2009年 司法試験 論文式 倒産法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
次の事例について,以下の設問に答えなさい。
【事 例】
A男とB女は婚姻し,夫婦で飲食店を営んでいた。その後,Aは,家業の飲食店をBに任せ,自らは中古車販売業を始めた。しかし,Aは,仕事上のトラブルから,次第に仕事もせずに昼間から飲酒をするなどの状態になり,Bに対しても,暴言を吐いたり,暴力を振るうことが多くなった。そこで,AとBは,ついに協議により離婚したが,当時AとBには10歳の子Cがおり,CはBに引き取られることになった。
〔設 問〕
以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1.【事 例】において,Aは,離婚の約1年ほど前から,中古車販売業に関連して多額の負債を抱えるようになり,離婚から約半年後に自ら破産手続開始の申立てをするに至った。
⑴ 離婚した当時,Aは,既に無資力の状態にあったが,A名義の唯一の財産ともいうべき時価1000万円のマンション(以下「甲マンション」という。)を,財産分与として,Bに譲渡していた(以下「本件財産分与」という。)。甲マンションについては,本件財産分与の後,直ちに所有権移転登記がされ,Bが単独で所有権の登記名義人となっている。なお,甲マンションは,Aが中古車販売業を始めてしばらくした後に,Aが家族の住居として購入し,Aが単独で所有権の登記名義人となっていたものである。しかし,Aは,中古車販売によって得た利益のほとんどを酒代等の遊興費に充てていたので,甲マンションについては,そのローンの支払を含め,実質的な購入資金は,すべてBが一家の生計を立てていた飲食店の利益から支払われ,離婚の当時,既にローンは完済されていた。
その後,Aについて破産手続が開始され,破産管財人が選任された。破産手続開始当時,本件財産分与については,Aの破産債権者であるDが詐害行為取消訴訟を提起し,係属中であった(以下「本件詐害行為取消訴訟」という。)。本件詐害行為取消訴訟は,破産手続開始決定によってどのような影響を受け,これに対して,破産管財人は,どのような対応を採ることが考えられるか。本件財産分与について否認が可能かどうかという点を踏まえて検討しなさい。
⑵ Aは,離婚したころからE社で働き始め,E社から給与を支給されていたところ,Cの養育費について,離婚の当時,AB間で話合いが行われたが,協議は進まず,Bが家事調停を申し立てた。その結果,毎月末日にAがBに対して5万円を支払うことが合意され,その旨の調停調書が作成された。
その後,Aは,自ら破産手続開始の申立てをするとともに,免責許可の申立てをし,Aについて破産手続が開始されることになったが,破産手続開始当時,養育費について2か月分が未払の状態であった。そこで,Bは,破産手続が終了した後に,前記調停調書に基づいて,AのE社に対する給料債権を差し押さえようと考えている。Bによる強制執行の申立てが,破産手続終了後,①免責許可決定確定前にされる場合と,②免責許可決定確定後にされる場合とに分けて,その可否を検討しなさい。
2.【事 例】において,Bは,離婚後も飲食店の経営を続けていたが,原材料費の高騰によって経営は悪化し,生活費を消費者金融業者等からの借入れで賄うようになり,離婚から約半年後,自ら破産手続開始の申立てをするに至った。
ところで,Bは,婚姻中にAから度々受けた暴行及び虐待により,精神的苦痛を被ったとして,離婚後,Aに対して,不法行為を理由に慰謝料の支払を求める訴えを提起していた(以下「本件慰謝料請求訴訟」という。)。
本件慰謝料請求訴訟の係属中に,Bについて破産手続が開始され,破産管財人が選任された。
⑴ Bは,破産手続開始後も,本件慰謝料請求訴訟を追行することができるか。
⑵ 破産手続開始後,本件慰謝料請求訴訟について慰謝料200万円の支払を命じる判決が確定した場合,破産管財人は,Aに対して,その履行を求めることができるか。
出典:法務省「2009年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。