2011年 司法試験 論文式 経済法 第1問
問題
配点 50点[経 済 法]
〔第1問〕(配点:50)
A社とB社は,いずれも,化学メーカーである。A,B両社は,多くの競合する化学製品を製造販売しているが,このうち,甲製品の需要が,近年,減退傾向にあり,収益が悪化していることから,共同新設分割の方法により,出資比率各50%の共同出資会社C社を設立し,それぞれが営む甲製品の製造販売事業を全てC社に承継させることを計画している。A,B両社は,甲製品に不可欠の原料である乙製品の製造販売も行っている。国内で製造されている乙製品の約40%が甲製品の原料として使用され,乙製品の製造販売業者にとって甲製品の製造販売業者は重要な顧客である。そこで,C社には,A,B各社から,乙製品の開発及び営業に長年従事してきた従業員についても,数名ずつを,従業員として出向させることなどが予定されている。
甲製品の製造販売分野は,次のような状況にある。甲製品は,4種類のグレードに分かれ,それぞれ用途が異なっているが,甲製品の製造販売業者は,4種類全てのグレードの甲製品を製造販売しており,設備,コスト,時間のいずれの面においても,それぞれ異なる種類のグレードに転換して製造販売することが容易である。甲製品の製造販売業者の市場占有率(シェア)は,平成22年度末現在,A社20%,B社20%,L社13%,M社10%,N社10%,O社7%,輸入20%となっている。近年,甲製品の需要が減退傾向にあり,L社,M社,N社,O社は,いずれも,甲製品の製造設備の稼働率は低く,製造設備に余裕がある。また,数年前までは,甲製品の輸入品は,低価格であるものの,品質面で劣り,供給も不安定であったことから,ほとんどなかったが,近年では,韓国,中国からの輸入品の品質が向上し,輸入品と国産品との間に品質の差がなくなり,安定的に輸入が増加している。甲製品の輸入についての法規制も存在しない。甲製品のユーザーは,全国的に所在しており,甲製品の製造販売業者は,これに対応して甲製品を供給している。ほとんどのユーザーは,複数の取引先から購入しており,甲製品の品質に差がないことから,購入先を変更することは容易であり,実際にも,購入先を変更することが珍しくない。
一方,乙製品の製造販売分野は,次のような状況にある。乙製品の製造販売業者のシェアは,平成22年度末現在,A社35%,B社30%,S社10%,T社10%,U社7%,V社6%,輸入2%となっている。乙製品の需要も減退気味であるが,S社,T社,U社,V社は,いずれも,近年,乙製品の製造設備を縮小させてきており,製造設備に余裕がない。乙製品のユーザーは,甲製品の製造販売業者を含め,安定調達を優先する傾向が強く,輸送時間が掛かる海外メーカーよりも国内メーカーから購入しており,今後もこの傾向に大きな変化はないものと認められる。乙製品の製造販売には,数百億円規模の巨額の投資が必要とされるところ,過去40年間,新たに乙製品の製造販売事業に進出した事業者は存在しない。用途によっては,丙製品が乙製品に競合し得ることもあるが,現在のところ,その程度は,小さいものにとどまっている。乙製品の製造販売業者とそのユーザーとの取引は,甲製品の製造販売業者との取引の場合を含め,比較的固定的な関係にあり,取引先が変更されることは少ない。
〔設 問〕
A,B両社によるC社の設立について,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)上の問題を検討し,併せて独占禁止法上の問題を解消するための対策についても検討しなさい。
出典:法務省「2011年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。