2006年 司法試験 論文式 経済法 第1問
問題
配点 50点[経 済 法]
〔第1問〕(配点:50)
化学製品の製造業者であるA社は,化学製品の甲製品において市場占拠率(シェア)50%を有している。甲製品の製造業者には,A社のほか,シェア15%のB社,シェア10%のC社など数社ある。甲製品の中で輸入品の占める割合は10%程度であり,輸送費が比較的高いため,当面,輸入が大幅に増える見込みはない。国内製造に係る甲製品は,製造業者各社から20社の卸売業者を通じて需要者に販売されている。A社は,これらの卸売業者のうち15社との間で,甲製品の継続的販売に関する取引基本契約を締結し,この15社にのみ甲製品を販売している。なお,甲製品の用途は限定されており,また,他の製品での代替は困難であるとされている。
ところで,A社は,適正な価格で販売されることが製品の安定的な供給につながるとの観点から,取引先の卸売業者に,A社から卸売業者への販売価格(以下「仕切価格」という。)に8%を加えた価格で需要者に販売させるとの営業方針を立てた。
(ア) A社は,上記営業方針に基づき,取引基本契約を締結している卸売業者15社に対し,仕切価格に8%を加えた価格で需要者に販売してもらいたい旨の希望を表明した。これに対して,15社のうち10社は,A社の営業方針に理解を示し,仕切価格に8%を加えた価格で需要者に販売していたが,残りの5社(以下「5社」という。)は,A社の希望に応じず,仕切価格に4%を加えた価格で甲製品を需要者に販売していた。A社は,5社に対しては,当面,様子を見ることとした。
(イ) その後,A社は,近い将来,甲製品の供給がやや過剰気味となるとの予測を得たこと等から,取引先の卸売業者に対し,上記営業方針を徹底する必要性が高くなったと考え,当面様子を見ることとしていた5社に対する対応を改め,5社に対し,再三,仕切価格に8%を加えた価格で需要者に販売するよう強く求めた。しかし,5社はこれに応じなかったので,A社は,5社に対し,下記の取引基本契約第6条第3号に基づき,同契約を解除して甲製品の供給をやめる旨通告し,5社に対し甲製品の供給を停止した。
取引基本契約第6条
甲(A社)は,乙(卸売業者)に,以下の各号に該当する事実があるときは,本契約を解除することができる。
1 乙が,本契約上の義務に違反したとき。
2 乙が,手形小切手の取引停止処分を受けたとき,破産,民事再生,会社更生の手続開始の申立てをし又は申立てを受けたとき。
3 乙が,このほか,甲との信頼関係を著しく損なう行為を行ったとき。
〔設 問〕
1.(1) 上記(ア)に係るA社の行為には,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)上,どのような問題があるか。
(2) 上記(ア)に係る行為に加えて,上記(イ)の行為が行われた場合にはどうか。
2. A社から甲製品の供給の停止を受けた5社のうちの1社であるX社としては,どのような民事裁判手続をとることができるか。請求の趣旨及び請求の原因となる事実についても述べること。
出典:法務省「2006年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。