弁論期日において,Pは,次のような主張をした。

① Bは,平成17年6月12日に,Aに対して,平成22年6月12日に元本1200万円に利息200万円を付して返済を受ける約束で,1200万円を貸し渡した。

② 平成22年6月12日は経過した。

③ Aは,甲土地を現に所有している。

④ 甲土地の所有権登記名義はDにある。

⑤ Aは,無資力である。

⑥ CはDの子であるところ,Dは,平成18年5月28日に死亡した。

これに対して,Cは,同期日において,「②③④⑥は認めるが,①⑤は知らない。」旨の陳述をした。

裁判官が,Pに対して,①の消費貸借契約について契約書があるかどうか質問したところ,Pは,「作成されていない。」と返答した。裁判官は,Pに対して,次回の口頭弁論期日に①と⑤の事実を立証するよう促した。

第1回口頭弁論期日が終了した後,Cは,弁護士Qに訴訟1について相談し,Qを訴訟代理人に選任した。

平成23年3月8日に開かれた第2回口頭弁論期日において,Qは,次のような陳述をした。

⑦ 甲土地は,Eがもと所有していた。

⑧ 平成14年2月26日,Aは,Eとの間で,甲土地を2200万円で購入する旨の契約を締結した。

⑨ Aは,⑧の契約を締結するに際して,Dのためにすることを示した。

⑩ 同年2月18日,Dは,Aに対して,甲土地の購入について代理権を授与した。

裁判官がQに対して,新たな陳述をした理由をただしたところ,Qは,次のように述べた。

Dが死亡した後,Cは,事あるごとに,Aから,「甲土地は,Dのものではなく,Aのものだ。」と聞かされてきたので,それを鵜呑みにしてきました。しかし,私が改めてEから事情を聴取したところ,新たな事実が判明したので,甲土地の所有権がEからDへ,DからCへと移転したと主張する次第です。

Pは,①と⑤の事実を証明するための文書を提出したが,⑦⑧⑨⑩に対する認否は,次回の口頭弁論期日まで留保した。

以下は,第2回口頭弁論期日の数日後のPと司法修習生Rとの会話である。

P:第2回口頭弁論期日でのQの陳述について検討してみましょう。

Qが,甲土地の所有権がEからDへ,DからCへと移転したと主張したので,Aに問い合わせてみました。すると,Aからは,Dから代理権の授与を受けたことはないし,Aが甲土地の購入資金を出した,という説明を受けました。Aによると,EはDの知人で,AはDの紹介でEから甲土地を購入したが,後になって思うと,DとEは共謀してAをだまして,甲土地の所有権登記名義をDに移したようだ,とのことでした。しかし,Aは,弟や甥を相手に事を荒立てるのはどうかと思い,Cに対して所有者がAであることを告げるにとどめ,登記は今までそのままにしていたそうです。

以上のAの説明を前提にすると,次回の口頭弁論期日では,⑨と⑩を争うことが考えられます。

しかし,そもそもQの⑨と⑩の陳述は,Cが第1回口頭弁論期日で③を認めたことと矛盾しています。そこが気になっているのです。

R:第1回口頭弁論期日で「甲土地は,Aが現に所有している。」という点に権利自白が成立しているにもかかわらず,第2回口頭弁論期日でのQの陳述は,甲土地をAが現に所有していることを否定する趣旨ですから,権利自白の撤回に当たるということでしょうか。

P:そのとおりです。もしそのような権利自白の撤回が許されないとすると,⑨と⑩についての認否が要らないことになります。ですから,私としては,被告側の権利自白の撤回は許されない,と次回の口頭弁論期日で主張してみようかと思っています。そこで,あなたにお願いなのですが,このような私の主張を理論的に基礎付けることができるかどうか,検討していただきたいのです。

R:はい。しかし,考えたことのない問題ですので,うまくできるかどうか・・・。

P:確かに難しそうな問題ですね。事実の自白の撤回制限効の根拠にまで遡った検討が必要かもしれません。「理論的基礎付けは難しい。」という結論になってもやむを得ませんが,ギリギリのところまで「被告側の権利自白の撤回は許されない。」という方向で検討してみてください。では,頑張ってください。

〔設問1〕 あなたが司法修習生Rであるとして,弁護士Pから与えられた課題に答えなさい。

【事例1(続き)】

F銀行は,Aの言わばメインバンクであり,Aに対して医療機器の購入資金や医院の運転資金などを貸し付けてきた。現在,Fは,Aに対して2500万円の貸付金残高を有している。訴訟1が第一審に係属していることを知ったFがその進行状況を調査したところ,BがBA間の消費貸借契約締結の事実(①の事実)やAの無資力の事実(⑤の事実)の立証に難渋している,との情報が得られた。そこで,Fは,Aに甲土地の所有権登記名義を得させるために,自らも訴訟1に関与することはできないかと,弁護士Sに相談した。Sは,Bの原告適格が否定される可能性があることを考慮すると,補助参加ではなく当事者として参加することを検討しなければならないと考えたが,どのような参加の方法が適当であるかについては,結論に至らなかった。

〔設問2〕 Fが訴訟1に参加する方法として,独立当事者参加と共同訴訟参加のそれぞれについて,認められるかどうかを検討しなさい。ただし,民事訴訟法第47条第1項前段の詐害防止参加を検討する必要はない。

【事例2】

Kは,乙土地上の丙建物に居住している。Kの配偶者は既に死亡しているが,KにはLとMの2人の嫡出子があり,共に成人している。このうち,Lは,Kと同居しているが,遠く離れた地方に居住するMは,進路についてKと対立したため,KやLとほとんど没交渉となっている。

乙土地の所有権登記名義はKの旧友であるNにあり,丙建物の所有権登記名義はKにある。

Nは,Kを被告として,平成22年9月2日,乙土地の所有権に基づき,丙建物を収去して,乙土地をNに明け渡すことを請求して,訴えを提起した(以下,この訴訟を「訴訟2」という。)。なお,訴訟2において,NにもKにも訴訟代理人はいない。

平成22年10月12日に開かれた第1回口頭弁論期日において,次の事項については,NとKとの間で争いがなかった。

・ 乙土地をNがもと所有していたこと。

・ Kが,丙建物を所有して,乙土地を占有していること。

・ 平成10年5月頃,Nが,Kに対して,期間を定めないで,乙土地を,資材置場として,無償で貸し渡したこと。

・ 平成22年9月8日,Nが,Kに対して,乙土地の使用貸借契約を解除する旨の意思表示をしたこと。

同期日において,Kは,平成17年12月頃,NとKとの間で乙土地の贈与契約が締結されたと主張し,Nは,これを否認した。さらに,Kは,KとNとの間で乙土地をKが所有することの確認を求める中間確認の訴えを提起した。

平成22年10月16日,Kは交通事故により死亡し,LとMがKを共同相続し,それぞれについて相続放棄をすることができる期間が経過した。平成23年3月7日,NがLとMを相手方として受継の申立てをし,同年4月11日,受継の決定がされた。

平成23年5月10日に開かれた第2回口頭弁論期日において,Lは争う意思を明確にしたが,Mは「本訴請求を認諾し,中間確認請求を放棄する。」旨の陳述をした。

以下は,第2回口頭弁論期日終了後の裁判官Tと司法修習生Uとの会話である。

T:今日の期日で,Mは本訴請求の認諾と中間確認請求の放棄をしましたね。

U:はい。しかし,Lは認諾も放棄もせず,Nと争うつもりのようですね。

T:Lがそのような態度をとっている場合に,Mのした認諾と放棄がどのように扱われるべきかは,一考を要する問題です。この問題をあなたに考えてもらうことにしましょう。

なお,LとMが本訴被告の地位と中間確認の訴えの原告の地位を相続により承継したことによって,本訴請求と中間確認請求がどうなるかについては議論のあるところですが,当然承継の効果として当事者の訴訟行為を経ずに,本訴請求の趣旨は「L及びMは,丙建物を収去して,乙土地をNに明け渡せ。」に,中間確認請求の趣旨は「L及びMとNとの間で,乙土地をL及びMが共有することを確認する。」に,それぞれ変更される,という見解を前提としてください。

このような本訴請求の認諾と中間確認請求の放棄の陳述をMだけがした場合に,この陳述がどのように扱われるべきか,考えてみてください。その際には,判例がある場合にはそれを踏まえる必要がありますが,それに無批判に従うことはせずに,本件での結果の妥当性などを考えて,あなたの意見をまとめてください。

〔設問3〕 あなたが司法修習生Uであるとして,裁判官Tから与えられた課題に答えなさい。

出典:法務省「2011年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。