2008年 司法試験 論文式 公法系科目 第1問
問題
配点 100点[公法系科目]
〔第1問〕(配点:100)
200*年度インターネット白書によると,インターネット利用者数は推計で約8900万人とされ,国民のおよそ4分の3がインターネットを利用していることになる。とりわけ,携帯電話所有者のほぼ100%がインターネットにアクセスしている。インターネットは,既に個人レベルにまで普及しており,インターネットなしの生活は考えられなくなっている反面,様々な弊害も問題視されている。それは,過度の性的表現,過度の暴力や残虐な表現,犯罪や違法薬物への興味を引き起こすような情報等が子どもに及ぼす有害な影響である。また,過度の性的表現等を見たくない大人もおり,そのような大人に配慮することも必要であるという意見も主張されてきていた。
有害な影響を及ぼすインターネット上の情報を子どもが閲覧できないようにする技術的対策として,フィルタリング・ソフトウェア(以下「フィルタリング・ソフト」ともいう。)がある。国は,子どもが使用する携帯電話等へのフィルタリング・ソフトの搭載を促進することが効果的と考え,学校や携帯電話等の販売業者等を通じるなどしてその普及を図ってきていた。しかし,前記白書によれば,インターネットを利用する際にフィルタリング・ソフトを使用している利用者は10%にとどまり,フィルタリング・ソフトについて知らないという利用者が70%に上っていた。政府は,過度の性的表現等から子どもを保護することを更に徹底するための対策等の強化について検討し,201×年,「インターネット上の有害情報からの子どもその他の利用者の保護等を図るためのフィルタリング・ソフトウェアの普及の促進に関する法律」(フィルタリング・ソフト法)案を策定して国会に提出し,同法案は衆参両院で可決・成立した。
フィルタリング・ソフト法は,有害情報を定義するとともに,その基準の定めなど細目的事項について内閣府令に委任している。同法によれば,パソコン,携帯電話等のインターネットへの接続機能を有する電子機器(以下「インターネット接続電子機器」という。)を製造する業者は,これを製造する場合には,内閣総理大臣が指定した適合フィルタリング・ソフトウェア(以下「適合ソフト」という。)の一つをあらかじめ搭載しなければならず,インターネット接続電子機器を販売する業者は,法施行前に製造された製品等,適合ソフトが搭載されていないインターネット接続電子機器を販売する場合には,適合ソフトの一つをあらかじめ搭載して販売しなければならない(違反した場合は,罰則が適用される。)。ただし,販売業者はインターネット接続電子機器の購入者から,専ら使用することとなる者が18歳未満の者ではないことを理由として適合ソフトの削除を求める旨の申出を受けたときは,使用者が18歳未満の者ではないことを所定の方法で確認した上で,適合ソフトを削除することができる(当該確認を怠って削除して販売した場合は,罰則が適用される。)。他方で,フィルタリング・ソフト法は,適合ソフトの効果を損なうソフトウェアが蔓延し,18歳未満の者の保護が図れなくなることを防止するため,適合ソフトを削除し又は使用目的に沿うべき動作をさせないプログラムを他人に提供してはならないし,また,適合ソフトが搭載されたインターネット接続電子機器を使用する者は,正当な理由なく,同法に定める手続以外の手続で適合ソフトを削除してはならない旨を規定している(提供又は無断削除した場合は,罰則が適用される。)。なお,同法は,適合ソフト搭載の促進のために国が助成措置を講じることとしており,使用者は,適合ソフト搭載のために上乗せされた価格部分を追加的に自己負担することなく,適合ソフトを搭載したインターネット接続電子機器を購入することができる。また,適合ソフトが搭載されていないインターネット接続電子機器を所有している者も,追加的な自己負担なしに適合ソフトを搭載してもらうことができる(資料1,資料2,資料3参照)。
Aは,平和問題と死刑存廃問題に関係する情報を無料で配信するサイト(以下「本件サイト」という。)を運営していた。本件サイトには,戦場における死傷者の無残な画像,拷問を受ける人々の画像,公開処刑の画像等,見る人に不快感を与える可能性のある画像も掲載されていた。フィルタリング・ソフト法施行後,本件サイトに含まれるウェブページの大半が有害情報を含む有害ウェブページとして,かつ本件サイト全体が有害ウェブサイトとして指定された。このため,適合ソフトを搭載したインターネット接続電子機器では,本件サイト内のすべてのウェブページが閲覧できなくなった。
Aは,大人ばかりでなく子どもも真実を知った上で問題を考える必要があるという信念のもとで本件サイトを運営していた。しかも,Aは,見る人に不快感を与える可能性のある画像が表示される前に,「次のウェブページには,不快感を与えるかもしれない画像が掲載されています。」という注意を促す文章を掲げていた。遮断される以前に本件サイトに寄せられていた意見のほとんどは,画像を見てショックを受けたが,平和や死刑の問題を真剣に考えるようになったというものであった。Aは,子どもが全く見ることができず,18歳以上の者も所定の手続を踏まなければ見ることができないことへの対抗策として,適合ソフトが搭載されていても本件サイトを閲覧できるようにするプログラムを開発した上,本件サイトとは別の自分のサイトに同プログラムをアップロードし,無償でダウンロードできるようにした。
このため,Aは,フィルタリング・ソフト法第17条及び第16条第1項第2号が定める,適合ソフトの使用目的に沿うべき動作をさせないプログラムを提供する罪に当たるものとして起訴された。
〔設 問〕
1. あなたがAの弁護人であったとして,裁判においてどのような憲法上の主張を行うか,具体的に論じなさい。
2. Aの主張に対する検察官の主張を想定しつつ,憲法上の問題点について,あなた自身の見解を述べなさい。
<用語説明>
- ウェブページ:
- インターネット上に公開されている情報を閲覧ソフトで閲覧した場合に,一度に表示されるデータのまとまりをいう。
- サイト:
- ウェブサイトともいう。複数のウェブページで構成された全体のウェブページ群を指す。また,そのウェブページ群が置いてあるインターネット上での場所を指す。
- ソフトウェア:
- コンピュータの処理の手順を示すプログラムの総称。
- アップロード:
- ネットワークを通じて,利用者のコンピュータに保存されているデータをサーバ・コンピュータ(*)に転送すること。
- ダウンロード:
- ネットワークを通じて,サーバ・コンピュータ(*)に保存されているデータを利用者のコンピュータに転送すること。
- *サーバ・コンピュータ:
- ネットワークにおいて,自身の持っている機能やデータを提供するコンピュータのこと。
資料1: インターネット上の有害情報からの子どもその他の利用者の保護等を図るためのフィルタリング・ソフトウェアの普及の促進に関する法律
目次
第1章 総則(第1条-第4条)
第2章 適合ソフトウェアの指定及びその搭載義務等(第5条-第12条)
第3章 フィルタリング審議会(第13条-第15条)
第4章 適合ソフトウェア削除プログラムの提供等の禁止(第16条)
第5章 罰則(第17条-第19条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この法律は,インターネットを利用する子どもを有害情報から保護するとともに,インターネットを利用するその他の国民についても,有害情報にさらされることを希望しない者が有害情報にさらされることを防止するため,フィルタリング・ソフトウェアの普及の促進を図ることを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 子ども 18歳に満たない者をいう。
二 有害情報 インターネット上で流通している情報で,子どもに対し,著しく性的感情を刺激し,著しく残虐性を助長し,又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして,内閣府令で定める基準に該当し,子どもの健全な成長を阻害するおそれがあると認められるものをいう。
三 有害ウェブページ 有害情報が掲載されているウェブページとして内閣総理大臣が指定するものをいう。
四 有害ウェブサイト 有害ウェブページを含み内容的に一つのまとまりをなすウェブページ群として内閣総理大臣が指定するものをいう。
五 フィルタリング・ソフトウェア 有害ウェブサイトを閲覧できないようにする機能を有するプログラムをいう。
六 インターネット接続電子機器 電子計算機,携帯電話その他の電子機器であって,インターネットへの接続機能を有するものをいう。
七 プログラム インターネット接続電子機器に対する指令であって,一の結果を得ることができるように組み合わせたものをいう。
(国及び地方公共団体の責務)
第3条 (略)
(保護者の責務)
第4条 (略)
第2章 適合ソフトウェアの指定及びその搭載義務等
(有害ウェブページ等の指定)
第5条 内閣総理大臣は,有害ウェブページ及び有害ウェブサイトを指定するものとする。
(適合ソフトウェアの指定)
第6条 内閣総理大臣は,フィルタリング・ソフトウェアを開発した者からの申出を受けて,当該フィルタリング・ソフトウェアが有害ウェブサイトを閲覧できないようにするために必要な性能を有するかどうかを検査し,これを有すると認めるものを適合フィルタリング・ソフトウェア(以下「適合ソフトウェア」という。)として指定するものとする。
2 適合ソフトウェアの検査の方法は,内閣府令で定める。
(告示)
第7条 内閣総理大臣は,第5条又は前条第1項の規定による指定をした場合には,その旨その他内閣府令で定める事項を告示するものとする。これを取り消したときも,同様とする。
(適合ソフトウェアの搭載義務)
第8条 インターネット接続電子機器の製造を業として行う者(以下「製造業者」という。)は,これを製造する場合には,適合ソフトウェアの一をこれに搭載しなければならない。
2 インターネット接続電子機器の販売を業として行う者(以下「販売業者」という。)は,適合ソフトウェアが搭載されていないインターネット接続電子機器を販売する場合には,適合ソフトウェアの一をあらかじめこれに搭載して販売しなければならない。
(購入者による適合ソフトウェアの削除の求め)
第9条 前条の規定にかかわらず,当該インターネット接続電子機器を専ら使用することとなる者が子どもでない場合には,これを購入しようとする者は,当該インターネット接続電子機器を製造した製造業者又はこれを販売する販売業者に対し,搭載されている適合ソフトウェアを削除するよう求めることができる。
2 前項に規定する適合ソフトウェアの削除を求められた製造業者又は販売業者は,その削除をする場合には,内閣府令で定めるところにより,あらかじめ,当該インターネット接続電子機器を専ら使用することとなる者が子どもでないことを確認しなければならない。
(使用者による適合ソフトウェアの搭載の求め)
第10条 適合ソフトウェアが搭載されていないインターネット接続電子機器を使用する者は,当該インターネット接続電子機器を製造した製造業者又はこれを販売した販売業者に対し,適合ソフトウェアを搭載するよう求めることができる。
(搭載費用の助成)
第11条 国は,第8条及び前条に規定する適合ソフトウェアの搭載のための費用について,製造業者及び販売業者に対する助成措置を講ずるものとする。
(使用者による適合ソフトウェアの削除の求め)
第12条 適合ソフトウェアが搭載されているインターネット接続電子機器を専ら使用する者が子どもでない場合には,その使用者は,当該インターネット接続電子機器を製造した製造業者又はこれを販売した販売業者に対し,当該適合ソフトウェアを削除するよう求めることができる。
2 前項に規定する適合ソフトウェアの削除を求められた製造業者又は販売業者は,その削除をする場合には,内閣府令で定めるところにより,あらかじめ,当該インターネット接続電子機器を専ら使用する者が子どもでないことを確認しなければならない。
第3章 フィルタリング審議会
(設置)
第13条 内閣総理大臣の諮問に応じて,次項に掲げる事項について調査審議させるため,内閣府に,フィルタリング審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 内閣総理大臣は,次に掲げる場合には,審議会の意見を聴かなければならない。
一 第2条第2号に規定する内閣府令の基準を定めようとするとき。
二 第5条の規定による有害ウェブページ又は有害ウェブサイトの指定をしようとするとき。
三 第6条の規定による適合ソフトウェアの指定をしようとするとき。
(組織等)
第14条 審議会は,前条第2項に掲げる事項に関して学識経験のある者のうちから,内閣総理大臣が任命する委員10人以内で組織する。
2 委員の任期は,2年とする。ただし,補欠の委員の任期は,前任者の残任期間とする。
(内閣府令への委任)
第15条 前二条に規定するもののほか,審議会の組織及び運営に関し必要な事項は,内閣府令で定める。
第4章 適合ソフトウェア削除プログラムの提供等の禁止
第16条 何人も,次に掲げるものを他人に提供してはならない。
一 適合ソフトウェアを削除するプログラム
二 適合ソフトウェアの使用目的に沿うべき動作をさせないプログラム
2 適合ソフトウェアが搭載されたインターネット接続電子機器を使用する者は,正当な理由なく,第9条又は第12条に定める手続以外の手続で,当該適合ソフトウェアを削除してはならない。
第5章 罰則
第17条 第8条又は前条第1項の規定に違反した者は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
第18条 第9条第2項,第12条第2項又は第16条第2項の規定に違反した者は,30万円以下の罰金に処する。
第19条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務に関して前二条の罪を犯したときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
附 則(以下略)
資料2: インターネット上の有害情報からの子どもその他の利用者の保護等を図るためのフィルタリング・ソフトウェアの普及の促進に関する内閣府令
(法第2条第2号の基準)
第1条 インターネット上の有害情報からの子どもその他の利用者の保護等を図るためのフィルタリング・ソフトウェアの普及の促進に関する法律(以下「法」という。)第2条第2号に定める基準は,次の各号に掲げる種別に応じ,当該各号に定めるものとする。
一 著しく性的感情を刺激するもの 次のいずれかに該当するものであること。
イ 全裸若しくは半裸又はこれらに近い状態の姿態を描写することにより,卑わいな感じを与え,又は性的行為を容易に連想させるものであること。
ロ 性的行為を露骨に描写し,又は表現することにより,卑わいな感じを与え,又は性的行為を容易に連想させるものであること。
ハ 電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより,人に卑わいな行為を擬似的に体験させるものであること。
ニ イからハまでに掲げるもののほか,その描写又は表現がこれらの基準に該当するものと同程度に卑わいな感じを与え,又は性的行為を容易に連想させるものであること。
二 著しく残虐性を助長するもの 次のいずれかに該当するものであること。
イ 暴力を不当に賛美するように表現しているものであること。
ロ 残虐な殺人,傷害,暴行,処刑等の場面又は殺傷による肉体的苦痛若しくは言語等による精神的苦痛を刺激的に描写し,又は表現しているものであること。
ハ 電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより,人に残虐な行為を擬似的に体験させるものであること。
ニ イからハまでに掲げるもののほか,その描写又は表現がこれらの基準に該当するものと同程度に残虐性を助長するものであること。
三 著しく自殺又は犯罪を誘発するもの 次のいずれかに該当するものであること。
イ 自殺又は刑罰法令に触れる行為を賛美し,又はこれらの行為の実行を勧め,若しくは唆すような表現をしたものであること。
ロ 自殺又は刑罰法令に触れる行為の手段を,模倣できるように詳細に,又は具体的に描写し,又は表現したものであること。
ハ 電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより,人に刑罰法令に触れる行為を擬似的に体験させるものであること。
(以下略)
資料3: フィルタリング・ソフト法Q&A(内閣府作成の広報資料から)
ここでは,いわゆるフィルタリング・ソフト法に関してよくある御質問とそれに対する回答を一問一答形式で掲載しています。
Q1 有害情報を規制する方法として,フィルタリング・ソフトの普及の促進を図ることにしたのはなぜですか。
A 有害情報から子どもを保護することが強く求められています。また,有害情報にさらされずにインターネットを使用したいと考える大人の利益にも配慮する必要があります。しかし,インターネット上の情報は,このような保護されるべき又は配慮が払われるべき受け手か,それ以外の受け手かを区別することなく流通しています。このようなインターネットのシステムの中で,必要以上に影響を及ぼすことなく,保護されるべき又は配慮が払われるべき受け手の保護等を実現するには,受信する側において有害情報を遮断することが最も効果的な方法であると考えられます。そこで,本法では,表現の自由にも十分に配慮しつつ有害情報を的確に規制する方法として,フィルタリング・ソフトの普及の促進を強力に図ることとしました。
フィルタリング・ソフトは,インターネット上の情報を受信する側において,どのような情報を受信して表示するかをコントロールするプログラムで,これを使うと,情報を発信する側の機能には何ら影響を与えることなく,情報を受信する側において,不適切な情報の表示を拒否することができます。
Q2 本法は,インターネット接続電子機器を購入して子どもが使用する場合に適合ソフトの搭載を義務付けるだけでなく,インターネット接続電子機器の製造段階等で適合ソフトを搭載させ,購入後に専ら大人が使用する場合で,購入しようとする者から適合ソフトを削除してほしい旨の申出があった場合を除いて適合ソフトを削除しないこととしていますが,なぜこのような制度にしたのですか。
A 200*年の世論調査では,インターネットを利用していると予想外の有害情報が表示されることがあり,有害サイトに接続するとウイルスに感染したり法外な利用料を請求される心配があるなどの理由で,インターネットの利用に不安を感じるとの回答が60%に達しました。このような不安に煩わされることなくインターネットを利用したいとの国民の利益は十分考慮すべきであると考えられます。このような不安を解消し,安心してインターネットを利用するためには,フィルタリング・ソフトの搭載が効果的ですが,同じ世論調査で,フィルタリング・ソフトについても調査したところ,全く知らないが70%,名称だけしか知らないが15%で,使用している利用者は10%にとどまり,フィルタリング・ソフトについての認識が極めて低いことが確認できました。このため,国民の利益を確実に実現するには,子どもが使用するかどうかにかかわらず,製造段階等であらかじめフィルタリング・ソフトを搭載させておき,購入者から,専ら大人が使用する予定であり,フィルタリング・ソフトを削除してほしい旨の積極的な申出がない限り,そのまま販売させることにより,フィルタリング・ソフトの普及を強力に進めることとしました。
Q3 本法により,インターネット接続電子機器には,内閣総理大臣が指定した適合ソフトが原則として搭載されることになりますが,この適合ソフトによりどのような情報が遮断されるのですか。
A 本法は,一定の有害情報から子どもを保護するとともに,これらにさらされることを欲しない大人の利益を実現することを目的としています。この目的を確実に実現するとともに,有害情報ではない情報に影響を与えない制度とするため,本法は,内閣総理大臣が,有害情報(法2条2号,府令1条)が掲載されているウェブページを,有害ウェブページとして指定・告示することとし,さらに,有害ウェブページを含み,内容的に一つのまとまりをなすウェブページ群を,有害ウェブサイトとして指定・告示することとしています(法5条,7条)。その上で,本法は,内閣総理大臣が,有害ウェブサイトを遮断するのに必要な性能を有するフィルタリング・ソフトを適合ソフトとして指定することとしています(法6条1項)。複数のウェブページで内容的に一つのまとまりをなすものを,一般にウェブサイトといいますが,その中に有害ウェブページがある場合は,ウェブサイト全体が子どもの健全な成長を阻害する情報を含むおそれが高いので,適合ソフトにより,そのウェブサイト全体を閲覧できないようにする必要があります。本法は,どの範囲のウェブサイトが閲覧ができなくなるのかを明確にするため,有害ウェブサイトを具体的に指定・告示することとしています。
Q4 適合ソフトを削除したり使用目的に沿うべき動作をさせないプログラムの提供を禁止することにしたのはなぜですか。また,インターネット接続電子機器の使用者が,本法に定める手続以外の手続で適合ソフトを削除した場合に処罰されるのはなぜですか。
A 本法では,インターネット上の有害情報から子どもを確実に保護するため,インターネット接続電子機器の製造業者又は販売業者に,これを専ら使用する者が18歳以上であることを府令で定める方法で確認することを求め,これが確認できた場合に限って適合ソフトを削除できることとしています。適合ソフトを削除したり使用目的に沿うべき動作をさせないプログラムが提供されると,このような手続を踏まずに無断で削除等されてしまうので,子どもが現に使用するインターネット接続電子機器から適合ソフトが削除等されたり,適合ソフトが削除等されたインターネット接続電子機器が子どもの使用に供されるおそれが生じます。このような事態が生ずると,その保護が図られなくなりますから,このようなプログラムの提供は罰則で禁止する必要があります。
また,本法に定める手続以外の手続で適合ソフトを削除する行為は,このような削除プログラムの提供行為が蔓延する温床になります。一般の人々が自分で適合ソフトを削除するためには,削除ソフトを入手する必要があるので,無断で適合ソフトを削除する行為を許しておくと,削除ソフトの作成・販売が促されます。反対に,削除ソフトの提供を抑止するには,無断削除を禁止して需要を断つことが不可欠です。
出典:法務省「2008年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。