司法試験論文式過去問演習

過去問の答案を投稿・採点

2010年 司法試験 論文式 倒産法 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

次の事例について,以下の設問に答えなさい。

【事 例】

精密機械の製造業を営むA株式会社(以下「A社」という。)は,不況による売上高の低迷によって資金繰りに窮し,これから満期を迎える約束手形の決済資金の確保が困難な状況となった。

そのため,A社は,平成22年4月1日に民事再生手続開始申立てを行い,同月8日に民事再生手続開始決定を受けた。

〔設 問〕

以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。

1.A社の再建のためには,部品の継続的供給契約(以下「本件契約」という。)を締結しているB株式会社(以下「B社」という。)が従前どおりに取引に応じることが不可欠であった。本件契約では,B社がA社に対して部品の供給を反復継続的に行い,代金については,毎月末日締めで翌月末日に支払う約定であった。そのため,B社は,民事再生手続開始申立ての時点において平成22年3月末日締めの売掛金1000万円を有していた。

また,本件契約には「A社が民事再生手続開始の申立てを行ったときには,B社は本件契約を解除することができる。」との条項が定められていた。

B社は,高い品質の部品を製造していることから,他社からの引き合いも多い会社であったため,今後の取引継続についての態度は強硬であり,民事再生手続開始決定直後の協議において,次のとおり主張した。

「A社が民事再生手続開始申立てを行った以上,本件契約を解除する。ただし,4月末日までに売掛金全額を支払った場合には,解除せず今後の取引を継続してもよい。」

この場合,A社は,B社との取引を継続するため,どのような主張を行うべきか,B社の主張に対する反論も含めて,検討しなさい。

2.C銀行は,A社に対し,5000万円の貸付債権(以下「本件貸付債権」という。)を有していたところ,A社の財務状況の悪化に伴い,追加担保の差入れを要求していた。

そこで,平成22年3月1日,A社は,C銀行との間で,D株式会社が売掛金の支払のためにA社に対して振り出した額面金1000万円の約束手形2通(以下「甲手形」及び「乙手形」という。)につき,取立委任契約を締結し,C銀行に甲手形と乙手形を裏書譲渡した。A社とC銀行は,銀行取引約定書に基づき銀行取引約定を締結していたが,これらの取立委任契約は,この取引約定の規定に基づくものであった。

その後,同年4月5日に甲手形の満期が到来したため,C銀行は,甲手形につき1000万円の手形金を取り立てた。

次に,A社の民事再生手続開始決定後に,乙手形の満期が到来したため,C銀行は,乙手形につき1000万円の手形金を取り立てた。

A社は,その後,C銀行に対し,甲手形及び乙手形の取立金である2000万円の返還を求めたところ,C銀行は,その返還債務と本件貸付債権を対当額で相殺する旨の意思表示をし,返還を拒絶した。

なお,C銀行は,同年4月2日には,A社の民事再生手続開始申立ての事実を認識しており,この申立てにより,A社は,本件貸付債権の期限の利益を喪失していた。

本件で,甲手形及び乙手形について,それぞれC銀行の相殺の主張が認められるか否かを,相殺権に関する民事再生法の規律と破産法の規律の違いを踏まえて検討しなさい。

出典:法務省「2010年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。