第12問配点 3点
基本的な哲学用語とそれに対する説明のうち,下線部の記述に誤りがあるものを,次の1から5までの中から選びなさい。(解答欄は,[№12])
1. 形相:アリストテレスは,個々の事物は,その素材である質料によってのみ成り立つのではなく,それを特定のものたらしめる本質である形相が必要だとした。この形相は,プラトンの唱えるイデアに比することができるものであるが,プラトンが個物を超えたところでその本質であるイデアを考えるのに対し,アリストテレスはあくまでも個物に内在する本質として形相を捉える。
2. 快楽主義:ヘレニズム時代の哲学者エピクロスは,快楽が最高の善であり,苦痛よりも快楽を求めることが人間の本性であると唱えた。しかし,この快楽主義の立場においては,絶えず生じてくる快楽に盲従することをよしとするのではなく,思慮による冷静な考量が求められており,たとえば,より大きな快楽を得るためにある程度の苦痛を引き受けることなども正当化される。
3. 自由意志:ルネサンスの人文主義者エラスムスは,もし人間に「自由意志」が認められないとしたら,人間の善行やその功績が無意味なものになってしまうとして,自由意志の存在を肯定した。他方,プロテスタントの神学者ルターも,神の似像として造られた人間のうちには予め自由意志が刻印されているのだとする予定説の立場から,同じく人間の自由意志の存在を肯定した。
4. イドラ:ベーコンは,ラテン語で「偶像」を意味するこの言葉を,人間が物事を正しく認識するのを誤らせる偏見や先入観の意味で用い,それを①種族のイドラ,②洞窟のイドラ,③市場のイドラ,④劇場のイドラの4つに分類した。ベーコンは,観察や実験によって得られた事例を基にして一般的命題を導く帰納法こそ知識の拡大に寄与するとしたが,その前提として,あらかじめこれらのイドラを自覚し,除去することが必要だと考えた。
5. 認識のコペルニクス的転回:カントは,「認識が対象に従わなければならない」とする伝統的な捉え方に対して,「対象の方が認識に従わなければならない」とする認識把握の転換を行った。認識は,確かに対象から与えられる感覚的印象からはじまるが,それがアプリオリに存在する悟性の規則によって構成されることで,その対象の像が形成されるのであり,この意味で,認識される対象は認識する主観によって規定され,可能となるのである。