司法試験論文式過去問演習

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2010年 司法試験 論文式 国際関係法(公法系) 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

A国とB国は国境を接しているが,国境地帯でA国の国営化学工場が操業しており,そこから排出される有害化学物質を含むばい煙は,B国領域内の農地に及んで農地を汚染したり農作物の生産を阻害するなどの損害を引き起こした。

A国とB国が共に当事国となっている条約で,当該化学物質を含むばい煙の排出を規制する条約は存在しない。

甲はB国籍を有する私人であるが,20数年にわたりB国内で農場を経営しており,A国の工場からのばい煙により,農地や農作物に損害を受けた。一方,私人乙がB国内に所有する農場の農地や農作物も,A国の工場からのばい煙による損害を受けた。乙はC国籍を有していた私人であるが,B国の国籍法は,一定の金額を納入すれば国籍取得を認めていることから,金銭を納入して,この損害が発生する2か月前にB国の国籍を取得していた。乙は,B国内に所有する農場の運営を使用人に任せており,時折B国を訪れるが,生活の本拠はC国に置いていた。

甲は,B国政府が外交保護権を行使してA国の国家責任を追及することで,救済が得られることを望んだ。しかし,B国は,A国との友好関係を維持するという外交上の考慮から,甲の受けた損害について,外交保護権の行使はしないと判断した。他方,乙の受けた損害について,B国は,乙のB国籍は国内法上有効であるが,乙のB国籍を理由とした外交保護権の行使は,外交上の考慮とは別に,国際法上,認められないと判断して,外交保護権の行使を断念した。

以上の事実関係を前提に,以下の設問に答えなさい。なお,国内救済については,論ずる必要はない。

〔設 問〕

1.A国が,上記事実関係にあるような領域使用を領域主権の絶対性を根拠として正当化することは許されるか。許されないとすればそれはなぜか。国際法上の根拠に基づいて説明しなさい。

2.甲の受けた損害に関して,外交保護権の行使はしないとしたB国の判断が国際法上許されるかについて説明しなさい。

3.乙の受けた損害に関するB国の外交保護権について,次の小問に答えなさい。

⑴ なぜB国は,国際法上この外交保護権の行使は認められないと判断したと考えられるか説明しなさい。

⑵ B国は,一方で,「乙のB国籍を理由とした外交保護権の行使は,国際法上,認められない」という判断をしたが,他方で,国内法上,引き続き乙のB国籍は有効としていることの法的な意味を説明しなさい。

出典:法務省「2010年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。