司法試験論文式過去問演習

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2007年 司法試験 論文式 労働法 第1問

問題

配点 50点

[労 働 法]

〔第1問〕(配点:50)

以下の【事実関係】の下で,D社は,A及びBに対して,何らかの懲戒処分を行いたいと考えている。この相談に対し,あなたが弁護士として回答する場合に検討すべき法律上の問題点を,AとBそれぞれについて指摘し,それについてのあなたの見解を述べなさい。

【事実関係】

A及びBは,製造業を営むC社の従業員であるが,現在,子会社のD社に在籍出向中であり,Aは同社の本社営業部において,Bは同社のE営業所においてそれぞれ勤務している。C社の就業規則においては,所定労働日は月曜日から金曜日までとされ,始業時刻は午前8時,終業時刻は午後5時(休憩1時間)と定められている。他方,D社では,労働日はC社と同一であるが,製品の販売等を主たる事業としていることから,顧客との取引の多い時間帯に合わせて,各事業場において始業時刻を午前9時,終業時刻を午後6時(休憩1時間)としている。

C社の上司からA・B両名に出向の内示があった際,Aは,小さな子供を抱えており,出向先までの通勤時間はあまり変わらないものの,終業時刻が1時間遅くなるため,帰宅の際に子供を保育所に迎えに行くことが困難になることにつき不満を示し,Bも,小規模な営業所勤務となることに不満を述べた。しかし,両名は,結局は異議を留めずに出向に応じ,D社の勤務時間どおりに就労し始めた。

ところが,その後,E営業所でBの不手際により商品の受注事務につき多大な支障が生じ,取引先から苦情が多数寄せられた。このBの不手際は,出向後仕事に熱意を示さなくなっていた同人が上司の指示を無視したために生じたものであった。また,この事態に対応するため,本社営業部でも残業が必要になり,営業部長は,当日の水曜日と翌木曜日の2日間にわたり,Aを含む営業部の関係従業員に対して,それぞれ午後11時までの5時間の残業を命じた。しかし,Aは,水曜日については,友人に子供を一時預かってもらうことが可能になったとして午後10時までは残業したものの,その後の残業は拒否して退社し,木曜日は,その手立てがつかないと述べて一切の残業を拒否し,午後6時に退社した。

D社の就業規則には,「会社は,業務上の必要に応じて,労働基準法第36条所定の協定に従い,時間外又は休日に従業員を労働させることができる。」という規定があり,D社は,各事業場における労働者の過半数を代表する者との間で同協定を締結し,所轄労働基準監督署長に届け出ているが,協定には,「納期への対応,決算事務,その他業務の必要上やむを得ない場合」が時間外・休日労働の事由として挙げられ,延長時間の限度は,1日については4時間と記載されていた。

また,D社の就業規則には,会社が懲戒処分をなし得る旨の規定のほか,譴責・減給・出勤停止・諭旨退職・懲戒解雇という懲戒処分の種類を定めた規定があり,業務上の指示・命令違反その他の懲戒事由を定めた規定も置かれている。もっとも,同社のE営業所においては,常時就労している従業員数は8名であり,上記就業規則の周知手続はとられていなかった。他方,C社でも,就業規則上にD社の上記規定と同様の定めがあり,労働基準法第36条の協定も締結されているが,C・D両社間の出向協定には懲戒処分についての定めはなかった。

出典:法務省「2007年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。