司法試験論文式過去問演習

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2006年 司法試験 論文式 民事系科目 第2問

問題

配点 200点

[民事系科目]

〔第2問〕(配点:200〔設問1から設問4までの配点の割合は,4:4.5:7:4.5〕)

次の文章を読んで,以下の1から4までの設問に答えよ。

Ⅰ 民事裁判実務修習中の司法修習生K(以下「K修習生」という。)は,配属先の裁判所で,XがYに対して提起した保証債務の履行を求める訴えの訴状等を検討して,以下の【メモ】を作成した。なお,X,Y,A,Bはいずれも株式会社である。後記は,その内容に関する担当裁判官J(以下「J裁判官」という。)とK修習生の会話である。

【メモ】

1. Xは,平成16年9月13日,Aに対し,3600万円を次の約束で貸し付けた(以下,この消費貸借契約に基づくXのAに対する貸金債権を「本件貸金債権」という。)。

弁 済 方 法 等
平成17年1月20日,同年5月20日,同年9月20日及び平成18年1月20日に各800万円並びに同年5月19日に400万円
利息  年 9%

遅 延 損 害 金  年14%

期限の利益喪失
Aが前記弁済を1回でも怠ったときは,Aは当然に期限の利益を喪失する。

2. Aは,平成15年10月6日,Bとの間で,AがBに対して3年間継続して機械部品を販売する旨の契約(以下「本件基本契約」という。)を締結し,Yは,同日,Aとの間で,本件基本契約に基づいてBがAから購入した機械部品の売買代金債務について,連帯保証する旨の契約書を作成した。

3. XとAとは,平成16年9月13日,本件貸金債権を担保するために,本件基本契約に基づく将来の売買契約によって発生する代金債権をAからXに譲渡する旨合意し,その旨の債権譲渡登記をした。上記債権譲渡の際,XがAに対して譲渡担保を実行する旨の通知をするまでは,Aに代金の受領権がある旨をも合意した。

4. Aは,Bに対し,本件基本契約に基づいて,平成17年6月14日に代金500万円で,同年7月15日に代金1200万円で,同年8月10日に代金1500万円で,同年9月5日に代金400万円で,それぞれ機械部品を売った。

5. Aが,上記1の平成17年9月20日にするべき弁済を怠ったため,Xは,Aに対し,同年10月8日,譲渡担保を実行する旨の通知をした。

6. Xは,Bに対し,同日,債権譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことについて,登記事項証明書を交付して通知をした上,上記4の売買代金の支払を求めたところ,Bは,これに応じなかった。

7. 平成17年11月下旬,Xは,Yに対し,Bの売買代金債務についての保証債務の履行を求めたが,Yは支払わなかった。

8. Xは,Yに対し,保証債務の履行を求めて本件訴訟に及んだ。

【J裁判官とK修習生の会話】

J裁判官: 訴訟物はXのYに対する保証債務履行請求権ですね。保証債務の履行請求をするための請求原因事実は,一般的には,(ア)主債務の発生原因事実,(イ)保証契約の締結とされているので,本件では,(ア)AとBが売買契約を締結したことと,(イ)YとAとが保証契約を締結したことになりますね。

AのYに対する保証債務履行請求権を,Xが取得して行使できることを基礎付けるための請求原因事実が何かを検討してみましょう。

K修習生: 債権譲渡担保の法的構成をどのように考えるかによって違いそうです。

J裁判官: それでは,あなたの考える法的構成を前提として,本件事案の契約について請求原因事実を考えましょう。

本件においてXA間で債権譲渡担保の契約を締結したとの事実はもちろん必要だとして,そのほかにも要件事実として必要か否かが問題となる事実が幾つかありますが,そのうち,例えば,

① 本件貸金債権の発生原因事実

② 債権譲渡登記をしたこと

③ 譲渡担保を実行する旨の通知をしたこと

④ 債権譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことについて,登記事項証明書を交付して通知をしたこと

が,それぞれXのYに対する本件請求の請求原因事実になるか否かについてはどう考えますか。

〔設問1〕 あなたがK修習生であるとして,あなたの考える本件債権譲渡担保の法的構成を簡潔に説明した上,J裁判官が示した前記①から④までの各事実がXのYに対する本件請求の請求原因事実として必要か否かについて論じなさい。なお,解答に当たっては,後記Ⅱ以下の事実は考慮しないこと。

Ⅱ1. 前記Ⅰの訴訟において,Xが前記Ⅰの【メモ】記載の事実を主張したのに対し,Yは,

(1) Xが主張した前記Ⅰの【メモ】記載の事実のうち,2,4及び7の事実は認め,その余の事実は知らない

(2) Aは,前記Ⅰの【メモ】4記載の各売買代金債権をZに二重に譲渡し,Bは,Zに対して,その債務を弁済した

と主張した。

これに対し,Xは,Yが主張する(2)の事実を否認した。

また,Xは,AからXへの債権譲渡に関する文書を証拠として提出した。Yは,AからZへの債権譲渡に関する文書及びBからZへの金銭支払を示すBの出金伝票を証拠として提出し,A及びBの各担当社員の証人尋問の申出をした。

裁判所は,X及びYが提出した上記各文書を取り調べ,A及びBの各担当社員を証人として尋問する旨の決定をして,争点整理が終了した。

その後実施されたA及びBの各担当社員に対する証人尋問において,両名は,AのBに対する債権がX及びZに二重に譲渡された旨を証言し,さらに,Bの担当社員は,BがZにその債務を弁済した旨をも証言した。

2. 上記証人尋問終了後,Xは,Zに対し,BのZに対する弁済が有効にされたことを前提とする不当利得の返還を求める訴えを提起した。これに対し,Zは,BのZに対する弁済の事実を否認し,Bから金銭の交付を受けたことはないと主張して争った。そこで,Xは,BのZに対する弁済の事実について統一的な判断を得たいとして,裁判所に対し,Yに対する訴訟とZに対する訴訟について,口頭弁論の併合を求めた。

3. K修習生は,XY間の訴訟及びXZ間の訴訟を担当するJ裁判官から,Xが提出した口頭弁論の併合を求める書面を渡されて,以下のような会話をした。

J裁判官: Kさん,Xは,Yに対する訴訟とZに対する訴訟の口頭弁論を併合すれば,両方の訴訟で,Bの弁済の事実について統一的な判断が得られるとしていますが,その理由は分かりますか。

K修習生: 口頭弁論の併合により,事実上,訴訟進行も一様となり,共同訴訟人間でも,いわゆる証拠共通の原則が認められているので,判断の統一をかなり期待することができるとされているからです。

J裁判官: そうですね。ところで,民事訴訟法第39条が定めている,いわゆる共同訴訟人独立の原則は,どのような考え方を基礎にしているものか分かりますか。

良い機会なので,①共同訴訟人独立の原則と共同訴訟人間の証拠共通の原則が,それぞれどのような考え方に基づくものか整理して報告してください。その上で,②仮にXのYに対する訴訟とZに対する訴訟とを併合して審理したとして,共同訴訟人間の証拠共通の原則が働くとの見解を採った場合に,どのような問題点があるか,また,その問題点についてどのように考えるべきかを検討して報告してください。

〔設問2〕 あなたがK修習生であるとして,J裁判官の前記①②の質問に対してどのような報告をすべきかを述べなさい。なお,解答に当たっては,後記Ⅲ以下の事実は考慮しないこと。

Ⅲ J裁判官は,前記ⅡのXY間の訴訟とXZ間の訴訟の口頭弁論を併合し,証拠調べを終え,平成18年5月12日,口頭弁論を終結した。弁論終結後のある日,K修習生は,J裁判官との間で以下のような会話をした。

J裁判官: 先日,本件証拠調べの結果,認定し得る事実の内容をレポートにして提出してもらいましたが,なかなか頑張りましたね。一通り見せてもらい,適宜修正してみました。私としては「認定事実の概要」のとおりの事実が認定できると考えています。

K修習生: 証拠から事実を認定するのもなかなか難しいですね。

J裁判官: そこで,次に,この事実が証拠上認められる事実であるとして,証明責任の所在は考慮しないで,実体法的観点から検討してみてくれませんか。

【認定事実の概要】

1. Xはいわゆる総合商社である株式会社,Aは機械部品の製造販売を目的とする株式会社,Yは大型機械の製造販売を行う株式会社,Bも同種の中型・小型機械の製造販売を行う株式会社で,YはBの親会社である。もともとAとYとは,Aが製造販売する機械部品をYに販売するという取引関係があった。

2. Aは,Yからの紹介を受け,Bとの間でもAが製造する機械部品を売買することになった。しかし,AにとってBは初めての取引先であり,いまだ信用が不十分であったこともあり,親会社であるYがBの売買代金債務を連帯保証することとされた。

そこで,Aは,平成15年10月6日,Bとの間で,継続的に機械部品を売買する契約を締結した。契約期間は3年間とし,機械部品はBからの発注後1週間以内に納品し,代金は納品の3か月後に支払うものとされた。AとBのそれぞれの代表取締役が同日に上記内容の基本契約書に署名押印した。その際,上記基本契約に基づく売買契約によって生ずるBのAに対する売買代金債務について,Yがこれを連帯保証するとの合意がされ,Yの代表取締役が上記基本取引契約書の連帯保証人欄に署名押印した。

AとBとの間の機械部品の取引は,以後概ね一月に1回行われたが,取引額は300万円から2000万円くらいまで様々であった。Aは,契約どおり,Bからの発注後1週間で注文された機械部品を納品し,Bも納品の3か月後には約定どおりAに代金を支払ってきた。

3. Xは,Aから運営資金の融通を依頼され,前記Ⅰ【メモ】1記載のとおり,Aに対し,平成16年9月13日,3600万円を,利息年9%,遅延損害金年14%とし,5回の分割返済(1回目から4回目までは各800万円,5回目は400万円,1回目は平成17年1月20日,2回目は同年5月20日,3回目は同年9月20日,4回目は平成18年1月20日,5回目は同年5月19日,利息は各分割金の支払期日にそれまでの利息を支払うものとし,Aが分割金の弁済を1回でも怠ったときは,当然に期限の利益を喪失するものとする。)の約定で,貸し付けた。

そして,Aは,Xとの間で,前記Ⅰ【メモ】3記載のとおり,平成16年9月13日,上記借入金債務を担保するため,上記A・B間の機械部品の継続的売買契約の契約期間中これに基づく売買契約によって将来生ずべきAのBに対する売買代金債権をXに譲渡する旨の契約を締結し,A及びXはその旨の債権譲渡登記をした。なお,本件譲渡担保契約では,XがAに対して譲渡担保を実行する旨の通知をするまでは,Aに代金の受領権がある旨の合意がされた。

Aは,Xに対し,平成17年1月20日と同年5月20日にはそれぞれ元金800万円を支払うとともに,それまでの利息も支払った。

4. Aは,上記2の契約に基づいて,さらに合計4回にわたって,Bに対し,機械部品を代金合計3600万円で売った。前記Ⅰ【メモ】4記載のとおり,第1回は平成17年6月14日に代金500万円(同月21日に機械部品引渡し),第2回は同年7月15日に代金1200万円(同月22日機械部品引渡し),第3回は同年8月10日に代金1500万円(同月17日機械部品引渡し),第4回は同年9月5日に代金400万円(同月12日機械部品引渡し)であった。

5. Aは,平成17年に入ったころから業績が思わしくなくなっていたが,上記のとおり同年5月20日にXに元利金を支払ったものの,そのころから資金繰りが苦しくなり,Bに対して機械部品を売却するたびに,生じた代金債権をすべて金融業を営むZに売り,代金を得て事業資金に充てざるを得なくなった。

すなわち,同年6月14日付売買契約に基づく代金債権500万円については,同年7月8日代金450万円で,同年7月15日付売買契約に基づく代金債権1200万円については,同年8月1日代金1000万円で,同年8月10日付売買契約に基づく代金債権1500万円は,同月20日代金1200万円で,同年9月5日付売買契約に基づく代金債権400万円は,同月12日に代金200万円で,それぞれZに売却した。そして,Aは,Bに到達した各内容証明郵便(順に同年7月11日,同年8月3日,同年8月22日,同年9月14日到達)で各債権譲渡の通知をした。

6. Bは,上記合計3600万円の売買代金債務のうち,第1回売買分500万円については,平成17年9月21日,Zに弁済した。また,第4回売買分400万円については,AからZへの債権譲渡の内容証明郵便の送付を受けた後,同年9月22日,Zから受けた電話に対し,特に何も考えないで特に何の留保もせずその譲渡を承諾した。

7. Xは,Aが平成17年9月20日に支払うべき借入金の分割金800万円を支払わなかったことから,Aに対し,数回にわたりその支払を催告したものの,Aの担当者からもう少し待ってほしいとの言い訳しか得られなかったため,同年10月8日到達の書面で,Aに対し,譲渡担保を実行する旨の通知をするとともに,併せて,同日,Bに対し,AのBに対する4回分の売買代金債権すべてについて,債権譲渡及びその譲渡につき債権譲渡登記がされたことを債権譲渡登記の登記事項証明書を交付して通知した(前記Ⅰ【メモ】5及び6記載のとおり)。

8. ところで,第4回売買(代金400万円)については,BはAから目的物である機械部品すべての引渡しを受けたものの,売買目的物に直ちに発見することができない瑕疵があり,しかも,その瑕疵は,商品としての価値自体を失わせるような重大なものであった。Bは,第4回の売買の商品の納入後1か月程経って,この瑕疵に気付き,平成17年10月19日,Aに対して第4回の売買契約を解除するとの意思表示をした。

〔設問3〕 あなたがK修習生であるとして,①XA間の法律関係を検討し,②Xは,Y及びZに対し,それぞれどのような請求をすることができるかについて,それぞれ金額を明示して論じなさい。なお,利息及び遅延損害金(遅延利息)の問題は省略してよい。

Ⅳ 以下の問題を検討するに当たっては,前記Ⅱ及びⅢの事実,並びに設問2及び設問3の各設問に対するあなたの検討結果は一切考慮せず,XがYに対して前記Ⅰの訴えを提起した時点にさかのぼった上で,以下の記述を読み進めなさい。

1. Xは,Yに対して3600万円の保証債務の履行を求める訴えを提起した後,Bに対しても売買代金合計3600万円の支払を求める訴えを提起した。なお,XB間の訴訟の口頭弁論は,XY間の訴訟の口頭弁論とは併合されなかった。

2. Yは,上記保証債務履行請求訴訟の訴状及び呼出状の送達を受けたが,この件は主債務者であるBが適切に処理してくれるものと信じて,答弁書を提出せず,また,口頭弁論期日にも出頭しなかった。その結果,この訴訟の口頭弁論は平成17年12月20日にY欠席のまま終結し,平成18年1月10日,Y敗訴の判決書がYに送達され,2週間後にこの判決が確定した。Yはその後,Xやその代理人からは何らの通知や連絡も受けていない。

3. 平成18年5月中旬,Yは,Bから連絡を受けて,上記1のXB間の売買代金請求訴訟の口頭弁論が同年3月下旬に終結し,X敗訴の判決が同年5月10日に確定したことを知った。

4. XB間の訴訟の判決理由によれば,裁判所は,売買代金債権合計3600万円のうち,(1)第1回分の500万円については,Bが平成17年9月21日に当該債権の二重譲受人であるZに弁済したこと,(2)第4回分の400万円については,Bが同年10月19日に商品の瑕疵を理由に売買契約を解除したこと,(3)第2回分の1200万円及び第3回分の1500万円については,Bが平成18年2月10日に商品の瑕疵を理由にそれぞれ各売買契約を解除したことを根拠として,Xの請求をすべて棄却していた。

5. L弁護士は,Yから,XB間の訴訟でBが勝訴したことを理由に,Xからの強制執行を免れる方法はないかと相談を受けた。L弁護士の事務所で実務修習中の司法修習生M(以下「M修習生」という。)は,この相談に立ち会った後,L弁護士と以下のような会話をした。

L弁護士: Mさん,さっき相談があった件で,Xからの強制執行を免れるためにはどのような手続を採ればよいですかね。

M修習生: Xに対して請求異議の訴えを提起する方法が考えられます。ただ,本件では異議の理由が立たないような気がします。

L弁護士: そんなに簡単にあきらめないで,いろいろな考え方があるのだから,本件で強制執行を免れることができるとする結論を導くための理由として,どのような考え方を根拠とする主張が有り得るかについて検討してみてください。

それから,請求異議訴訟でそのような主張をしたとき,Xはどのような考え方に基づいて反論をしてくるかを予想し,これに対する再反論ができるかどうかを検討して報告してください。

〔設問4〕 あなたがM修習生であるとして,L弁護士が指示した前記事項について,検討の結果を述べなさい。ただし,XY間及びXB間の各判決の適否や妥当性については,検討の対象としないこと。

出典:法務省「2006年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。