第34問配点 3点
最高裁判所昭和60年12月17日第三小法廷判決(伊達火力発電所訴訟判決)の次の判示に関するアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからエの順に[№79]から[№82])
「行政処分の取消訴訟は,その取消判決の効力によつて処分の法的効果を遡及的に失わしめ,処分の法的効果として個人に生じている権利利益の侵害状態を解消させ,右権利利益の回復を図ることをその目的とするものであり,行政事件訴訟法9条が処分の取消しを求めるについての法律上の利益といつているのも,このような権利利益の回復を指すものである。したがつて,処分の法的効果として自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に限つて,行政処分の取消訴訟の原告適格を有するものというべきであるが,処分の法律上の影響を受ける権利利益は,処分がその本来的効果として制限を加える権利利益に限られるものではなく,行政法規が個人の権利利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている権利利益もこれに当たり,右の制約に違反して処分が行われ行政法規による権利利益の保護を無視されたとする者も,当該処分の取消しを訴求することができると解すべきである。」
ア. この判示は,行政処分の取消訴訟に関し,処分の本来的効果として権利利益を制限される者にのみ原告適格を認め,それ以外の者には原告適格を認めないという立場をとるものである。[№79]
イ. この判示によれば,行政庁がある事業者の一定の行為について許可処分をした場合において,当該行為がされることにより不利益を受ける第三者が存在するとしても,事業者が当該行為を必ず行うとは限らないから,その第三者は,許可処分により自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者には当たらず,許可処分の取消訴訟の原告適格は認められない。[№80]
ウ. この判示は,法律の規定に基づく処分の効果として権利利益を制限される者はもちろん,法律の規定に基づかない処分により,その効果として重大な権利利益を制限される者にも,当該処分の取消訴訟の原告適格を肯定するという立場をとるものである。[№81]
エ. この判示からは,行政庁の許可に基づく事業者の行為によって第三者が不利益を受け,それが処分の法的効果としての権利利益の侵害に当たると解される場合に,その第三者は当該事業者に対してその行為の差止めを訴求することができることから許可処分の取消しを求める法律上の利益を有しないとの結論は導かれない。[№82]