司法試験論文式過去問演習

過去問の答案を投稿・採点

2007年 司法試験 論文式 経済法 第1問

問題

配点 50点

[経 済 法]

〔第1問〕(配点:50)

都市部のマンション等では,多数の自動車の駐車スペースを確保するため,二段・多段方式の機械式の駐車場装置(以下「駐車場装置」という。)が利用されることが多い。駐車場装置の製造を行う事業者(以下「製造業者」という。)は国内に6社存在し,甲社もその一つである。甲社の駐車場装置(以下「甲社製装置」という。)の売上げは,国内における駐車場装置の総販売台数の30%を占め,第一位の市場占有率(シェア)を有している。

駐車場装置は耐用年数が長く,安全に使用し続けるためには定期的な保守点検(駐車場装置の点検,給油,調整,破損部品の交換及び修理等)を必要とする。駐車場装置は,製造業者によって仕様が異なり,その取替部品も汎用品は少なく,駐車車両を乗せるためのパレット(車両を乗せる金属製の板)の落下防止設備,電子制御基盤など,製造業者ごとに仕様の異なる部品が大部分である(以下,これらの製造業者ごとに仕様の異なる部品を「構成部品」という。)。構成部品の故障・トラブルの発生は重大な事故の原因となり得るため,マンション等の駐車場の所有者・管理者にとって上記の故障・トラブルへの対応が最も重要であり,かかる故障・トラブルが発生した場合における迅速な対応の可否が保守業者の選定に当たって重視されることが多い。

甲社は,北海道地区から九州・沖縄地区まで全国を幾つかの地区に分けて,子会社を設立し,子会社において,甲社製装置の販売・据付け,甲社製装置の部品の販売を行っている。X社はそのような子会社の一つであり,関東地区において甲社製装置を独占的に販売し,その据付けを行うとともに,甲社製装置の部品(構成部品を含むすべての部品)を販売している。X社による甲社製装置の販売台数は,関東地区では6製造業者の駐車場装置全体の総販売台数の40%を占めており,第一位のシェアを有している。

駐車場装置の保守業者には,製造業者系列の保守業者と,製造業者と資本関係のない保守業者(以下「独立系保守業者」という。)があり,関東地区においても,甲社系列の保守業者である乙社(乙社は甲社及びX社が共同で出資して設立した会社である。)と,独立系保守業者のA社,B社及びC社が存在している。A社,B社及びC社は,いずれも乙社に比べて規模の小さい事業者であるが,乙社等の製造業者系列の保守業者に比べて低廉な料金で保守業務を行うことで,近時人気を集めている。関東地区における甲社製装置に係る保守業務契約に関して,A社,B社及びC社の合計シェアは70%を占め,乙社のシェア(30%)よりも高くなっている。

X社は,従来,構成部品を含む甲社製装置の部品をすべて自ら保管し,保守業者からの発注に応じて,その都度,部品の引渡しを行っていたが,この度,構成部品に関する販売方針を変更しようと考え,以下に述べるそれぞれの販売方針について,弁護士に私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)上の問題点の検討を依頼した。

あなたが弁護士としてX社から上記の依頼を受けたとして,独占禁止法上の問題点の有無を検討し,回答しなさい。なお,個々の設問に記載した事実関係は,それぞれが独立しており,他の設問の前提とはならないものとして検討しなさい。

〔設問1〕

X社の担当者は,「駐車場装置は製造業者によって仕様が異なり,それに応じて構成部品の仕様も本来異なるものがほとんどであるが,構成部品の中には他の製造業者の駐車場装置の構成部品として転用可能なものがあり,独立系の保守業者が,それを他の製造業者の駐車場装置の構成部品として転用する事例がしばしば見られる。この点に関して,国土交通省のガイドラインは,特定の製造業者の駐車場装置に他の製造業者の構成部品を使えば安全性が確保できないおそれがあるから,特定の製造業者の駐車場装置には当該製造業者製の構成部品を使用すべきであると勧告している。当社としては,この点に着目して,甲社製装置の構成部品を,独立系保守業者に販売すると,どの製造業者の駐車場装置に使用されるのか確認できず,これが甲社製装置に使用されることを確保するためには,独立系保守業者からの甲社製装置の構成部品の発注に対しては,系列の乙社において取替工事を行うことを販売の条件とするという方針を採りたい。」と説明した。

あなたがX社の担当者に尋ねたところ,独立系保守業者が甲社製装置の構成部品を他の製造業者製の駐車場装置の構成部品として転用した事例がどの程度あるか,これまでに転用による事故が起きた例があるか否か,転用による具体的な危険性の程度などについては,いずれも調査を行っていないため不明であり,また,独立系保守業者に,文書や口頭で,他の製造業者製の駐車場装置に自社の部品を転用しないように注意するなどの措置を採ったことはなく,今後もそのような計画はないとのことであった。また,あなたが乙社の担当者にも尋ねたところ,担当者は「乙社は,独立系保守業者から甲社製装置の構成部品の取替えの依頼があった場合,できる限り迅速に対応したいと考えているが,乙社の顧客からの依頼があった場合にはこれを優先する。乙社の顧客に対する甲社製装置の修理に比べて,独立系保守業者の顧客に対する甲社製装置の修理は平均して2週間程度の遅れが生じることが見込まれる。」と回答した。

〔設問2〕

X社の担当者は,設問1に述べた計画に代えて,「独立系保守業者から甲社製装置の構成部品の発注を受けた場合,当該業者自身で構成部品の取替工事を行うことは認めるが,構成部品の引渡時期について条件を付したいと考えている。従来は甲社で余分の在庫を抱えて,独立系保守業者か乙社かを問わず,発注を受けた場合には直ちに当該構成部品を引き渡していたが,今後は,当社において一定の計画在庫数量を設定し,その数量の8割を基準数量とする。発注を受けた時点で,在庫数量が基準数量を下回っている場合,又は独立系保守業者への引渡しによって基準数量を下回る場合は,独立系保守業者から当該構成部品の発注を受けても,これを直ちに引き渡さず,甲社に構成部品の生産を発注し,その納入を待って構成部品を引き渡すこととしたい。その場合,甲社への生産発注から納入までは2か月程度が見込まれる。なお,引渡しによっても基準数量を確保できる場合には直ちに引渡しを行う。一方,乙社に対しては,いかなる場合であっても直ちに引渡しを行う。」と説明した。

あなたがX社の担当者に尋ねたところ,担当者は「従来の保管費用が過大になってきたため,保管費用を削減するために計画在庫数量を設定し,不必要な在庫を減らすこととした。計画在庫数量は,乙社の契約者数に,それらの契約者に2か月間に生じる構成部品の故障・トラブルの平均発生頻度を乗じて得られる数量とする。」と説明した。

出典:法務省「2007年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。