2010年 司法試験 論文式 経済法 第1問
問題
配点 50点[経 済 法]
〔第1問〕(配点:50)
A社は,若手デザイナーの手作りアクセサリーを販売する携帯電話専用のウェブサイトα(以下「サイトα」という。)を運営する事業者である。同様のウェブサイト(以下「アクセサリーサイト」という。)を運営している事業者としては,ほかにBないしDの3社があるが,これらのアクセサリーサイトで販売されるアクセサリー(以下「本件アクセサリー」という。)は,①若手デザイナーによるざん新なデザインであること,②手作りであるため同じものが2つとないオリジナル商品であること,③価格が5000円前後と比較的低廉であることなどから,高校生を中心に人気を博している。
アクセサリーサイトに出品するデザイナーは,専ら本件アクセサリーの製作と販売のみを行っているが,これらのデザイナーには一定レベル以上のデザインセンスや製作技術が求められ,そのようなデザイナーの数は限られている現状にある。ちなみに,このようなアクセサリーは,A社等が運営するアクセサリーサイトでのみ販売されており,それ以外のデパート,宝飾店,ブティック等で入手することは困難である。
A社は,サイトαに出品するデザイナーを登録制とし,以下の態様でサイトαを運営している。
⑴ A社に登録したデザイナーは,出品するアクセサリーの写真,材質等の商品情報及び自らが設定した販売価格を電子データでA社に送付し,A社は,これをサイトαに掲載する。
⑵ A社は,サイトαに出品されるアクセサリーの更新情報を消費者に対して電子メールで提供し,登録デザイナーに対しては本件アクセサリーの売れ筋情報(以下「売筋情報」という。)を提供する。なお,売筋情報は,登録デザイナーにとって消費者の嗜好を把握する上で貴重な情報源になっている。
⑶ 本件アクセサリーの購入希望者は,サイトαの画面を通じて商品を注文し,A社は,その注文を出品者である登録デザイナーに取り次ぎ,商品は,当該デザイナーが購入者に直接宅配便で納品する。また,商品代金は,携帯電話会社の料金課金システムを通じてA社に支払われ,A社は,その販売価格に一定率を乗じた手数料相当額を差し引いて出品者である登録デザイナーに送金する。なお,購入された本件アクセサリーの売買契約は,当該デザイナーと購入者間で成立し,商品のクレーム等の責任は,当該デザイナーの負担とすることがサイトα上に明記されている。
AないしD社のアクセサリーサイトにおける売上高の比率は,A社が40%,B社が25%,C社が20%,D社が15%となっており,A社の手数料率は25%,BないしD社のそれは21%である。しかし,サイトαは,アクセサリーサイトの先駆的存在で知名度が高く,そのアクセス数も最多で,携帯電話のディスプレイ上,最上段に表示されることなどから,消費者へのアピールが強く,デザイナーにとって最も重要な出品先と認識されており,有力な国内若手デザイナーのほとんどは,A社に登録している。
以上の状況下,E社は,AないしD社と同様の事業を始めた。E社は,AないしD社と異なり,消費者への更新情報や登録デザイナーへの売筋情報の提供を行わないが,その手数料を15%に抑えているため,近時,E社のアクセサリーサイトにおける売上高が急速に伸びてきている。
そこで,A社が調査した結果,A社のみならずE社にも登録したデザイナー(以下「A・E登録者」という。)が相当数存在することが判明した。A社としては,A・E登録者がA社の提供する売筋情報を利用して本件アクセサリーを製作し,その販売は,より手数料の安価なE社のサイトを利用するというのでは,自社が提供した売筋情報を無償で利用される結果となるので容認できないとの考えから,今後,A・E登録者に対し,A及びE社の双方に登録することは認めない旨申し入れ,仮にA社に登録しているにもかかわらずE社のアクセサリーサイトに出品した場合は,以後,当該デザイナーのアクセサリーの商品情報等をサイトαに掲載しないこととし,そのことをE社に登録していないA社の登録デザイナーにも周知するとの対策を考えている。
〔設 問〕
弁護士甲は,A社から,前記対策が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)に違反しないかどうかを相談された。甲は弁護士としていかなる回答をすべきか述べなさい。
出典:法務省「2010年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。