条文・判例・学説を体系的に整理
抵抗権と最高法規性の関係
日本国憲法において抵抗権が認められるという見解は、抵抗権が憲法に定められていないが超憲法的な根拠によって認められる制度であり、憲法の最高法規性を担保する手段(憲法保障制度)の一つに位置付けられるから、憲法が最高法規であることと矛盾しない。
国家緊急権の憲法明文規定
憲法が最高法規と位置付けられる場合であっても、国家緊急権を憲法に明文で規定することは論理的にあり得る。
平和的生存権と原告適格
判例は、保安林指定解除処分の取消訴訟における周辺住民の原告適格を森林法所定の直接の利害関係を有する者として認めるにとどまり、憲法前文の平和的生存権の侵害のおそれを原告適格の根拠として認めてはいない。
昭和57年9月9日最高裁第一小法廷民集36巻9号1679頁(保安林解除処分取消)
憲法前文と平和的生存権
憲法前文は全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有することを確認する旨を宣言している。
戦力の不保持
憲法9条2項は陸海空軍その他の戦力の不保持と国の交戦権の否認を定めている。
砂川事件の条約違憲審査と統治行為論
日米安全保障条約のように高度の政治性を有する条約の内容が違憲か否かの法的判断は、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限り、裁判所の司法審査権の範囲外のものである(砂川事件判決)。
昭和34年12月16日最高裁大法廷刑集13巻13号3225頁(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反)
外国軍隊と戦力の概念
憲法9条2項が保持を禁止した戦力とは我が国が主体となってこれに指揮権・管理権を行使し得る戦力をいうものであり外国の軍隊はたとえそれが我が国に駐留するとしてもここにいう戦力には該当しない。
昭和34年12月16日最高裁大法廷刑集13巻13号3225頁(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反)
基本的人権と最高法規性の実質的根拠
憲法97条は基本的人権を侵すことのできない永久の権利として位置付けており、憲法の最高法規性を実質的に根拠付けるものと解される。
憲法優位説と違憲条約の効力
憲法と条約の効力関係に関する憲法優位説によれば、条約を違憲審査の対象とし得るが、適式な手続を経て締結されたある条約が違憲と判断された場合でも当該条約の国際法上の効力は失われないため、我が国は依然として当該条約を履行する義務を負うこととなる。
憲法98条と法令の効力
憲法98条1項は憲法が国の最高法規であることを定め、憲法に反する法律・命令・詔勅等は効力を有しないと規定する。
憲法98条2項と条約の遵守義務
憲法98条2項が遵守を求める「確立された国際法規」の意義を「国際社会において一般に承認されている成文・不文の国際法規」と解する説に立てば、我が国が締結していない条約に規定されている事項であっても、それが一般に承認された国際法規に当たる限り同条項が定める遵守義務の対象となり得る。
憲法改正の発議要件
憲法96条1項は各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならないと定めている。
憲法28条の私人間効力
憲法28条の労働基本権の保障は、国の立法・行政に対する効果にとどまらず、使用者と労働者という私人間の法律関係にも一定の効果を及ぼすと解されている。
自衛隊用地売買と憲法9条の直接適用
国が自衛隊の用地取得のために私人と締結した土地売買契約は、当該契約が実質的にみて公権力の発動たる行為と何ら変わりがないといえるような特段の事情のない限り、憲法9条の直接適用を受けず私法の適用を受けるにすぎない。
平成元年6月20日最高裁第三小法廷民集43巻6号385頁(不動産所有権確認、所有権取得登記抹消請求本訴、同反訴、不動産所有権確認、停止条件付所有権移転仮登記抹消登記請求本訴、同反訴及び当事者参加)
憲法24条2項の立法裁量とその限界
憲法24条2項は、婚姻及び家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、同条1項も前提としつつ、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すことによって、その裁量の限界を画したものである。
平成27年12月16日最高裁大法廷民集69巻8号2586頁(夫婦別姓訴訟)
憲法24条と人格的利益の尊重
憲法24条の要請、指針は、単に、憲法上の権利として保障される人格権を不当に侵害するものでなく、かつ、両性の形式的な平等が保たれた内容の法律が制定されればそれで足りるというものではなく、憲法上直接保障された権利とまではいえない人格的利益をも尊重すべきこと、両性の実質的な平等が保たれるように図ること、婚姻制度の内容により婚姻をすることが事実上不当に制約されることのないように図ること等についても十分に配慮した法律の制定を求めるものである。
平成27年12月16日最高裁大法廷民集69巻8号2586頁(夫婦別姓訴訟)
婚姻制度と婚姻の自由の関係
婚姻及び家族に関する法制度の内容に意に沿わないところがあることを理由として婚姻をしないことを選択した者がいるとしても、これをもって、直ちにその法制度を定めた法律が婚姻をすることについて憲法24条1項の趣旨に沿わない制約を課したものと評価することはできない。
平成27年12月16日最高裁大法廷民集69巻8号2586頁(夫婦別姓訴訟)
幸福追求権と輸血拒否判決
憲法13条は、すべて国民は個人として尊重され、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については公共の福祉に反しない限り最大の尊重を必要とすると定めているが、輸血拒否に関する判例(最判平12.2.29)は、輸血を伴う医療行為を拒否する意思決定をする権利を「人格権の一内容」として尊重されなければならないとしたものであり、憲法13条には言及していない。
婚姻家族の個人の尊厳と両性の本質的平等
憲法13条は、すべて国民は個人として尊重されると定め、憲法24条2項は、婚姻及び家族に関する事項に関しては、法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないと定めている。
法の下の平等の意義
憲法14条1項は法の下の平等を定め、合理的な理由のない差別的取扱いを禁止している。
昭和39年5月27日最高裁大法廷民集18巻4号676頁(待命処分無効確認、判定取消等請求)