2008年 司法試験 論文式 経済法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
以下の事例を前提として,各設問に答えなさい。
【事 例】
1 X社は,東京都内において「A」という商号,商標を用いてピザ等の宅配を行うフランチャイズシステムによる事業活動を行っている。
Aは,人気タレントを起用した広告・宣伝活動を行い,低価格でカジュアルなブランドイメージを訴求することにより,一気にそのシェアを伸ばしたが,競合業者の行う同様の宅配ピザ・フランチャイズであるB,Cが急速にAを追い上げてきている。A,B,Cは,それぞれピザ等の宅配を行うフランチャイズシステムであるが,そのピザ等の品質,販売促進活動等について現時点で有意な差はない。
各加盟店は,X社とフランチャイズ基本契約(以下「本件契約」という。)を締結して,Aフランチャイズシステムに加盟した上,拠点となる営業店舗1個所を設け,ここからピザ,サラダ類,ドリンク,デザートの宅配を行うこととなる。
2 本件契約の内容は,①X社は加盟店に対し,そのピザ等の宅配に係る営業に関し,Aという商号,商標を使用することを許諾すること,②X社は,Aフランチャイズシステム本部として,顧客に対して統一的イメージを確保し,各加盟店の営業を維持するため,加盟店に対する営業指導,統制を行うことができること,③加盟店は,ピザ等の売上げを基礎として一定の方式で算定されるロイヤルティをX社に支払うことを根幹としている。
また,本件契約では,加盟店の義務として,本部であるX社の定める営業方針等に従って営業を行うことなどが定められており,加盟店が本件契約上の義務に違反した場合には,X社は,本件契約を解除できるとされている。
3 本件契約に基づいて本部が定めた営業細則には,加盟店が従うべき営業方針等が規定されており,本部はそれに沿って加盟店に対する営業指導と統制を行っている。その営業方針等と営業指導・統制は,下記の⑴ないし⑶のとおりである。
記
⑴ 加盟店が営業店舗で調理して顧客に提供するピザ,サラダ類については,本部において,その品目,価格等を定めることとされ,加盟店が,これと異なる品目又は価格等でピザ,サラダ類の提供をすることは認められていない。このため,本部において,それらの品目,価格等を記載したチラシを印刷し,これを,加盟店に配布して使用させている。
また,加盟店が顧客に提供するドリンク,デザートは,Aという商標が使用された同フランチャイズ固有の規格の商品であり,X社が,加盟店にこれらを卸売し,加盟店は,これらを本部の定めた価格で顧客に販売提供することとされ,これらの品目,価格等も前記のチラシに記載されている。
⑵ 加盟店が顧客から受注してピザ等の商品の宅配を行う範囲(以下「営業範囲」という。)については,加盟店間で競合が生じないように,本部において,各加盟店の拠点となる営業店舗からの配達時間,距離,人口数等を勘案して,それぞれの営業範囲を具体的に指定している。そして,X社のホームページにおいても,地域ごとに各加盟店の営業範囲が地図上に色分けして表示されており,また,本部が加盟店に配布して使用させる前記⑴のチラシにも,各加盟店の営業範囲が明示され,チラシの配布もその営業範囲に限って認められている。その上で,加盟店の営業範囲外の顧客から電話等による注文がされたときは,注文を受けた加盟店はその地域を営業範囲とする加盟店にその注文を転送し,その転送先加盟店が受注して宅配を行うこととされている。
⑶ 本部は,加盟店が提供するメニューの統一性を確保し,食材の安全性を保障し,また食材を一括購入することによるスケールメリットを生かす必要があるという理由から,加盟店に対し,ピザの生地,具材等の原材料となる食材,調味料等をX社と提携関係にある輸入食材卸売業者Y社から仕入れることを義務付けている。
4 ところで,甲社は,平成16年2月1日,X社との間で本件契約を締結し,Aフランチャイズシステムの加盟店として,東京都世田谷区内において店舗を設け,ピザ等の宅配の業務を開始したが,平成17年夏ころ,その営業範囲内に相次いでB,Cの新店舗が開店したため,次第に甲社の客足が減少し,営業成績が落ち込む事態となった。
そこで,甲社は,本部の了承を得ることなく,平成18年初めころから,①甲社にピザ等の注文をした顧客に対し,次回以降の甲社のピザ等の宅配の注文時に,ピザ,サラダ類,ドリンク,デザートの代金の20%を割引するという有効期間無期限・利用回数無制限のクーポン券を配布すること,②甲社店舗の営業範囲には,同じくAフランチャイズシステムに加盟する乙社の店舗の営業範囲が隣接しているところ,乙社店舗の営業範囲のうち,甲社店舗からバイクで15分程度(Aフランチャイズシステムが各加盟店の営業範囲を定めるに当たっては,配達時間に関しては15分程度を目安としている。)の所要時間で宅配が可能である地域に,甲社が独自に作成し,甲社店舗の営業範囲を記載しない折り込みチラシを配布し,当該地域の顧客からのピザ等の宅配の注文も受注すること,③甲社がY社から仕入れている外国製のハムやチーズなどの食材については,食材輸入商社であるW社から同一製品を約2割低い価格で購入できることから,これらについてはW社から仕入れることによって仕入経費を削減するなどの対策を講じたところ,同年末ころまでに営業成績が好転した。
ちなみに,クーポン券の利用者は甲社の顧客の8割程度に上っているほか,W社からの食材の購入金額は甲社の食材の仕入金額の半分程度になっている。
5 前記甲社の行為が開始された後,乙社店舗の売上げの30%が,売上粗利益の50%がそれぞれ減少した。X社は,平成19年夏ころ,乙社から自己の営業範囲内の顧客が甲社に奪われているとの苦情を受けて調査をしたところ,前記4の事実を確認したため,甲社に対し,平成20年4月1日,3か月以内に前記4の①ないし③の各行為をやめなければ,契約上の義務違反により甲社との契約を解除すると通知した。
〔設問1〕
あなたは弁護士として甲社から,前記の事例について公正取引委員会に独占禁止法違反による申告ができないかという相談を受けた。X社による前記3の⑴ないし⑶の各営業方針等とそれに基づく営業指導・統制が独占禁止法に違反するか否かを検討しなさい。
〔設問2〕
さらに,あなたは弁護士として甲社から,X社による本件契約の解除を回避するための法的措置を依頼された。そのための独占禁止法に基づく訴訟の提起の可否について検討しなさい。
出典:法務省「2008年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。