司法試験論文式過去問演習

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2010年 司法試験 論文式 労働法 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。

【事 例】

1 Y社は,従業員200人の会社であるが,そのうち110人の従業員で組織されたX1労働組合(以下「X1組合」という。)と,70人の従業員で組織されたA労働組合(以下「A組合」という。)の二つの労働組合が存在していた。X1組合の規約には,「組合費の納入はチェック・オフによる。」との規定があり,また,X1組合とY社との間で,「会社は,組合員の賃金から組合費相当分を控除し,これを組合に交付する。」との協定が労働協約として締結されていた。X1組合とY社は,当該チェック・オフ協定を毎年4月1日に更新することとし,更新に際しては,その都度,X1組合がY社に対し,3月1日にその時点における組合員名簿を提出した上,3月中に協議の場を設けて双方で更新するか否かを確認する手続を行っていた。Y社は,10年間にわたって,このような手続に従い,X1組合の組合員の毎月の賃金から組合費相当分を控除し,X1組合に交付してきた。

2 ところで,Y社では昨今の景気後退と競争激化を背景に,人員削減を含む合理化方針を強化し,従業員に退職勧奨を行う一方,時間外労働も恒常化していったことから,退職者がX1組合の組合員を含めて50人にも上り,そのため,従業員の業務負担は更に過重になっていった。X1組合は,Y社のこうした経営方針や人事管理に強く反発し,Y社の経営方針等を批判し,役員の退陣を求めるビラを従業員食堂等で配布するなど,Y社との対決姿勢を鮮明にした。Y社は,X1組合に対し,そうした行為の中止を求めるとともに,これに関与した組合員らに対して警告書を発した。これに対し,X1組合は,抗議活動を強め,社屋前の集会を無許可で行うなどしたため,Y社はX1組合の委員長を戒告処分とした。このような経緯で,Y社とX1組合との対立は激化し,Y社は,X1組合に対する不快感をより強めていった。

一方,X1組合の組合員には,Y社に対して闘争的な活動方針を採る執行部の姿勢に疑問を持つ組合員も少なからず存在し,その多くがX1組合を脱退し,Y社に対する協調的関係を重視し,穏健な活動方針を採るA組合に加入した。その結果,平成20年10月1日時点で,全従業員150人中,X1組合の組合員数は40人にまで減少し,逆にA組合は組合員90人を組織するまでになった。

3 Y社は,平成21年1月20日,新たにA組合との間でもチェック・オフ協定を労働協約の形式で締結し,同年2月1日からA組合の組合員についても賃金からの組合費相当分の控除を行うこととし,A組合でもチェック・オフによって組合費を徴収する旨をその組合規約に定めた。

4 X1組合は,同年3月1日,例年どおり,同日時点の組合員名簿をY社に提出したところ,Y社は,同月5日,X1組合に対し,X1組合の組合員数が全従業員の過半数を大幅に下回ったこと及び平成20年度のX1組合とのチェック・オフ協定の期間が満了することの二つの理由により,チェック・オフ協定を更新しないこととする旨通知した。なお,その際,Y社は,X1組合に対し,「本来は,X1組合の組合員数が全従業員の過半数に満たないことが判明した時点でチェック・オフ協定を解約すべきところ,労使関係の安定を考慮し,期間満了まで待って,終了させることとした。」旨付言した。X1組合は,これに強く反対し,チェック・オフ協定の継続を求めてY社に団体交渉を申し入れ,平成21年3月15日,団体交渉が行われた。同交渉において,Y社は,同月5日にX1組合に通知した二つの理由を繰り返し説明し,その後のX1組合との団体交渉を拒絶した。

5 一方,X1組合を脱退してA組合に加入した組合員X2は,A組合の執行部がY社との友好的・協調的関係を重視する余り,Y社の言いなりになっている状況を見て,その姿勢を改めるよう同執行部に要求した。しかし,同執行部がこれを全く無視したことから,X2は大いに失望し,同年6月15日,A組合に対し脱退届を提出し,X1組合への復帰を願い出た。そこで,X1組合は,直ちに,X2の加入を認めた上,Y社に対し,書面により,チェック・オフ協定の締結を再度求めるとともに,X2との連名で,X2の賃金から控除する組合費相当分の交付先をA組合からX1組合に変更するよう要求した。

しかし,Y社は,X1組合の組合員数が現在も40人にとどまっており,全従業員の過半数におよそ満たないことを理由にX1組合とのチェック・オフ協定の締結を拒絶するとともに,「組合員が脱退するには,組合に届け出て,その承認を得なければならない。」と定めた組合規約に基づきA組合がX2の脱退を認めておらず,A組合からY社に対してX2の脱退につき通告がないことを理由に,X2の賃金から控除する組合費相当分の交付先の変更を拒否し,依然としてX2の賃金から控除した組合費相当分をA組合に交付し続けた。

〔設 問〕

1 X1組合及びX2は,それぞれ,Y社を相手方として,どのような機関に対していかなる法的救済を求めることができるか,説明しなさい。

2 1の法的手段において考えられる法律上の問題点を挙げ,各問題点に対するあなたの見解を述べなさい。

出典:法務省「2010年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。