条文・判例・学説を体系的に整理
納税義務と租税法規違反
憲法30条の納税義務は憲法上の義務であるがその具体的内容は法律によって定められるため、国民が税金を納付しない場合の法的責任は租税法規違反にとどまり直接に憲法違反が問われるものではない。
近代立憲主義の定義
立憲主義とは、政治は憲法に従ってなされなければならないという思想をいい、そこでいう憲法は人権保障と権力分立の原理に支えられたものでなければならないとされるから、近代立憲主義は、単に成文憲法に基づいて国家運営を行おうとする思想・実践を意味するものではない。
マグナカルタの性格
1215年のマグナカルタを近代的な成文憲法の確立と位置づけることはできず、近代立憲主義は、アメリカ独立宣言・合衆国憲法・フランス人権宣言など18世紀の市民革命期の流れの中で整理される。
フランス人権宣言16条の要件
1789年のフランス人権宣言16条は「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもたない」と規定し、近代立憲主義の要件として権利保障と権力分立の双方を要求している。
19世紀自由国家と違憲審査制
19世紀の「自由国家」の時代には自由の保障が強調されていたが、違憲立法審査権を裁判所に認める国はアメリカ合衆国など例外的であり、多くの国では議会主権の下で裁判所による違憲審査は行われなかった。
不文憲法と立憲主義の関係
イギリスは成文憲法典を持たない不文憲法の国であるが、慣習法・制定法・判例法等の蓄積により立憲主義を実現しており、立憲主義は成文憲法典の存在を不可欠の前提としない。
第二次大戦前の人権の国際的保障
第二次世界大戦以前は人権一般の国際的保障制度が未整備で、人権は基本的に国内問題とされたが、少数者保護・委任統治・国際労働基準などの個別制度は存在した。
世界人権宣言の法規範性
第二次世界大戦後に国際連合において採択された世界人権宣言は、国際社会における人権に関する最も基本的な宣言であるが、宣言であるため直接の法規範性を有しない。
国際人権規約の法規範性
第二次世界大戦後に国際連合において採択された国際人権規約は、世界人権宣言の内容を基礎としてこれを条約化したものであり、法規範性を有している。
参議院議員選挙の投票価値の較差
判例は、参議院議員選挙における投票価値の較差について、都道府県を各選挙区の単位とする仕組み自体の見直しを含め、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要である旨を指摘している。
平成24年10月17日最高裁大法廷民集66巻10号3357頁(参議院議員選挙無効請求事件)
1人別枠方式の合理性喪失
判例は、衆議院小選挙区選挙の1人別枠方式について、選挙制度導入初期の激変緩和措置としての合理性は既に失われ、選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたとしたが、憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったものではないとして、違憲とはしなかった。
平成23年3月23日最高裁大法廷民集65巻2号755頁(選挙無効請求事件)
選挙権の保障と投票機会の確保
判例は、国民の選挙権の保障は投票をする機会の保障をも含むものであり、選挙権を制限するにはそのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないとしている。
平成17年9月14日最高裁大法廷民集59巻7号2087頁(在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件)
政党本位の選挙制度と立法裁量
判例は、衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党に選挙運動を認め無所属候補者には政見放送等ができない不利益が生ずる仕組みについて、政策・政党本位の選挙制度の実現という立法目的に照らし立法裁量の範囲内であるとした。
平成11年11月10日最高裁大法廷民集53巻8号1704頁(選挙無効請求事件)
選挙権制限のやむを得ない事由
判例は、自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選挙権について一定の制限をすることは別として、そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合でない限り、選挙権の行使を制限するやむを得ない事由は認められないとしている。
平成17年9月14日最高裁大法廷民集59巻7号2087頁(在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件)
選挙権の憲法上の保障
憲法15条1項は公務員の選定罷免権を国民固有の権利として保障し、同条3項は成年者による普通選挙を保障しており、選挙権は国民の基本的権利として手厚い保障が与えられている。
租税法における立法裁量
国民の租税負担を定めるには国政全般からの総合的政策判断と極めて専門技術的な判断が必要となるので、租税法の分野における取扱いの区別は、立法目的が正当で区別の態様が目的との関連で著しく不合理でない限り憲法14条1項に違反しない。
昭和60年3月27日最高裁大法廷民集39巻2号247頁(所得税決定処分取消)
堀木訴訟と併給調整の合憲性
障害福祉年金と児童扶養手当は共に社会保障給付であり、両給付が基本的に同一の性格を有するものと見得る場合には、併給調整条項を設けることは立法府の合理的裁量の範囲内であって憲法14条1項に違反しない。
昭和57年7月7日最高裁大法廷民集36巻7号1235頁(行政処分取消等)
社会的身分と高齢による区別
憲法14条1項の「社会的身分」とは人が社会において占める継続的な地位をいい、高齢であることはこれに当たらないが、同項は後段列挙事由以外の事由による不合理な差別も禁じているから、高齢を基準とする取扱いも、合理的な理由がなければ同項に反する。
昭和39年5月27日最高裁大法廷民集18巻4号676頁(待命処分無効確認、判定取消等請求)
憲法14条1項の列挙事由と平等原則
憲法14条1項は人種、信条、性別、社会的身分又は門地を列挙するが、これらは例示であり、列挙事由以外の事由による差別も同項の平等原則に反し得る。
昭和39年5月27日最高裁大法廷民集18巻4号676頁(待命処分無効確認、判定取消等請求)
平等原則の意義と相対的平等
憲法14条1項にいう法の下の平等とは絶対的平等ではなく相対的平等を意味し、事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づく区別的取扱いは同項に違反しない。
昭和39年5月27日最高裁大法廷民集18巻4号676頁(待命処分無効確認、判定取消等請求)