条文・判例・学説を体系的に整理
固有の意味の憲法と立憲的意味の憲法
国家統治の基本を定めた法としての憲法を「固有の意味の憲法」と呼び、そのうち国家権力を制限して国民の権利を保障するという思想に基づくものを特に「立憲的意味の憲法」と呼んで区別することがあり、この区別は憲法の内容に着目した区別であり憲法の存在形式とは無関係である。
形式的意味の憲法と実質的意味の憲法
憲法という名前で呼ばれる成文の法典を「形式的意味の憲法」と呼び「実質的意味の憲法」と区別することがあり、この区別の意義は、本来憲法典に書かれるべきことが書かれないことがあり、逆に本来憲法の内容となるべきでないものが憲法典の中に書かれることがあるという点に注意を促すことにある。
憲法改正国民投票制の廃止
憲法改正国民投票制は国民の憲法制定権力の思想を端的に具体化したものであるとの見解によれば、これを廃止することは改正権の自己否定であり、国民主権の原理を揺るがす意味を持つので、憲法改正によっても国民投票制を廃止することは許されない。
憲法改正国民投票の過半数の意味
憲法改正に必要な国民投票の「過半数の賛成」について、日本国憲法の改正手続に関する法律は、投票総数(賛成の投票の数と反対の投票の数の合計)の二分の一を超える賛成を必要とすると定めている。
憲法改正の公布
憲法改正について国民の承認を得たときは、天皇は「国民の名で、この憲法と一体を成すものとして」公布すると規定されており、これは憲法改正権が国民にあることを明確にし、改正された部分も他の部分と同様の最高法規としての効力を有することを意味する。
国民主権における国民の意義
憲法の国民主権の原理における国民とは、最高裁判所の判例が示すところによれば、主権が日本国民に存するとする憲法前文及び1条の規定に照らして、日本国の国籍を有する者を意味するものとされる。
平成7年2月28日最高裁第三小法廷民集49巻2号639頁(選挙人名簿不登録処分に対する異議の申出却下決定取消)
主権の多義性と国権
主権という言葉は多義的であり、国民主権、国家主権のほかに国家権力(統治権)そのものを意味する場合もあり、憲法9条1項及び41条で使われている「国権」とは、この国家権力そのものを表すものとして使われている。
国民投票権者と選挙権者の関係
憲法改正における国民投票は国民主権の具体化といえるが、憲法は投票権者の範囲を法律に委ねているから、投票権者の要件を公職選挙法の選挙権者の要件と異なって定める法律も、直ちに違憲となるものではない。
砂川事件の条約違憲審査と統治行為論
日米安全保障条約のように高度の政治性を有する条約の内容が違憲か否かの法的判断は、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限り、裁判所の司法審査権の範囲外のものである(砂川事件判決)。
昭和34年12月16日最高裁大法廷刑集13巻13号3225頁(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反)
砂川事件と自衛権
憲法9条は、我が国が主権国として持つ固有の自衛権を否定するものではなく、憲法前文の趣旨からして、国際連合のような国際機関にばかりでなく、他国に安全保障を求めることを禁じるものではない。
昭和34年12月16日最高裁大法廷刑集13巻13号3225頁(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反)
外国軍隊と戦力の概念
憲法9条2項が保持を禁止した戦力とは我が国が主体となってこれに指揮権・管理権を行使し得る戦力をいうものであり外国の軍隊はたとえそれが我が国に駐留するとしてもここにいう戦力には該当しない。
昭和34年12月16日最高裁大法廷刑集13巻13号3225頁(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反)
憲法9条と私法上の行為
憲法9条は国の基本的な法秩序を示した規定であり、憲法より下位の法形式による全ての法規の解釈適用に当たってその指導原理となり得るものであるが、私法上の行為の効力を直接規律するものではない。
平成元年6月20日最高裁第三小法廷民集43巻6号385頁(不動産所有権確認、所有権取得登記抹消請求本訴、同反訴、不動産所有権確認、停止条件付所有権移転仮登記抹消登記請求本訴、同反訴及び当事者参加)
最高法規性の根拠
憲法の最高法規性は、憲法が硬性憲法として国法秩序において最も強い形式的効力を持つ点にのみ求められるのではなく、憲法がいかなる基本価値を体現しているかということにも関係する。
憲法17条の意義
国又は公共団体の行為が非権力的な管理作用に属する場合は、大日本帝国憲法下でも判例上民法709条以下の規定による不法行為責任がある程度まで認められていたため、日本国憲法17条の意義は権力作用に属する不法行為との関係で国家無答責の原則を否定し国家の賠償責任を明記した点にある。
国家賠償法の立法裁量
憲法17条が「法律の定めるところにより」としているのは、公務員のどのような行為によりいかなる要件で賠償責任を負うかを立法府の政策判断にゆだねたものであるが、立法府に無制限の裁量権を付与する白紙委任を認めたものではなく、免責・責任制限の規定が同条に適合するかは、目的の正当性とその手段の合理性・必要性を総合的に考慮して判断される。
平成14年9月11日最高裁大法廷民集56巻7号1439頁(損害賠償請求事件)
特別権力関係論の内容
特別権力関係論によれば、公権力と特別な関係にある者に対して公権力が包括的な支配権を有し、公権力は法律の根拠なく人権を制限することができ、それについて裁判所の審査は及ばない。
特別権力関係の成立類型
特別権力関係が成立する場合としては、法律の規定に基づくものと本人の同意に基づくものとがあり、前者の例は受刑者の在監関係であり、後者の例は公務員の在勤関係及び国公立学生の在学関係である。
特別権力関係論の問題点
特別権力関係論には、特別権力関係に属する者が一般国民としての地位に何らかの修正を受ける点で共通の特色を持つにとどまるにもかかわらず、権力服従性という形式的要素によって包括し、人権制約を一般的・観念的に許容する点で本質的な問題がある。
投票価値の平等の憲法上の要請
憲法14条1項に定める法の下の平等は、選挙権に関しては、国民は全て政治的価値において平等であるべきとする徹底した平等化を志向するものであり、選挙権の内容すなわち各選挙人の投票の価値の平等も憲法が要求するところである。
昭和51年4月14日最高裁大法廷民集30巻3号223頁(選挙無効請求)
条例による地域差と平等原則
地方公共団体が売春の取締りについて各別に条例を制定する結果その取扱いに差異を生じても憲法14条1項に反しないとした最大判昭33.10.15の多数意見は、憲法が条例制定権を認める以上、地域による差別は憲法みずから容認するところであることを論拠とした。
昭和33年10月15日最高裁大法廷刑集12巻14号3305頁(売春等取締条例違反)