2009年 司法試験 論文式 国際関係法(公法系) 第1問
問題
配点 50点[国際関係法(公法系)]
〔第1問〕(配点:50)
隣接するX国とY国の間では,Y国が実効的な支配を行っているα地方の領有権が長く争われてきた。最近になってY国がα地方領有の正当性を声高に主張し,同時にα地方に駐留する軍隊を大幅に増強したために,両国の関係が極度に悪化し,X国とα地方を区切る事実上の境界線付近で小規模な軍事衝突も幾つか起こった。
X国は,Y国のこうした行為に反発して,自国内にいるY国民の出国を禁止すると同時に,彼らの資産を没収するという措置を採った。それに反発したY国は,Y国内のX国民の預金を凍結し,さらに,X国及びY国(以下「XY両国」という。)が加盟する地域機関であるA連合の設立条約に基づいて,A連合の「平和安全保障理事会」を緊急招集した。開催された平和安全保障理事会は,X国代表反対のまま3分の2の多数を得て(決議採択のための定足数及び採択要件を満たしている。),A連合設立条約第4条⒜に基づいて,X国の措置を中止させるためにA連合加盟国に必要な手段を採ることを授権する旨の決議を採択した。その直後,Y国はα地方からX国内(X国が実効的支配を行い,Y国もX国領土と承認している地域)に軍隊を侵攻させ,Y国民の出国とその資産の回復を要求してX国内の一部の占領を続けた。
XY両国は国際連合加盟国であり,またXY両国は共に,「国際司法裁判所規程第36条第2項の規定に従い,この宣言の日付以後の事態又は事実に関して同日以後に発生するすべての紛争であって他の平和的解決方法によって解決されないものについて,国際司法裁判所の管轄を,同一の義務を受諾する他の国に対する関係において,かつ,相互条件で,当然にかつ特別の合意なしに義務的であると認めることを宣言する光栄を有します。」との宣言を,1960年代に国際連合事務総長にあてて行っている。
また,A連合設立条約第4条⒜は,「重大な状況において,平和安全保障理事会の決定に従って,加盟国に介入する連合の権利」を規定し,第5条⒝は,平和安全保障理事会の権限として,「設立条約第4条⒜に従って,連合のために,重大な状況において,連合が加盟国に介入する方式を承認すること」を挙げる。
〔設 問〕
⑴ Y国が行ったX国民の預金凍結措置を法的に評価しなさい。
⑵ Y国が行った軍事的侵攻を,A連合の対応も含めて法的に評価しなさい。
⑶ Y国によるX国領土の一部占領後,他の多くの国際連合加盟国が事態の深刻性に懸念を持った。これら加盟国が,国際連合を利用していかなる措置を求めることができるかについて説明しなさい。
⑷ 領土の一部を占領されたX国は,Y国の軍事占領を止めさせるために,国際司法裁判所をどのように利用することができるか。管轄権の基礎も含めて説明しなさい。
出典:法務省「2009年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。