2011年 司法試験 論文式 経済法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
X1~X20の20社(以下「本件20社」という。)は,甲市において,道路運送法上の一般乗用旅客自動車運送事業を営む事業者(以下「タクシー事業者」という。)である。甲市は,タクシー事業について独立した市場(交通圏)を形成しており,同市における本件20社のタクシー保有台数の合計は,全タクシー事業者の保有台数の約80%を占めている。
A社は,甲市におけるタクシーの「共通乗車券事業」を営む株式会社であり,その株主の大部分は本件20社で占められている。なお,ここで,「共通乗車券」とは,タクシー事業者の集金合理化及びタクシーの乗客の利便を図るために発行されるもので,タクシーに乗車する客が,その券面に,タクシー事業者に支払うべき料金・運賃の額を記載して,当該タクシー事業者に手交することにより,複数のタクシーの中から選択して乗車することができる乗車券である。そして,「共通乗車券事業」とは,特定のタクシー事業者のタクシーを乗車し得る対象とする共通乗車券を発行するとともに,あらかじめ共通乗車券の使用に関する契約を締結した官公庁・企業等から,当該タクシー事業者に代わって,使用された共通乗車券の券面に記載された額に係る金銭を回収する事業である。また「共通乗車券事業に係る契約」とは,A社とタクシー事業者との間で締結される,共通乗車券の発行方法や手数料等に関して定めた契約である。
共通乗車券が利用できるタクシーは,そうでないタクシーに比べて乗客の獲得上有利であることから,甲市のタクシー事業者の大部分が,A社と共通乗車券事業に係る契約を締結し,同事業を利用している。なお,甲市におけるA社の共通乗車券の利用率は,全タクシー事業者の運賃・料金収入の合計の約25%であり,他は,現金やクレジットカードによる支払である。また,甲市においてA社以外に同様の共通乗車券事業を営む者は存在しない。
タクシー事業者は,タクシーの運賃・料金につき,道路運送法に基づく国土交通大臣の認可を受けてこれを適用しているが,近年は,あらかじめ設定された上限額と下限額の範囲内であればほぼ自動的に認可がなされる「自動認可運賃」制度が採用されている。そこで,かつては,認可された運賃・料金が全てのタクシー事業者間で同一であった甲市においても,同制度を利用して,初乗り運賃が他社より低い運賃(以下「低額運賃」という。)の認可を受ける事業者が現れた。
これに対し,かねてから,A社の共通乗車券を利用する乗客が低額運賃タクシーに奪われていることに不満を持っていた本件20社は,低額運賃による客の奪い合いが,歩合制で働く乗務員に収入減による過重労働を強いて,交通事故の増加につながる危険があることが問題にされるようになったことから,A社を交えて低額運賃タクシーに対する対策を話し合う会合を開催することにした。そして,話合いの結果,本件20社は,タクシー事業の収益を維持し安全性を確保するためには,低額運賃タクシーの抑制を図ることが必要であり,そのために,低額運賃のタクシー事業者には,A社の共通乗車券事業を利用させないようにするとの方針を採用することで一致し,会合の席上,A社に対して,今後は,低額運賃のタクシー事業者と共通乗車券事業に係る契約を締結しないよう要請した。A社は,本件20社が共通乗車券事業の主要な利用者であり,かつ同社の株主の多数を占めることから,この要請に従い,以下の具体的な措置を講じた。
⑴ 従来から低額運賃を適用していたP,Q,Rの3社との共通乗車券事業に係る契約を解約し,以後,新たな契約の申込みにも応じないことにした。
⑵ 新たに甲市のタクシー事業に参入したS社とT社が,共通乗車券事業に係る契約の申込みを行ったのに対し,低額運賃を適用しているS社については,これに対する回答を留保し,その後,当該契約を締結していない。
〔設 問〕
上記の,X1~X20の20社及びA社の行為について,独占禁止法上の問題点を分析して検討しなさい。
出典:法務省「2011年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。