条文・判例・学説を体系的に整理
形式的意味の憲法と実質的意味の憲法
形式的意味の憲法とは憲法という名称を与えられた成文の法典すなわち憲法典を指し、これに対して実質的意味の憲法とはその存在形式のいかんを問わず内容的に憲法と観念されるもののことをいう。
硬性憲法と軟性憲法
硬性憲法とは通常の法律より加重された手続によらなければ改正できない憲法をいい、改正手続に加重要件を設けるドイツ連邦共和国基本法は、改正回数が多くても硬性憲法に分類される。
固有の意味の憲法
固有の意味の憲法とは、国家の統治の基本を定めた法であり、近代以前の国家を含めあらゆる国家に存在するものである。
形式的意味の憲法と実質的意味の憲法
形式的意味の憲法とは、憲法という形式で成文の法典として定められたもの(憲法典)をいい、実質的意味の憲法とは、その存在形式(成文か不文か)のいかんを問わず、国家の統治の基本について定めた法をいう。
硬性憲法と軟性憲法
硬性憲法とは、憲法の改正が通常の法律よりも困難な手続によるものとされている憲法をいい、軟性憲法とは、通常の法律と同様の手続で改正できる憲法をいう。
ドイツ基本法の憲法分類
ドイツ連邦共和国基本法は、改正に連邦議会の法定議員数の3分の2及び連邦参議院の表決数の3分の2の賛成を要する(79条2項)硬性憲法であり、戦後に多数回改正されてきたことは軟性憲法であることを意味しない。
日本国憲法の硬性性
日本国憲法96条1項は、憲法改正に各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と国民投票による過半数の賛成を要件として定めており、通常の法律改正より加重された手続を要求している。
固有の意味の憲法と立憲的意味の憲法
固有の意味の憲法とは国家の統治の基本的な在り方を定めた法を指し国家が存在する限りいかなる時代にも存在するものであって、これに対して立憲的意味の憲法とは国家権力を制限して国民の権利を保障するという思想に基づく近代以降の憲法のことをいう。
立憲主義の本質的要素
立憲的意味の憲法(立憲主義に基づく近代の憲法)は、人権の保障と権力分立による権力の制限をその本質的要素とし、フランス人権宣言16条が「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社会は、すべて憲法をもつものではない」と宣言したことにその思想的基盤がある。
立憲的意味の憲法
立憲的意味の憲法とは、国家権力を制限し国民の権利を保障するという近代立憲主義の理念に基づく憲法をいう。
主権の三つの意味
主権には国家の統治権としての意味、国家権力の最高独立性としての意味、及び国政の最終決定権としての意味の三つの用法がある。
絶対王政期における主権概念
絶対王政の時代には国家の主権と国王の主権を区別することに意味がなく、現に両者は一体的に捉えられていた。
ポツダム宣言と統治権としての主権
ポツダム宣言第8項の「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」にいう主権は、国家の統治権としての意味の主権である。
連邦国家と主権の帰属
連邦国家においても、主権は連邦に帰属すると解するのが一般的であり、連邦国家も主権国家である。
国家法人説と主権
統治権という意味での主権は国家に属すると考える国家法人説は、君主主権と国民主権のどちらにも結び付き得る考え方である。
憲法9条1項の「戦争」の解釈
憲法9条1項の「国際紛争を解決する手段として」の「戦争」という文言を不戦条約に見られるような通常の国際法上の用例に従って解釈すると、それは侵略戦争を指し自衛戦争は含まれないことになるから、この解釈は、同項は自衛のためであると侵略のためであるとを問わず全ての戦争を放棄したとする見解の根拠とはならず、同項が放棄したのは侵略戦争に限られるとする見解の根拠となる。
9条2項の戦力不保持の趣旨
憲法9条2項が戦力の不保持を定めているのは、わが国が戦力を保持し自らその主体となってこれに指揮権・管理権を行使することにより同条1項において放棄するとした侵略戦争を引き起こすことがないようにするためであるとの見解(砂川事件判決)からは、同項が保持を禁止した戦力はわが国が主体となって指揮権・管理権を行使し得る戦力をいい、わが国に駐留する外国の軍隊はこれに該当しないことになるから、この見解は、日米安保条約に基づき駐留するアメリカ合衆国の軍隊が同項の「戦力」に該当するとの見解の根拠とはならない。
憲法9条の権利侵害と裁判上の救済
憲法9条は国家の統治機構・統治活動について定めたものであって国民の権利を直接保障したものではないとの立場に立つと、同条に違反する具体的な立法又は行政処分により個人に何らかの不利益が生じたとしても、同条で保障された個人の権利が侵害されたものということはできない。
平成17年10月25日甲府地方裁判所(自衛隊イラク派遣違憲確認等請求事件)
9条の個人権利性に関する学説
憲法9条の平和は国民一般の公益であって個人の具体的権利ではないとする見解がある一方、前文の平和的生存権を根拠に個人の権利性を認める立場もあり、長沼ナイキ事件第1審(札幌地判昭48.9.7)は平和的生存権を認めた。
9条前文と平和主義の趣旨
憲法9条は前文における平和主義の原則を受けて規定されたものであり平和達成のための禁止事項を前文よりも具体的に列挙しているが、これは国家機関に対して一定の行為を禁止するものであって、その保護法益は国民一般の公益であるとの見解は、同条に違反する具体的な立法又は行政処分により個人に何らかの不利益が生じたとしても同条で保障された個人の権利が侵害されたものということはできないとする見解の根拠となる。