条文・判例・学説を体系的に整理
天皇の「おことば」と象徴行為
「おことば」を象徴としての地位に基づく公的行為であると捉える見解については、象徴としての地位が天皇の一身専属のものであることを前提にすると天皇の権能を代行する摂政は「おことば」を述べることができないのではないかという問題点がある。
天皇の「おことば」と準国事行為説
天皇の「おことば」を国事行為に密接に関連する準国事行為と位置付ける場合にも、内閣の助言と承認に準ずる統制を及ぼす余地がある。
天皇の「おことば」と儀式行為説
天皇の「おことば」を憲法7条10号の「儀式を行ふ」に含める見解には、同号を儀式の主宰だけを意味すると解する限り文理上の難点がある。
自然法論的な憲法改正限界説
憲法改正の限界説は、憲法規範には実定化された自然法規範が含まれており、それは実定化されても自然法規範としての性質を失わないことを根拠の一つとする。
改正無限界説と規範の同価値性
憲法規範に価値序列や段階性は認められず、「不変」「不可侵」「永久」等の語を用いて定めた改正禁止規定は、たやすく改正すべきではないとの考えを明らかにしたものにすぎないとするのは、憲法改正無限界説の立場である。
改正無限界説と世代間拘束の否定
法は人間の社会生活に奉仕する手段であり、社会は絶えず変化するものであるから、現在の規範・価値によって将来の世代を拘束するのは不当であるとするのは、憲法改正無限界説の立場である。
国家緊急権と憲法上の根拠
国家緊急権は外敵の侵入・内乱や大規模な災害などにより国家の存立が脅かされる事態に至った場合に執り得る非常措置権であり、諸外国には憲法の明文で国家緊急権を容認している例がある。
抵抗権の実定法化の可否
抵抗権は立憲主義秩序が破壊された場合に国民が抵抗する権利であり、その性質上当然に実定法化が不可能というわけではない。
憲法9条1項と自衛戦争の可否
第1項で侵略戦争は放棄されているが自衛戦争は放棄されていないとし、第2項の「前項の目的を達するため」を侵略戦争放棄の目的を達するためとする見解に対しては、日本国憲法には第66条第2項の文民条項以外に戦争や軍隊を予定する規定が存在しないとの批判が当てはまる。
九条侵略戦争限定説と国際法用例の批判
「国際紛争を解決する手段としての戦争」は国際法上「国家の政策の手段としての戦争」と同義であるとして国際法上の用例の尊重を説く批判は、憲法9条1項が侵略戦争のみを放棄したとする見解には当てはまらない。
9条の全面放棄説
第1項で侵略戦争は放棄されているが自衛戦争は放棄されていないとし、第2項の「前項の目的を達するため」を戦争を放棄するに至った動機を一般的に指すとする見解と、第1項で自衛戦争を含む全ての戦争が放棄されているとする見解のいずれの見解を採っても、憲法第9条により全ての戦争が放棄されているとの結論が導かれる。
憲法改正規定と違憲審査制
憲法の連続性を維持するための特別な手続を定める憲法改正規定や憲法の最高法規性を確保するために特別な合憲性統制の途を設ける違憲審査制は、ともに憲法の保障の一つの方法として位置付けられる。
在外選挙と選挙区選挙
在外邦人選挙権訴訟判決の考え方に従えば、衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙においても、在外日本国民の選挙権の行使を制限することは違憲となりうる。
平成17年9月14日最高裁大法廷民集59巻7号2087頁(在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件)
昭和女子大事件と私立大学の規律権
私立大学はその設置目的を達成するために必要な事項を規定する権能を有するから、その伝統・校風や教育方針に鑑み学生の政治的活動につきかなり広範な規律を及ぼすことも、直ちに不合理な制限には当たらない。
昭和49年7月19日最高裁第三小法廷民集28巻5号790頁(身分確認請求)
入会権の男子孫限定と公序良俗
長期間にわたり形成された地方の慣習に根ざした権利である入会権については、その慣習が存続しているときは最大限尊重すべきであるが、権利者の資格を男子孫に限る旨の慣習は公序良俗に反する。
平成18年3月17日最高裁第二小法廷民集60巻3号773頁(地位確認等請求事件)
憲法の私人間効力
趣旨・目的・法文から私人間に直接適用される人権規定を除き、自由権的基本権や平等原則の趣旨は、民法90条等の私法の一般条項の解釈適用を通じて私人間にも及ぶとするのが通説・判例の立場である。
昭和48年12月12日最高裁大法廷民集27巻11号1536頁(三菱樹脂事件)
前科照会事件と前科の秘匿
前科は人の名誉・信用に直接関わる事項であり、前科のある者もこれをみだりに公開されないという法的保護に値する利益を有するから、弁護士法に基づく照会の申出書に「裁判所に提出するため」等とあったにすぎない場合に、市区町村長が漫然と照会に応じて犯罪の種類・軽重を問わず前科等の全てを報告することは、公権力の違法な行使に当たる。
昭和56年4月14日最高裁第三小法廷民集35巻3号620頁(損害賠償等)
自動速度監視装置と肖像権
個人の私生活上の自由の一つとして何人もその承諾なしにみだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するが、速度違反車両の自動撮影を行う自動速度監視装置による写真撮影は犯罪捜査の必要性・相当性があるから本人の同意や裁判官の令状がなくても許される。
昭和61年2月14日最高裁第二小法廷刑集40巻1号48頁(道路交通法違反被告事件)
在外邦人選挙権制限違憲判決の基本的立場
在外邦人選挙権制限違憲訴訟上告審判決は、国政選挙の選挙権について「国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として議会制民主主義の根幹を成すもの」であり、民主国家においては一定の年齢に達した国民の全てに平等に与えられるべきものであると指摘しているが、同判決の考え方に従ったとしても自ら選挙の公正を害する行為をした者の選挙権について一定の制限をすることまで違憲となるわけではない。
平成17年9月14日最高裁大法廷民集59巻7号2087頁(在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件)
非嫡出子相続分規定違憲決定と先例的拘束性
嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする民法の規定は遅くとも同規定が違憲とされた事案の被相続人の相続が開始した時点において憲法14条1項に違反していたとする最高裁判所の決定は、先例としての事実上の拘束性を有する。
平成25年9月4日最高裁大法廷民集67巻6号1320頁(遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件)