司法試験論文式過去問演習

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2009年 司法試験 論文式 労働法 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

次の設例を読んで,後記の設問に答えなさい。

【設 例】

1 電機メーカーY社は,主力商品である半導体製品の売上不振によって業績が悪化したため,平成20年7月,主力工場であるA工場の生産縮小を決定した。そして,Y社は,同年8月18日,期間1年の有期労働契約で雇用され,比較的単純な作業に従事する期間従業員であるX1ら100名の雇用を,期間の満了時期にかかわらず,同年9月末日限りで打ち切る方針を固め,全員に通知した。A工場における平成20年度上半期の生産高は,それ以前に比べて著しく落ち込み,その後も回復を見込めない情勢にあった。

しかし,X1ら期間従業員がこの打切りに強く反発したため,Y社は雇用打切りの方針をいったん断念し,同年9月30日付けで労働契約を合意解約するとともに,同年10月1日付けで6か月の期間を定めた労働契約を期間従業員全員との間で新たに締結した。その内容は,「本労働契約の期間は,平成20年10月1日から平成21年3月31日までとし,期間従業員は,3月31日をもって退職するものとする。」というものであった。X1らは不満を抱いたものの,当面の生活を重視して契約締結に応じた。また,Y社は,A工場の生産体制を縮小する中で,従業員の雇用を確保するため,平成20年10月1日以降,正社員及び期間従業員の労働時間を1日8時間から7時間に短縮した。

2 X1ら期間従業員は,前記労働契約によって就労を継続したが,A工場の業績は回復せず,Y社全体としても業績が悪化したので(平成20年度下半期の売上高は,前年度比で3割近く減少し,経常損失を生じる見込みである。),Y社は,平成21年2月20日,期間従業員100名全員について,同年3月31日をもって雇用を終了することを決定し,通知した。通知に際しては,A工場長がX1ら期間従業員全員を集めて2回にわたって説明会を開き,雇用打切りに至る経緯や理由について説明を行った。

これに対して,100名の期間従業員のうち60名は雇用打切りに応じたが,X1~X40の40名は納得せず,Y社に対して労働契約上の地位の確認を求める訴えを提起することを考えている。一方,Y社は,平成21年4月1日以降,X1ら40名の就労を拒否している。

X1ら40名は,期間1年の有期労働契約を6回ないし10回更新して就労してきたものである。契約更新に際しては,その都度契約書を取り交わしてきたものの,従来は更新を拒絶された事例はない。X1らの業務は,ライン製造における補助作業であり,正社員のような熟練作業ではないが,半導体製造にとって不可欠の業務であり,時間外労働に従事することもあった。なお,平成21年2月20日の期間従業員への雇用打切り通知当時,Y社には約3200億円の内部留保があり,雇用を打ち切らなくても,直ちに資産状況が債務超過に陥るという状況にあったわけではない。雇用打切りに際しては,正社員の労働時間の更なる短縮や,Y社役員,管理職及び正社員の給与・賞与カット等の措置は講じられていない。

3 Y社正社員の約80パーセントを組織するN組合は,当初は期間従業員の人員整理を静観していたが,同じ労働者として放置しておくべきではないという声が高まり,また,Y社が第2段階の人員削減として正社員の人員整理を計画しているとの情報を得て危機感を強め,平成21年4月15日,Y社との間で団体交渉を行った。そして,X1ら期間従業員のうち雇用期間の長い者25名を再雇用するよう申し入れるとともに,N組合員ら正社員の人員整理計画の有無について明らかにするよう求めた。これに対して,Y社は,「期間従業員の雇用問題は,N組合との団交事項ではない。正社員の人員整理は6月から実施する予定であるが,詳細が確定した段階で交渉に応ずる。」と回答して交渉を1回で打ち切り,その後は交渉に応じていない。

そこで,N組合は,期間従業員問題の打開を図り,また,Y社が正社員の人員整理を予定していることに抗議するため,平成21年4月30日,組合規約所定の手続を経て,A工場におけるストライキの実施を決定し,N組合A工場支部に指示した。この指示を受けて,A工場に勤務するN組合員165名のうち,主要製造ラインの班長職組合員及びコンピュータ制御部門に所属する組合員計45名は,5月10日,全日ストライキを決行した。この結果,同日のA工場の生産機能は完全に停止し,約1200万円の損害が発生した。その際,ストライキに参加しないN組合員らは,従事すべき業務がなくなったが,終日,工場内に滞留した。なお,Y社は,A工場に勤務する非組合員については,5月10日の勤務を免除した上,当日分の賃金を支給した。

4 Y社は,A工場のN組合員ら165名全員について5月10日分の賃金(基本給)を5月賃金からカットするとともに,6月30日,ストライキを計画・指導したN組合執行委員長R及び書記長Sに対し,「故意に会社業務を妨害したとき」とのY社就業規則の懲戒事由に基づき,Rを出勤停止10日間,Sをけん責の懲戒処分に付した。同就業規則には,懲戒手続について,「会社とN組合によって組織する懲戒委員会を開催し,事実調査及び処分について協議する。」との規定がある。懲戒委員会では,R及びSを呼んでその言い分を聴いた上,Y社とN組合副執行委員長らが2回にわたって協議したものの,決裂した。

〔設 問〕

1.Y社がX1らに対して行った雇用打切りの法的評価について論じなさい。

2.Y社がRとSに対して行った懲戒処分及びN組合員ら165名に対して行った賃金カットの効力について論じなさい。

出典:法務省「2009年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。