条文・判例・学説を体系的に整理
形式的意味の憲法
「憲法」が成文の憲法を指す場合に「形式的意味の憲法」と呼ばれるが、この意味の憲法はその内容において人権保障に関する規定が含まれているかどうかを問わない。
固有の意味の憲法
国家であれば権力の組織や構造が定まっていると考えられ、この意味では全ての国家は憲法を持つと言われるが、この場合の「憲法」は「固有の意味の憲法」と呼ばれる。
憲法改正国民投票の過半数の意味
憲法改正に必要な国民投票の「過半数の賛成」について、日本国憲法の改正手続に関する法律は、投票総数(賛成の投票の数と反対の投票の数の合計)の二分の一を超える賛成を必要とすると定めている。
立憲的意味の憲法
1789年フランス人権宣言第16条において、権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社会は全て憲法を持つものではない旨が示されているが、この場合の「憲法」は「立憲的意味の憲法」あるいは「近代的意味の憲法」と呼ばれる。
日本国憲法前文の裁判規範性
日本国憲法前文は、国民主権、基本的人権の尊重及び平和主義の基本原理を明らかにする憲法典の一部であるが、同前文だけを直接の根拠として具体的な裁判上の救済を求められるという意味での裁判規範性が最高裁判例上認められているわけではない。
平成元年6月20日最高裁第三小法廷民集43巻6号385頁(不動産所有権確認、所有権取得登記抹消請求本訴、同反訴、不動産所有権確認、停止条件付所有権移転仮登記抹消登記請求本訴、同反訴及び当事者参加)
天皇の人権制約と学問の自由
天皇は国民に含まれるとされるが、象徴たる地位と憲法4条1項の趣旨から基本的人権の享有に制限があり表現・言論にも制約があるため、学問の自由についても、政治的中立性が問われる場面(政治問題にからむ研究成果の発表など)では制約があり得る。
天皇に対する民事裁判権の否定
最高裁は、天皇が日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることに鑑み、天皇には民事裁判権が及ばないとした。
平成元年11月20日最高裁第二小法廷民集43巻10号1160頁(住民訴訟による損害賠償)
皇位の世襲と皇室典範による具体化
憲法2条は皇位が世襲のものであることを定め、皇位継承に関する事項は皇室典範で定めるとしているが、継承順位の具体的な在り方は皇室典範に委ねられており、皇長子の長子より皇次子を優先させることとしても憲法に反しない。
天皇の政治的行為の禁止
天皇は、象徴たる地位と憲法4条1項(国政に関する権能を有しない)の趣旨から、重大な政治的論争の対象となっている事項について是非を明らかにするような行為はされるべきでないとされ、特定の政党への加入のような政治的色彩の強い行為も許されないと解される。
摂政に対する民事裁判権の判例上の扱い
最判平成元年11月20日は、天皇には民事裁判権が及ばないとしたが、その判決文は摂政に言及しておらず、摂政に民事裁判権が及ぶかどうかを判示していない。
9条1項限定放棄説と2項の帰結
憲法9条1項について、侵略戦争を放棄したものであり自衛戦争を放棄したものではないという考え方に立った場合でも、同条2項前段によって一切の戦力の保持が禁止されており、同条2項後段によって交戦権も否認されているとの考え方に立てば、結果として自衛のための戦争も放棄されていることになる。
戦力不保持と自衛戦争の帰結
戦争はおよそ国際紛争解決の手段として行われるものであり、その目的のいかんを問わず憲法9条1項により放棄されているという考え方に立った場合、同条2項の「前項の目的を達するため」という文言を戦力不保持を定めるに至った動機を示すものと解したとしても、既に1項によって自衛のための戦争も放棄されていることになる。
9条と交戦権・自衛権の関係
憲法9条1項について、侵略戦争を放棄したものであり自衛戦争を放棄したものではないという考え方に立った場合であっても、自衛のための戦力は持てるとする立場においては、9条2項の「交戦権」を国として戦いを交える権利と解するときはその否認により自衛のための戦争は認められないことになり、「交戦国としての権利」と解するときは自衛戦争は可能とされるから、交戦権の意義の理解いかんによって結論が異なり得る。
憲法改正の限界説
憲法改正に限界があるとする見解は、憲法改正権は憲法制定権力により制度化された権限であって制定権力そのものとは異なるから、憲法の基本原理を変更することは許されないとする。
憲法制定権力と憲法改正権の同質性論
憲法を始源的に創設する憲法制定権力と憲法によって与えられた憲法改正権とが同質であるとの見解は、憲法改正に理論上の限界はないとする無限界説の根拠となり得る。
憲法改正の発議要件
憲法96条1項は各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならないと定めている。
憲法改正の公布と「直ちに」の趣旨
憲法96条2項は、国民の承認を経た憲法改正について、天皇が国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布すると定めており、「直ちに」とは事情の許す限り速やかにという意味であるから、公布を恣意的に遅らせてはならない。
在監関係における人権制約と法定主義
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律は、書籍等の閲覧、面会及び信書の発受の制限について要件を法定しているが、その要件は「おそれがあるとき」「管理運営上必要な制限」といった文言で定められ、制限は刑事施設の長が「することができる」とされており、刑事施設の長は制限の可否について裁量を失っていない。
特別権力関係論の否定
特別権力関係論は、公権力が包括的支配権を有し法律の根拠なく人権を制限でき司法審査も及ばないとする理論であるが、日本国憲法の下では妥当し難いとされる。
氏の家族呼称としての意義
最大判平成27年12月16日は、氏に社会の構成要素である家族の呼称としての意義があることから婚姻を含めた身分関係の変動に伴って氏が改められることがあり得ることはその性質上予定されているとしつつ、本件で問題となっているのは婚姻という身分関係の変動を自らの意思で選択することに伴って夫婦の一方が氏を改める場面であって、自らの意思に関わりなく氏を改めることが強制されるものではないとした。
平成27年12月16日最高裁大法廷民集69巻8号2586頁(夫婦別姓訴訟)