2007年 司法試験 論文式 労働法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
○○年10月10日,弁護士であるあなたは,R労働組合(以下「R労組」という。)の委員長であるX1とP労働組合(以下「P労組」という。)の組合員であるX11〜X13から,後記【相談事例】について,雇用の回復や本来もらえたはずの賃金を得るために,Y社を相手方として訴えを提起したいとの相談を受けました。
次の設問に答えなさい。
〔設 問〕
1. あなたがX1〜X13の代理人として訴えを提起するとした場合,どのような請求をしますか。X1〜X10とX11〜X13に分けて解答しなさい。(配点:10)
2. それぞれの請求について,想定される相手方の反論も考慮しつつ,問題となる具体的論点を挙げた上,あなたの見解を述べなさい。(配点:40)
【相談事例】
Y社は,約100名の従業員を雇用するタクシー会社である。X1〜X10は,かつてY社に雇用され,タクシー運転手として働いていた。X11〜X13は,現にY社の従業員であり,タクシー運転手として働いている。Y社には○○年4月時点で,X1〜X13を含む80名の運転手で組織されるP労組が存在していた。Y社は,多額の累積赤字を抱えていたことから,同年4月初旬に,従来の賃金協定に基づく年功序列的な旧賃金体系に代えて,新賃金体系を導入するなどの内容を含む会社再建案をP労組に提示した。新賃金体系は,固定給の割合を低くして歩合給の比重を高くするとともに,定期昇給を廃止するなど,旧賃金体系よりも運転手にとっては一般的に不利益な内容になることが予想され,特に,年齢の高いX11〜X13らには不利益な内容であった。新賃金体系の提案をめぐって,P労組内部は混乱して基本方針も二転三転し,5月の組合大会ではX1〜X13は新賃金体系を内容とする協定の締結に強く反対した。しかし,結局,P労組では改めて6月20日に組合大会を開催し,「会社提案を受諾し,新賃金協定を締結する。」との執行部案が62対13(反対者はX1〜X13)の多数で可決された。ただし,P労組の組合規約(本問末尾参照)に規定されている「運転手班別集会」は開催されなかった。このようなP労組の執行部や多数派の態度に不満を抱いたX1〜X10は,翌日の6月21日にP労組に脱退届を提出し,即日10名でR労組を結成すると同時に,Y社に結成通知を行った。
他方,P労組とY社はなおも交渉を重ねた結果,7月10日,両者間に会社再建案に関する合意が成立し,新賃金協定(以下「7・10協定」という。)が締結され(協定書には,P労組執行委員長とY社代表取締役の記名押印がある。),8月1日から発効した。この結果,7月末日をもって旧賃金協定は効力を失うこととなったが,新賃金体系以外の懸案事項であった勤務時間の配分方法や労災補償の上積み案に関するY社内部の意思の不統一もあり,7・10協定に対応する就業規則の改定作業は遅れ,10月10日現在なお改定されず,賃金に関する就業規則上の規定は,旧賃金協定と同一内容のままであった。なお,X11〜X13の3名は,7・10協定には不満を抱きつつも,P労組に残留することにした。
P労組は,7月12日にX1〜X10を除名処分に付し,P労組とY社間で締結されているユニオン・ショップ協定に基づき,Y社に対しX1〜X10を解雇するように求めた。Y社は,これを受けて,7月15日にX1〜X10に対し予告手当を提供した上で,即時解雇の意思表示をした。他方,P労組に残留したX11〜X13は,受領した8月分と9月分の賃金がそれまでより20%ほど減っていたので,R労組委員長のX1に不満を打ち明けた。その結果,弁護士に相談してみようということになった。
【P労組の組合規約(関係部分のみ抜粋)】
「第××条 労働協約の締結は,運転手班別集会での意見を集約した上,執行委員会が組合大会に提案し,同大会において組合員の過半数の賛成を得て執行委員長がこれを行うものとする。」
出典:法務省「2007年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。