第18問配点 3点
権利概念と最適な経済活動の両立は,公害を想起すれば分かるように,必ずしも容易なことではない。経済主体として甲と乙がいて,甲の経済活動が乙の生活の質を間接的に悪化させているとする。また,その経済活動の水準が高いほど,甲はより大きな便益を受け,乙はより大きな損害を被るとする。経済学の余剰分析では,甲の経済活動の水準について,その経済活動がもたらす社会的純便益が最大となるときの水準を効率的と定義する。すなわち,甲の経済活動によって甲が享受する便益Xと,乙が被る損害Yとを通算し,社会的純便益 X-Y が最大となる経済活動水準が効率的となる。ただし,その効率的水準を実現したところで,乙の権利が依然侵害されたままのこともあれば,甲の経済活動の自由が制限されていることもあり得る。これらの権利と経済活動の効率的水準との関係を,主に経済学的観点から論じたのが「コースの定理」である。これに関する記述として誤っているものを,次の1から5までの中から選びなさい。(解答欄は,[№18])
1. 経済活動水準を自由に決定する権利が全面的に甲にあったとしても,甲と乙との間で補償について交渉がなされれば,交渉の結果として効率的な経済活動水準が実現する。
2. 補償を受ける主体が複数いて,交渉結果に「ただ乗り」することが可能な場合には,適切な補償をすることができず,経済活動の水準は効率的にならない。
3. 甲と乙との間で補償について交渉がなされる前提として,甲の経済活動を制限する権利が乙にあれば,交渉後の経済活動水準は効率的となる。
4. 甲と乙との間の交渉の費用が小さく,XやYについての情報が双方に明らかであると,交渉は妥結せず,経済活動の水準は効率的にならない。
5. 経済活動を制限する権利が認められた場合に資産効果が発生するのであれば,交渉後の経済活動水準はその権利が認められるかどうかによって異なる。