司法試験論文式過去問演習

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2010年 司法試験 論文式 労働法 第1問

問題

配点 50点

[労 働 法]

〔第1問〕(配点:50)

次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。

【事 例】

A社は,加工食品の小売販売を主たる業務として設立された株式会社であり,甲市内に本社を置き,数店の小売店舗を構えている。A社は,平成16年に業務内容を拡大するために自社ブランド製品を製造して販売することを決め,平成17年4月,乙市内に工場を建て,工場部門で働く従業員(管理職を除く。)を新たに50人採用し,自社ブランド製品の製造を始めた。しかし,工場部門の事業は開始直後から不振が続き,その赤字によってA社全体の利益を押し下げ,このまま工場部門を存続させると,A社の経営に深刻な影響を及ぼす状況になった。

そこで,A社は,平成19年12月,工場部門を廃止することを事実上決めたところ,A社とは資本関係のない同業他社のB社から,工場部門の事業を引き継ぎたいとの申入れを受け,平成20年6月,工場の敷地,建物及び設備を含めて工場部門の事業全部をB社に譲渡することを決め,同年8月,A社の従業員に対して工場部門の廃止を説明し,同年12月,B社との間で,事業譲渡日を平成21年4月1日とする事業譲渡契約を締結した。同事業譲渡契約の契約書には,A社工場部門の従業員の労働契約関係の処理に関する条項はなく,同事業譲渡契約時に取り交わされた覚書には,B社はA社工場部門の従業員をできる限り引き受けるよう努力する旨の条項がある。

X1及びX2は,いずれも,平成17年4月にA社の工場部門で働く従業員として期間の定めなく雇用された者であり,雇用時に,A社から,業務内容は食品加工工程における技術職であり,工場勤務以外の勤務はない旨の説明を受け,以後,その業務にのみ就いていた。なお,X1は,工場部門の従業員14人で組織されたC労働組合(以下「C組合」という。)の組合員であり,委員長を務めていた。

A社及びB社は,上記事業譲渡契約後の平成21年1月,X1及びX2を含むA社工場部門の全従業員に対し,同年3月をもってA社工場部門を廃止し,同部門の事業をB社に譲渡する契約を締結したこと及び上記覚書の内容を説明した上,さらに,A社からは,A社を退職してB社に就職するよう勧め,B社からは,B社への就職を希望する者については書類選考のみで優先的に採用する旨説明した。その後,A社は,同月31日を退職日とする希望退職を募り,その結果,A社工場部門の従業員50人のうちC組合の組合員14人全員を含むX1ら45人が退職に応じたが,X2ら5人は退職に応じなかった。また,A社は,会社再建のため,本社部門及び小売店舗部門の全従業員40人にも希望退職を募り,10人の退職者を得て,同年4月以降,従業員30人体制で業務を続けた。

B社は,同月1日,B社に採用申込みをしたX1ら45人のA社工場部門退職者及び外部からの応募者15人の中から50人を採用した。不採用となったのは,A社工場部門退職者のうちX1ら5人(そのうちC組合の組合員は3人)と外部からの応募者5人であった。

希望退職に応じなかったX2ら5人は,同年2月28日,A社から,工場部門の廃止を理由として,同年3月末日付けで解雇する旨通告された。

〔設 問〕

X1及びX2は,下記の点について相談をしたいと考えている。この相談に対し,あなたが弁護士として回答する場合に検討すべき法律上の問題点を指摘し,それについてのあなたの見解を述べなさい。

⑴ X1は,B社に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに賃金支払及び損害賠償を求めたいと考えている。

⑵ X2は,A社に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び賃金支払を求めたいと考えている。

出典:法務省「2010年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。