第10問配点 3点
近代以降,数学的方法を模範にしながら,人間精神の働きを解明することに関心が高まっていった。その際,「推論の能力」を意味する「理性」概念が重要視されるようになった。理性に関する記述として誤っているものを,次の1から5までの中から選びなさい。(解答欄は,[№10])
1. 「実践理性」カントは,実践理性を,端的に「~せよ」と,義務の形で自己の内面に呼び掛けてくる能力と捉える。例えばイエスの説く「隣人愛」は,好きだという感情からではなく,人として愛せという義務の命令から生まれるとされる。
2. 「対話的理性」ハーバーマスは,平等な社会では,自由に討論できるコミュニケーションの状況を想定できるとした。その状況において人間は,対話によって合意に導く対話的理性を働かせて,全ての人が受け入れ可能な共通の社会ルールを内発的に討議しなければならないとされる。
3. 「良識」デカルトは,理性を良識の意味で捉える。この良識は全ての人に与えられているのではなく,様々な経験を通して獲得されるものだと説く。しかし,デカルトによると,良識を獲得した人間はそのことに満足してしまい,良識を正しく使用していないという。
4. 「幾何学的精神」パスカルは,人間の精神には,理性を使って物事を分析し,論理的・客観的に思考する幾何学的精神があるとする一方で,心の働きや神の愛のような目に見えないものを直観的に捉えようとする繊細の精神もあると説いた。
5. 「理性の狡智」ヘーゲルは,人間の意図を超えて自己を実現する世界精神の企みを理性の狡智と名付ける。歴史上の英雄は,自らの関心から行動するが,その役割を終えると,世界史の舞台から去る。しかし,こうした人物を利用しながら,世界精神はその目的である自由を実現するとされる。