2010年 司法試験 論文式 国際関係法(公法系) 第1問
問題
配点 50点[国際関係法(公法系)]
〔第1問〕(配点:50)
X国の一部を構成するセント州は,X国内で独自の言語と文化を持ち古くから大幅な自治権が与えられていた。しかし,セント州で大きな勢力を持つセント独立党は自治権だけでは満足せず,長年にわたってX国からの独立を主張してきた。2002年3月5日のセント州議会議員選挙でセント独立党が過半数の議席を占めることが確定し,同年4月10日にセント州議会は,セント州全域を国土とする「セント国」の独立と「セント国政府」の樹立を宣言した。セント州議会は,この独立宣言と同時に州内に駐留していたX国軍隊の撤退を要求した。X国は,同日に独立宣言が一部分離主義者の策動だという声明を発表して「セント国」の独立に反対し,また,軍隊の撤退要求を拒否しただけでなく,セント州内を制圧するために同地域内へ軍隊を増派した。セント州地域内各所でセント独立党によって組織された「セント国軍」とX国軍の武力衝突が起こり,戦闘はその後も続いた。時間の経過とともに徐々に「セント国軍」の支配地域が拡大し,2004年1月ころには,「セント国政府」は山岳地域を中心に従来のセント州の約半分の地域を実効支配する状態になった。ただし,このころでも従来のセント州の他の地域はX国軍の支配下にあり,また,いずれの支配下にあるか定かでない地域も各所に存在した。
2002年4月の「セント国独立宣言」直後には,「セント国」の独立に対して特別な意思表明を行う国は少なかった。その中で,X国と対立関係にあったY国は,独立宣言の公表と同時に「セント国の独立を祝する」旨の声明を公表し,時を置かず大使を長とする外交使節団の「セント国」への派遣と「セント国」からの外交使節団の受入れを行った。独立宣言採択当初は,Y国にならって外交使節団の交換を「セント国」と行った国は数か国にとどまった。しかし,前記のとおり「セント国政府」の支配地域が従来のセント州の約半分になった2004年1月には,「セント国」と外交使節団を交換する国は50か国になっていた。
2004年4月に,X国政府は「セント国」情勢について軍事的に巻き返そうと考えてX国と友好関係にあるZ国政府に軍事支援を求め,Z国政府は求めに応じて軍隊を派遣し,従来のセント州でのX国軍の軍事活動を支援した。Z国政府は,「セント国」独立以降に「セント国」に対して何らの意思表明も行っていない国の一つであった。
以上の事実関係を前提に,以下の設問に答えなさい。
〔設 問〕
1.国際法の観点からY国の行為を評価しなさい。
2.「国際法上『セント国』は国家である」という命題を,2004年4月を基準年として論評しなさい。
3.国際法の観点からZ国の行為を評価しなさい。
出典:法務省「2010年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。