2007年 司法試験 論文式 経済法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
電機メーカーのX社は,平成13年に,家庭用電気製品に関する小売業者向け価格カルテルについて独占禁止法違反により課徴金納付命令を受け,以後,会社内に独占禁止法遵守体制(コンプライアンス体制)を置いていた。平成17年12月にX社の代表取締役社長Aは,コンプライアンス部門を担当する取締役Bから次のような報告を受けた。すなわち,「平成15年初めから,X社が甲省発注の重電製品であるα電気製品の納入について同業他社である5社(Y社,P社,Q社,R社,S社)との間で入札に関して会合を開いて話し合いを行っていることが判明した。X社の営業部門のCが,他社の営業担当者との年1回の会合に参加して,甲省発注のα電気製品の入札(年間150億円程度の予算が確保されており,各四半期ごとに甲省本省・地方支分部局ごとに入札が行われる。)に関し,前年度の実績に応じて各社が受注する旨の基本ルールを確認している。また,各年度の個別の入札に当たっては,その都度,基本ルールに沿って落札できるように,各入札に参加する各社は話合いにより落札予定者と落札価格を決め,実際の入札時にも落札予定者以外の会社は落札価格より高い入札価格で応札することにより落札予定者の落札に協力してきた。」(以下「Bの報告」という。)という報告であった。
これを受け,X社は,取締役会を開催し,法令遵守の観点からこの会合に参加しない旨を決議した。BとCは,平成17年12月末に開催された上記5社との会合に出席した上,X社が平成18年以降この会合に参加せず,さらに,当分の間,甲省発注のα電気製品の入札から撤退する旨を告げた。その際,X社は,甲省や公正取引委員会にこれらの事実を申し出ることはしないと述べ,実際にも,申し出ることはなかった。
Y社も,平成19年6月に法令遵守の監査を実施した結果,上記の話合いの事実を把握し,同月20日,公正取引委員会に対し,課徴金の減免のための事実の報告を行い,更に資料も提出した。
他方,X社は,平成18年1月以降,甲省発注のα電気製品の入札に参加していなかったところ,α電気事業部門の営業利益が落ちてきたため,平成19年8月,甲省の実施する入札に再参入することを決定したが,その際,他社から上記の話合いに参加するよう申入れが来てもこれに従わないこととした。X社は,同年9月末の甲省発注に係るα電気製品の入札に参加し,P社らからの話合いの申入れを拒絶し5億円で受注した。
公正取引委員会は,Y社の報告の結果,6社による上記の話合いの事実を把握することとなり,平成19年12月28日,独占禁止法第47条第1項第4号に基づいて参加事業者の事業所及び担当者の自宅に一斉に立ち入り,必要な物件の検査を行った。これに伴い,各社は,それぞれ,以後,かかる入札に関する会合に参加しない旨の通知を他社に対して発出した。
なお,以下の各設問の解答に当たっては,平成15年以降の行為のすべてについて現行の独占禁止法が適用されるものと仮定し,平成17年改正独占禁止法の経過措置を含め,経過措置は考慮しないものとする。
〔設問1〕
公正取引委員会の審査の結果,次のような証拠が得られた。それぞれの場合において,いかなる行為が独占禁止法に違反すると認定できるか,条文を踏まえつつ具体的に述べよ。
(1) X社と5社がBの報告のとおりの行為を行っていた事実を認める証拠が得られた場合
(2) X社と5社が,毎年度の会合において前年度実績に応じて各社の受注割合を決定する旨の基本ルールを確認していたことを否定し,甲省発注のα電気製品に係る個々の入札のいずれにおいても,入札に参加する事業者があらかじめ落札予定業者を決定し,他社はそれより高い入札価格で応札していた事実を認める証拠のみが得られた場合。なお,この場合において,公正取引委員会に対するY社の報告はなかったものと仮定する。
〔設問2〕
公正取引委員会は,審査の結果,X社,Y社らの6社がいずれも独占禁止法に違反する行為を行っていたと認定し,課徴金の納付を命ずることとした。
X社は,資本金が2億円で従業員が400名の電機メーカーであり,Y社は,資本金が4億円で従業員が600名の電機メーカーである。また,両社のα電気製品に係る売上額及び事業全体の売上額(総売上額)はそれぞれ以下のとおりである。以上を前提として,X社及びY社が納付すべき課徴金額を算定し,その理由及び算定の過程を述べよ。
| X 社 | 平成15年 | 平成16年 | 平成17年 | 平成18年 | 平成19年 |
| 甲省発注α電気製 品売上額 | 10億円 | 20億円 | 20億円 | 0円 | 5億円 |
| 乙県等自治体発注 α電気製品売上額 | 30億円 | 30億円 | 40億円 | 20億円 | 20億円 |
| X 社 総 売 上 額 | 1200億円 | 1000億円 | 900億円 | 800億円 | 600億円 |
| Y 社 | 平成15年 | 平成16年 | 平成17年 | 平成18年 | 平成19年 |
| 甲省発注α電気製 品売上額 | 8億円 | 16億円 | 16億円 | 18億円 | 10億円 |
| 乙県等自治体発注 α電気製品売上額 | 28億円 | 35億円 | 42億円 | 21億円 | 19億円 |
| Y 社 総 売 上 額 | 800億円 | 1200億円 | 1300億円 | 900億円 | 900億円 |
(注)
これらの金額は,独占禁止法施行令で定められた基準に基づいて算定されたものである。
乙県等自治体発注の入札については入札に関する話合いの事実は確認されていない。
〔設問3〕
X社は,公正取引委員会が発した課徴金納付命令に不服があり,同命令について審判を請求した。審判において,X社は,「甲省発注のα電気製品の売買契約においては,平成17年以降,納入業者が独占禁止法に違反する行為により入札に参加した場合には,受注した業者は売買代金額の20%を違約金として国に支払うとの約定が設けられている。そして,X社は,国からこの約定により平成17年の売上額の20%の支払請求を受け,既にこれを支払った。課徴金制度は,カルテルによる不当な利得を国が徴収することにより,違反行為者がこれを保持することを防ぐ制度であるから,既に売上額の20%を国に支払った平成17年分の売上について,売上額全額を基礎として課徴金を課すことは,不当な利得の剥奪という制度趣旨を超えて,過大な経済的不利益を与えることになるから許されず,課徴金の算定に当たっては,平成17年分の売上額の20%を算定の基礎から外すべきである。」と主張した。この主張の当否を論ぜよ。
出典:法務省「2007年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。