条文・判例・学説を体系的に整理
フランス人権宣言と立憲主義
1789年のフランス人権宣言は「権利の保障が確保されず権力の分立が定められていないすべての社会は憲法をもたない」と規定し、近代立憲主義の立場を宣明するとともに所有は神聖不可侵の権利とした。
アメリカ合衆国の違憲審査制
アメリカ合衆国では、憲法に明示的な定めはなかったが合衆国最高裁判所の判例によって司法審査制度が確立し、同裁判所は、大恐慌後のニュー・ディール期には契約の自由などの経済的自由を重視して経済・労働規制立法を違憲とし政治部門と対立したが、今日では表現の自由(表現内容に基づく規制)について厳格な審査を行っている。
ドイツの憲法裁判所制度
ドイツでは、第一次世界大戦後に社会国家の理念(社会権)を体現する規定を有するワイマール憲法が成立したが、その後ナチスの台頭を許し、数々の人権侵害が行われ、第二次世界大戦後の1949年のドイツ連邦共和国基本法により連邦憲法裁判所が設置され、抽象的規範統制を伴う憲法保障が確立している。
イギリスの不文憲法と議会主権
イギリスは、議会主権・不文憲法(単一の成文憲法典を有さない)の国であり、議会の制定した法律を裁判所が違憲無効とすることは行われておらず、王位継承法(1701年)のような議会制定法が憲法的重要性を有するものとされている。
国際人権保障と欧州人権条約
国際的な人権保障については世界人権宣言の採択に続いて国際人権規約が発効し、その後も難民条約や女子差別撤廃条約等の個別の重要な人権条約について我が国も締約国となり、地域的な人権条約の中でも欧州人権条約については欧州人権裁判所が裁判的保障の役割を担っている。
国民主権の意義
憲法前文は「主権が国民に存することを宣言し」、1条は天皇の地位が「主権の存する日本国民の総意に基く」と定め、国民主権を宣言しており、判例は、国民主権の原理に基づき、国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであるとする。
平成17年1月26日最高裁大法廷民集59巻1号128頁(管理職選考受験資格確認等請求事件)
天皇に対する民事裁判権の否定
最高裁は、天皇が日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることに鑑み、天皇には民事裁判権が及ばないとした。
平成元年11月20日最高裁第二小法廷民集43巻10号1160頁(住民訴訟による損害賠償)
国家の自衛権と個人の正当防衛
個人の正当防衛の権利とは異なり、国家が固有の権利として自衛権を有するということはできないとする見解があり、これは自衛のための実力保持を認める見解に対する批判となりうる。
9条1項と自衛戦争
憲法9条1項は侵略戦争を放棄しているが自衛戦争は放棄しておらず、同条2項にいう「前項の目的」とは第1項の「国際紛争を解決する手段として」の戦争の放棄のみを指すとする解釈によれば、自衛のための戦力の保持は禁じられていないこととなる。
限定放棄説と戦力の区別困難
自衛のための戦力と侵略のための戦力とを区別することは困難であり、戦力の保持を禁じた9条2項の規定が無意味なものとなるとの指摘は、「前項の目的」を侵略戦争放棄の目的に限定し、自衛のための戦力の保持は禁じられていないとする見解に対する批判となる。
自衛権と9条
憲法9条は我が国が主権国として有する固有の自衛権まで否定するものではなく、自衛のために必要な最小限度の実力すなわち自衛力の保持を禁じていない。
昭和34年12月16日最高裁大法廷刑集13巻13号3225頁(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反)
憲法9条2項の前項の目的の解釈
9条2項にいう「前項の目的」を、1項全体の精神、すなわち「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」を指すと解し、2項によって警察力を上回る実力の保持が禁じられているとする見解がある。
戦力不保持と軍隊規定の不存在
日本国憲法には、66条2項の文民条項を除き、戦争開始の決定手続や軍隊の編制に関する規定が存在しないとの指摘は、9条2項により警察力を上回る実力の保持が禁じられているとする見解に対する批判とはならず、むしろその見解を補強する事情である。
条約と憲法の優劣
憲法98条1項は憲法が国の最高法規であることを規定し、同条2項は日本国が締結した条約及び確立された国際法規の誠実な遵守を規定しており、憲法と条約の優劣関係については、政府見解(条件付き憲法優位説)は憲法が条約に優位するとし、判例も条約の憲法適合性を問題とするから憲法優位説を前提としているとされる。
法の下の平等と相続分差別
憲法14条1項は法の下の平等を保障しており、嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条4号ただし書前段(平成25年改正前)は、遅くとも平成13年7月当時において同項に違反していたとされた(最大決平25.9.4)。
平成25年9月4日最高裁大法廷民集67巻6号1320頁(遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件)
昭和女子大事件と私立大学の規律権
私立大学はその設置目的を達成するために必要な事項を規定する権能を有するから、その伝統・校風や教育方針に鑑み学生の政治的活動につきかなり広範な規律を及ぼすことも、直ちに不合理な制限には当たらない。
昭和49年7月19日最高裁第三小法廷民集28巻5号790頁(身分確認請求)
憲法17条による裁量逸脱の免責立法無効
憲法17条は、公務員の不法行為による国又は公共団体の損害賠償責任を免除又は制限する法律が立法府の裁量を逸脱するときは、これを違憲無効とする効力を持つ。
平成14年9月11日最高裁大法廷民集56巻7号1439頁(損害賠償請求事件)
候補者届出政党の政見放送
衆議院の小選挙区選挙について、候補者届出政党にのみ政見放送を認め候補者を含むそれ以外の者には政見放送を認めないものとする公職選挙法の規定は、選挙運動をする上で候補者間に単なる程度の違いを超える差異を設ける結果となるが、国会に与えられた合理的裁量の限界を超えるものではなく、憲法14条1項に違反しない。
平成11年11月10日最高裁大法廷民集53巻8号1704頁(選挙無効請求事件)
憲法の私人間効力
憲法の人権規定(自由権的基本権)は、もっぱら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定しておらず、私人間における自由・平等の侵害は、私的自治に対する一般的制限規定である民法1条・90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって調整される(いわゆる間接適用の考え方)。
被拘禁者の人権制限
多数の被拘禁者を外部から隔離して収容する施設においては、施設内の規律及び秩序を維持し正常な状態を保持する必要があるから、未決拘禁者についても身体の自由やその他の行為の自由に一定の制限が加えられることはやむを得ない。
昭和45年9月16日最高裁大法廷民集24巻10号1410頁(国家賠償請求)