第1問配点 4点
アからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[№1]から[№5])
ア. 甲は、路上でAの頭部を鉄パイプで複数回殴打し、これにより直ちに治療しなければ数時間後には死亡するほどの脳出血を伴う傷害をAに負わせ、倒れたまま動けないAを残して立ち去った。そこへ偶然通り掛かった事情を知らない乙が、Aの頭部を1回蹴り付け、Aは、上記傷害が悪化し、幾分か死期が早まって同傷害により死亡した。この場合、甲がAの頭部を上記鉄パイプで複数回殴打した行為とAの死亡との間には、因果関係が認められない。[№1]
イ. 甲は、Aの頸部に割れたビール瓶を突き刺し、Aに致命傷になり得る重篤な頸部の血管損傷の傷害を負わせた。Aは、直ちに病院で適切な治療を受け、一旦容体が安定したが、その後、医師の指示に従わず安静に努めなかったため、治療の効果が上がらず、上記傷害の悪化による脳機能障害により死亡した。この場合、甲がAの頸部を上記ビール瓶で突き刺した行為とAの死亡との間には、因果関係が認められる。[№2]
ウ. 甲は、自動車を運転中、過失により通行人Aに同車を衝突させ、Aを同車の屋根に跳ね上げてその意識を喪失させたが、Aを同車の屋根の上に乗せていることに気付かないまま、同車の運転を続けたところ、Aに気付いた同乗者乙が走行中の同車の屋根の上からAを引きずり降ろして路上に転落させた。Aは、頭部打撲に基づく脳くも膜下出血の傷害により死亡したが、同傷害が上記自動車との衝突の際に生じたものか、路上に転落した際に生じたものかを確定することは困難であった。この場合、甲がAに上記自動車を衝突させた行為とAの死亡との間には因果関係が認められない。[№3]
エ. 甲は、路上でAの顔面を蹴り付け、Aの左眼にそれだけでは致命的といえない傷害を負わせたところ、Aは、持病によって脳に高度の病的変化が生じていたため、同暴行により脳の組織が一定程度崩壊して死亡した。もっとも、甲は、行為当時、Aの持病の存在を知らず、予測することもできなかった。この場合、甲がAの顔面を蹴り付けた行為とAの死亡との間には因果関係が認められない。[№4]
オ. 甲ら6名は、マンションの居室内で、Aに対し、約3時間にわたり間断なく顔面、腹部等を手拳で多数回殴打した。Aは、隙を見て同マンション外に逃走したが、甲らに対し極度の恐怖感を抱き、逃走を開始してから約10分後、甲らによる追跡から逃れるため、同マンション付近にある高速道路にとっさに進入したところ、本線上を走行してきた乙運転の自動車にれき過されて死亡した。この場合、甲らがAを多数回殴打した行為とAの死亡との間には因果関係が認められる。[№5]