条文・判例・学説を体系的に整理
憲法改正無限界論への批判
憲法改正無限界論を前提に日本国憲法が大日本帝国憲法の改正として有効に成立したとする説に対しては、憲法改正には限界があり、国民主権への原理的変更は改正の限界を超えるとの批判がなされる。
8月革命説への批判
日本のポツダム宣言受諾によって天皇主権から国民主権への変更が生じ、日本国憲法は新たな主権者による新憲法制定であると主張する説に対しては、ポツダム宣言は日本に直ちに国民主権の採用を要求したものではないとの批判がなされている。
憲法無効論への批判
国家の自主性が失われていた占領下において成立した日本国憲法は無効であるとする説に対しては、ポツダム宣言・降伏文書に従った占領軍の要求は国際法上違法ではなく、また国内での国民による自律的判断は存在したといえるとの批判がなされている。
前文の法規範性
前文は、日本国憲法という法典名の後に置かれているばかりでなく、その内容が憲法制定の目的や憲法の基本原理を含んでいることから、その法的規範性が是認される。
主権の対外的独立性
憲法前文第3段で「自国の主権を維持し」という場合の主権は、対外的な独立性に重点を置いた意味で使われている。
主権の存する国民
憲法1条で「主権の存する日本国民の総意」という場合の主権は、国の政治のあり方を最終的に決定する権力又は権威を意味する。
国民主権の権力的契機
憲法96条1項の規定する憲法改正手続における国民投票は、国民主権の権力的な契機の表れといえる。
平和的生存権の裁判規範性
前文第2段は「平和のうちに生存する権利」を謳っているが、最高裁判所はその裁判規範性を認めていない。
平成元年6月20日最高裁第三小法廷民集43巻6号385頁(不動産所有権確認、所有権取得登記抹消請求本訴、同反訴、不動産所有権確認、停止条件付所有権移転仮登記抹消登記請求本訴、同反訴及び当事者参加)
前文の改正手続
前文は、法律の場合と同じ手続ではなく、憲法改正手続によってのみ改正することができる。
実質的最高法規性
憲法の最高法規性は憲法規範の内容が他の法規範とは質的に異なることから導かれるが、このような意味における最高法規性が一般に実質的最高法規性と呼ばれている。
最高法規性と違憲審査権
憲法が最高法規であることから必ずしも違憲審査権が司法府に与えられなければならないわけではない。
法の段階構造と最高法規性
憲法は授権するのみで授権されることはないため、実定法秩序における法の段階構造を前提にすれば、憲法の最高規範性が導き出される。
直接効力説の問題点
直接効力説は、私人間に憲法規範を直接適用するものであるが、国家が私人の自由な活動領域に過度に介入する糸口を与えかねない。
間接効力説の特徴
間接効力説は、私法の一般条項に人権価値を充塡しようとするものであるから、充塡の程度により結論が大きく異なり得る。
間接効力説と国家権力
間接効力説は、私人による人権侵害の危険性が増大していることに対応しようとするものであるが、国家権力がなお人権にとっての最大の脅威であることを無視しているわけではない。
指紋押なつの自由
指紋はそれ自体では個人の私生活や人格、思想、信条、良心等個人の内心に関する情報となるものではないが、何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有する。
平成7年12月15日最高裁第三小法廷刑集49巻10号842頁(外国人登録法違反)
容ぼう撮影と第三者
何人もその承諾なしにみだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有するが、現に犯罪が行われ又は行われた後間がないと認められる場合で、証拠保全の必要性・緊急性があり、一般的に許容される限度を超えない相当な方法で行われるときは、無令状・無承諾でも警察官が撮影でき、その際に犯人の身辺等にいて除外できない状況にある第三者の容貌等が写り込んでも許容される。
昭和44年12月24日最高裁大法廷刑集23巻12号1625頁(公務執行妨害、傷害)
住基ネットと情報自由
住民基本台帳ネットワークシステムにより行政機関が住民の本人確認情報を収集、管理又は利用する行為は、当該住民がこれに同意していなくとも、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではない。
平成20年3月6日最高裁第一小法廷民集62巻3号665頁(損害賠償請求事件)
外国人の政治活動の自由
基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き、外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきで、政治活動の自由についても、政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑み相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ。
昭和53年10月4日最高裁大法廷民集32巻7号1223頁(在留期間更新不許可処分取消)
外国人の地方参政権
我が国に在留する外国人には、居住する地方公共団体の長及びその議会の議員に対する選挙権が憲法上保障されていない。
平成7年2月28日最高裁第三小法廷民集49巻2号639頁(選挙人名簿不登録処分に対する異議の申出却下決定取消)