司法試験論文式過去問演習

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2006年 司法試験 論文式 国際関係法(公法系) 第1問

問題

配点 50点

[国際関係法(公法系)]

〔第1問〕(配点:50)

A国法に基づいて設立されA国に本社を持つY会社(以下「Y社」という。)は,途上国であるB国に同国法に基づいて100パーセント子会社Y1を設立して,Y1で人工甘味料αの生産を1980年から行い,多額の収益を上げてきた。A国法に基づいて設立されA国に本社を持つ企業の中でB国に相当多額の資本を投下してB国で事業活動を行っていたのはY1のみであった。

1996年5月にA国とB国は投資保護協定の交渉を終えて共に署名をした。その中には,以下の事案に関係する第10条が入っていた(それ以外には直接的に関係する規定はなかった。)。

第10条 いずれの締約国も,(a)公共のためであり,(b)差別的なものではなく,かつ,(c)迅速,十分かつ実効的な補償の支払を伴ってとられるものである場合を除くほか,自国の領域内にある他方の締約国の投資家の投資財産について,収用又は国有化を実施してはならない。

1997年春ごろから,B国において人工甘味料αの発がん性がにわかに問題となり,同年8月1日には,B国議会は,同年9月1日以降,B国内においてαの製造及び販売を禁止するという法律を制定した。Y1は,B国においてαをほぼ独占的に製造し,販売していた。

αの製造及び販売禁止の結果,Y1は操業中止に追い込まれて,1998年1月には経営が破綻し,B国内で会社の清算手続が始まった。

人工甘味料αの製造及び販売が禁止された1997年9月の時点では,A,B両国間の上記の投資保護条約は,A国では議会の承認を得て締結のための国内手続を完了し,A国政府はその旨をB国政府に通報していた。他方,B国でも,この投資保護条約の締結のための国内手続を完了するためにはB国議会の承認が必要であったが,B国政府は承認のために議会に付議はしたが,2001年1月までに議会の承認は得られていなかった。

このような状況下で,Y社はB国裁判所に,αの製造及び販売を禁止した法律の制定によって損害又は損失を被ったとして,B国に対して損害賠償又は損失補償を請求して出訴し,最高裁判所まで争ったが,2000年1月に最高裁判所は最終的にY社の請求を退けた。

最高裁判所の判決を受けて,Y社はB国から何らかの条約上又は国際慣習法上の救済を得るべく,A国外務省に働きかけを行った。Y社がB国から救済を得られるようにするためには,A国外務省は,外交交渉を通じてどのような法的主張をB国に対して行えばよいかを論述しなさい。なお,A,B両国は,条約法に関するウィーン条約の当事国である。

出典:法務省「2006年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。