2006年 司法試験 論文式 経済法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
A県における生コンクリート(以下「生コン」という。)の製造業者は,大手事業者10社(以下「10社」という。)と小規模事業者40社(以下「40社」という。)からなる。A県において販売される生コンの総販売数量のうち,10社が占める割合は約60%,40社が占める割合は約40%であり,10社及び40社でほぼ100%を占めている。なお,生コンは,一般に,その性質上長距離輸送が難しいので,県内で消費される生コンのほとんどは同一県内で製造されている。
A県生コンクリート事業者協議会(以下「生コン協議会」という。)は,A県に所在する生コンの製造業者が,会員相互の親睦及び業界の健全な発展を目的として設立した社団法人であり,その会員は10社及び40社である。生コン協議会には幹事会が置かれ,10社が幹事会の構成員である。
10社は,業界の当面する課題について意見交換を行ってきたが,生コンの販売価格の引上げ問題及び廃業する会員の生産設備の買取り問題について,緊急に対処する必要がある旨の認識を共有するに至った。販売価格の引上げ問題とは,最近,生コンの需要者である建設業者からの価格引下げ圧力が強くなり,生コンの販売価格が下がり,経営が苦しくなった会員が増えていることに対処するため,共同して価格を引き上げようとするものである。会員の生産設備の買取り問題とは,隣接するB県で営業を行っている複数の生コン事業者が,後継者がいないことや経営破綻状態にあることなどから廃業しようとするA県の事業者の生産設備を買い取ってA県に参入しようとすることに対処しようとするものである。すなわち,これらB県の生コン事業者は,B県において低価格で販売することにより競争事業者の顧客を奪う行動に出ており,これらの事業者がA県に参入すればA県においても同様の行動に出ることが懸念されることから,生コン協議会側で先んじて生産設備を買い取ることによりこのような事態の発生を回避しようとするものである。
10社は,平成18年3月1日,会合を持ち,下記<決定1>の内容の合意をした。10社は,<決定1>の1に基づいて,同年3月6日から価格の引上げを実施し,<決定1>の2については,10社のうち1社が,3月中に1名の会員の生産設備を自社の費用で買い取った。
<決定1>
1. 1立方メートル当たりの現地引渡し価格を従来の相場である6000円前後から6250円に引き上げ,工場渡し価格を6050円とすること。(注)
2. 廃業しようとする会員については,10社のうちで生産設備に最も近い場所に所在する1社がその生産設備を買い取ること。
(注) 現地引渡し価格とは,工事現場において生コンを引き渡す場合の価格であり,工場渡し価格とは,生コン製造工場において生コンを引き渡す場合の価格である。
10社が価格を引き上げたことを知った生コン協議会の会員は,ほとんどが10社の価格引上げに追随して価格を引き上げたが,数社は従来の価格で販売し続けた。さらに,10社は,自社の費用で生産設備を買い取っていくのは負担が大きすぎることから,同年4月30日に開催された生コン協議会の幹事会において,生コン協議会の通常総会に下記<決定2>の内容の決議を行うよう提案することを決めた。
これを受けて,同年5月8日に全会員が出席して開催された生コン協議会の通常総会において,10社が提案した<決定2>を内容とする決議案が全会一致で可決された。
その後,10社が会員の販売価格の実態を調査したところ,遅くとも5月15日以降には,すべての会員が<決定2>の1に記載された金額に価格引上げを行っていることが判明した。さらに生コン協議会は,5月中に<決定2>の2に従って2社の生産設備を買い取って当該生産設備を廃棄した。
<決定2>
1. 5月15日以降,1立方メートル当たりの現地引渡し価格を6250円とし,工場渡し価格を6050円とすること。
2.生コン協議会は,廃業しようとする会員から生産設備の買取りを行うこと。買取り資金は,生コン協議会の積立基金から支出し,買い取った設備は直ちに廃棄すること。
〔設 問〕
1. <決定1>に関する行為について,だれに対して,いかなる独占禁止法違反を問うことができるか。その法的根拠も示しなさい。
2. <決定2>に関する行為について,だれに対して,いかなる独占禁止法違反を問うことができるか。その法的根拠も示しなさい。
出典:法務省「2006年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。