2010年 司法試験 論文式 経済法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
Y市では,昭和30年代に下水道を整備したが,近時,下水道管が老朽化し水漏れ事故が急増している。このような状況は各自治体で起きているが,多くの自治体では,下水道管の取替えよりも大幅な経費の節約となることから,下水道管の内部を補修する下水道管更生工事を行うようになり,その発注件数が増えている。下水道管更生工事には,甲工法及び乙工法の2つの工法がある。甲工法が従来採用されていた工法であるが,この数年,甲工法より高い技術を求められるものの,甲工法より約20%費用を節約できる乙工法が普及しつつあり,大規模及び中規模の建設会社は乙工法を施工できるようになっている。Y市内には,甲工法を施工できる建設業者がA,B,C,D,E及びFの6社あり,乙工法を施工できる建設業者は,そのうちのA,B,C及びD(以下「4社」という。)である。Y市は,下水道管更生工事の契約者を市内業者の中から指名競争入札の方法によって決定しており,工法については甲工法又は乙工法のいずれを採用してもよいこととしている。
Aの営業部長rは,B,C及びDの営業部長s,t及びuに呼び掛けて交渉した結果,平成21年2月1日,Aの会議室で開かれた会合において,これらの間で,⑴同年4月1日以降入札が行われるY市発注に係る下水道管更生工事については,あらかじめr,s,t及びuの間で話合いにより4社のうち各入札で指名された者の中から受注予定者を決定すること,⑵4社の間でその受注金額ができる限り均等になるようにすること,⑶受注予定者の落札金額については,その者におおむね20%程度の粗利が確保できる水準とし,受注予定者とrの協議により受注予定者を含めた4社のうち各入札で指名された者の入札金額を決定し,rにおいて事前にその金額を当該入札参加者に連絡することを合意した。rが,E及びFの担当者に参加を呼び掛けなかったのは,E及びFの担当者はそれらの従来の入札態度からいずれにせよ談合に協力すると予想されたし,協力しなくても甲工法はコストが高いことから大部分の談合は成功すると考えたからである。
ところが,AがY市内において労働災害を起こしたことから,Y市は,平成21年3月1日から1年6か月の間,Aを指名停止とした。そこで,rは,同月5日,Aの会議室においてs,t及びuと再度会合を開き,B,C及びDの受注する下水道管更正工事の半分についてAが下請に回り,受注者からその利益の50%を受け取るよう求めたところ,s,t及びuはこれに同意した。
Y市の下水道管更生工事の入札は,平成21年4月1日から平成22年5月9日まで25件が行われ,rが上記の方法で受注調整を行った結果,B,C及びDがそれぞれ8件を落札し,そのうち12件についてAは下請となった。
E及びFの担当者は,これに先立つ平成21年1月20日,Dの営業部長uと偶然会った際に,uから,談合を行うべくr,s及びtと交渉中である旨を聞いた。E及びFの担当者は,それぞれ,近い将来,自ら乙工法の技術を取得できる見込みであることから,談合に協力しておけば,その後は談合に参加させてもらい談合により落札できるようになると考えて,自らは落札できないと考えられる価格で入札してきた。しかし,1件については,Fが想定落札価格の計算を誤り,落札した。
公正取引委員会は,平成22年5月10日,関係各社に立入検査を行った。
〔設問1〕 A,B,C,D,E及びFの行為は独占禁止法に違反するといえるか検討しなさい。
〔設問2〕 上記の事案で,仮に,平成21年3月15日に公正取引委員会が立入検査を行ったことにより,同年4月1日からの入札につき1件も受注調整をすることができなかった場合,A,B,C,D,E及びFの行為は独占禁止法に違反するといえるか検討しなさい。
出典:法務省「2010年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。