2007年 司法試験 論文式 倒産法 第2問
問題
配点 50点[第2問](配点:50)
次の事例について,以下の設問に答えなさい。
【事 例】
Aは,宅地建物取引主任者の登録を経た上,宅地建物取引業の免許を受けて自ら不動産仲介業を営んでいたが,平成10年に購入したマンションの住宅ローンの返済のためや,平成15年ころから始めた株取引及び商品先物取引により生じた2000万円余りの損失の処理のために,いわゆる消費者金融業者からも借入れを繰り返すようになった。その結果,平成19年1月当時,Aの負債は,住宅ローンの残債務1600万円のほか,損失処理のための借入債務も,知人及び消費者金融業者からの借入れを主なものとして合計1500万円に達していた。他方,その当時のAのめぼしい財産としては,住宅ローンを被担保債権とする抵当権が設定されている時価1500万円のマンション,平成18年5月にBに絵画を時価相当額である50万円で売却したことにより生じた売買代金債権及び時価40万円の中古自動車があるだけであった。その上,収入が安定せず,その額もかろうじて生活費を賄える程度に減少していたので,Aは,弁済期にある債務を継続的に支払えない状況に陥った。そこで,Aは,平成19年1月下旬,債務の整理について,自治体が主催する法律相談を受けたこともあったが,その時は,破産手続を選択する決断ができなかった。
Aは,その後も負債の返済に窮していたため,平成19年2月初旬,消費者金融業者に借入れを申し込む際,申込書の「他の業者からの借入額」を記載する欄に,正直に記載すると借入れを断られるとの思いから100万円と記載した。Aは,応対した従業員から「本当にこれ以上の負債はないのですか。」と尋ねられたものの,「他にはありません。」と答え,50万円を借りたが,この借入れについては,わずかの返済しかできなかった。
また,Aは,借入先を探している際,クレジットカードを利用して家電量販店でパソコンを購入し,それを送ってくれれば購入価格の半額程度で買い取るとの情報をある業者から得た。藁にもすがる思いであったAは,平成19年3月上旬,クレジットカードを利用して家電量販店において60万円でパソコンを3台購入し,直ちにその業者に送って30万円を得た。しかし,その金員は他の返済に費消され,クレジットカード会社へはほとんど弁済することができなかった。
平成19年3月下旬,返済の督促に耐えきれなくなったAは,弁護士Cに相談の上,同年4月6日,破産手続開始及び免責許可の各申立てをし,同月11日,破産手続が開始され,裁判所により破産管財人Dが選任された。
〔設 問〕
1. Aは,自治体が主催した法律相談を受けた際,担当弁護士が説明してくれた小規模個人再生手続にも関心を持ったが,「不動産仲介業の収入が減って生活費を賄うのがやっとの状態だから,小規模個人再生手続を利用することは難しいと思う。」との説明を受けた。
破産手続との比較において小規模個人再生手続の利点を指摘するとともに,担当弁護士が「小規模個人再生手続を利用することは難しい。」と判断した理由を簡潔に説明しなさい。
2. Bから次のような相談を受けた弁護士Eは,Bに対して,どのように答えるのが適切か検討しなさい。
【Bの相談】
私は,平成18年5月にAから絵画1点を代金50万円で購入し,その引渡しを受けましたが,贋作ではないかとの疑いもあって代金を支払っていませんでした。その後,平成19年4月下旬に至り,本物であることが判明したので,Aに対し,50万円を支払いました。ところが,同年5月中旬になって,Aの破産管財人と称するDから,50万円をDに支払うように求められました。
私は,Dの求めに応じなければならないのでしょうか。
3. 破産手続開始の申立てを受任した弁護士Cは,Aから次の質問を受けた。どのように答えるのが適切か検討しなさい。
【Aの質問】
私は,破産手続が開始された後は,業者から委託を受けて化粧品や健康食品の訪問販売の仕事に従事して生計を立てようと考えています。仕事をするためには自動車があった方が便利ですし,公共交通機関が乏しい地方であることから,高齢の母の通院の介助や日用品の買物といった日常生活の場面でも自動車が不可欠です。そこで,中古自動車を保有し続けることができるのであればありがたいのですが,それは可能でしょうか。
4. Aの免責許可の申立てについて裁判所が判断する際に検討すべき事項を指摘して説明しなさい。ただし,設問2及び3に現れた事実は考慮しないものとする。
(参照条文) 宅地建物取引業法
(試験)
第16条第1項 都道府県知事は,国土交通省令の定めるところにより,宅地建物取引主任者資格試験(以下「試験」という。)を行わなければならない。
(取引主任者の登録)
第18条第1項 試験に合格した者で,宅地若しくは建物の取引に関し国土交通省令で定める期間以上の実務の経験を有するもの又は国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めたものは,国土交通省令の定めるところにより,当該試験を行つた都道府県知事の登録を受けることができる。ただし,次の各号のいずれかに該当する者については,この限りでない。
一,二 (略)
三 破産者で復権を得ないもの
四〜八 (略)
(登録の消除)
第68条の2第1項 都道府県知事は,その登録を受けている取引主任者が次の各号の一に該当する場合においては,当該登録を消除しなければならない。
一 第18条第1項第1号から第5号の2までの一に該当するに至つたとき。
二〜四 (略)
出典:法務省「2007年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。