条文・判例・学説を体系的に整理
積極国家と行政府の役割
20世紀の積極国家・社会国家の要請に伴って行政活動の役割が飛躍的に増大し、行政府が国の基本政策の形成決定に事実上中心的役割を営むようになっており、立法府が行政府をどこまでコントロールできるかが問題となる。
象徴としての行為と私的行為
天皇の「象徴としての行為」を認める立場においても、魚類学の研究成果の公表は学術研究という純粋に私的な行為であり、「象徴としての行為」ではなく私的行為に該当する。
天皇の刑事訴追の可否
天皇に対する刑事訴追の可否については憲法上も法律上も明文の定めがないが、摂政等の規定からの類推により天皇に対する刑事訴追は許されないと解される。
内閣の助言と承認の意義
内閣の「助言」と「承認」について、最高裁判所が両者を区別して事前の申出と事後の認定とする解釈を示した判例は存在せず、両者はいずれも閣議により決定しなければならないとする判例も存在しない。
会社の政治活動の自由と政治献金
会社は、自然人と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有し、政治資金の寄附も会社によりなされた場合に国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。
昭和45年6月24日最高裁大法廷民集24巻6号625頁(取締役の責任追及請求)
強制加入の税理士会の政治献金と会費
税理士会は強制加入団体であり会員の脱退の自由が保障されていないから、税理士会が政治資金規正法上の政治団体に対して金員を寄附することは、税理士法改正に関わるものであっても、税理士会の目的の範囲外の行為であり、その寄附のため会員から特別会費を徴収する決議は無効である。
平成8年3月19日最高裁第三小法廷民集50巻3号615頁(選挙権被選挙権停止処分無効確認等)
外国人再入国の自由と平成十年判決
外国人に対する憲法の基本的人権の保障は外国人在留制度の枠内で与えられているにすぎず、外国人の再入国の自由は憲法22条2項によって保障されるものではない。
平成10年4月10日最高裁第二小法廷民集52巻3号776頁(再入国不許可処分取消等)
昭和58年参院定数判決の内容
最高裁昭和58年4月27日大法廷判決は、参議院議員選挙の特殊性として地方選出議員の地方代表的性格、半数改選制、解散がないことなどを重視して合憲としたが、地方選出議員の地方代表的性格を否定したものではない。
昭和58年4月27日最高裁大法廷民集37巻3号345頁(選挙無効)
平成8年参院定数判決
最高裁平成8年9月11日大法廷判決は、最大較差1対6.59倍について違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態が生じているとしたが、是正のための合理的期間は徒過していないとして合憲とした。
平成8年9月11日最高裁大法廷民集50巻8号2283頁(選挙無効)
平成21年参院定数判決
最高裁平成21年9月30日大法廷判決は、結論として合憲としつつも、投票価値平等の観点から大きな不平等が存し較差の縮小を図ることが求められること、そのためには現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要であると判示した。
平成21年9月30日最高裁大法廷民集63巻7号1520頁(選挙無効請求事件)
租税法における立法裁量
国民の租税負担を定めるには国政全般からの総合的政策判断と極めて専門技術的な判断が必要となるので、租税法の分野における取扱いの区別は、立法目的が正当で区別の態様が目的との関連で著しく不合理でない限り憲法14条1項に違反しない。
昭和60年3月27日最高裁大法廷民集39巻2号247頁(所得税決定処分取消)
憲法14条1項後段の列挙事由
憲法14条1項後段に列挙された事由は例示的なものであって必ずしもこれに限る趣旨ではなく、同項は合理的理由のない区別を禁止する趣旨であるから、事柄の性質に即応して合理的と認められる区別は許される。
昭和39年5月27日最高裁大法廷民集18巻4号676頁(待命処分無効確認、判定取消等請求)
受刑者の信書発信制限
受刑者が国会議員あての請願書の内容を記した手紙を新聞社に送付しようとする場合、刑事施設の長がこれを制限し得るのは、具体的事情の下でそれを許可することが施設内の規律及び秩序の維持等の点において放置できない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があるときに限られる。
平成18年3月23日最高裁第一小法廷集民219号947頁(損害賠償請求事件)
取材源秘匿と証言拒絶
民事訴訟法197条1項3号の「職業の秘密」には報道関係者の取材源の秘密が含まれるが、当該事案において証言拒否が認められるか否かは、さらに比較衡量によって決せられる。
平成18年10月3日最高裁第三小法廷民集60巻8号2647頁(証拠調べ共助事件における証人の証言拒絶についての決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件)
取材の正当性の限界
報道機関の取材の手段・方法が、贈賄、脅迫、強要等の一般の刑罰法令に触れなくても、取材対象者の人格の尊厳を著しく蹂躙する等法秩序全体の精神に照らして社会観念上是認できない態様の場合には、正当な取材行為の範囲を逸脱し違法性を帯びる。
昭和53年5月31日最高裁第一小法廷刑集32巻3号457頁(国家公務員法違反)
未決拘禁者の新聞購読制限と審査基準
未決拘禁者が刑事施設内で特定の新聞を私費により定期購読することを制限する場合、その合憲性は当該具体的な事情の下で相当の蓋然性基準によって判断すべきであり、より制限的でない他の選び得る手段があるかどうかという基準によるべきではない。
昭和58年6月22日最高裁大法廷民集37巻5号793頁(損害賠償)
教科書検定と表現の自由
教科書検定が教科書執筆者の表現行為を制限することになるとしても、教育の中立・公正、一定水準の確保等の要請にかんがみれば、検定による表現の自由の制約は合理的で必要やむを得ない限度のものであるから、憲法21条1項に違反しない。
平成5年3月16日最高裁第三小法廷民集47巻5号3483頁(損害賠償請求事件)
法廷メモと一般人の筆記行為
一般人の筆記行為の自由は報道機関の取材の自由と同様に憲法21条の精神に照らして十分尊重に値するが、法廷でメモを取る行為について一般の傍聴者と司法記者クラブ所属記者を区別することには合理的理由がある。
平成元年3月8日最高裁大法廷民集43巻2号89頁(メモ採取不許可国家賠償請求事件)
教科書検定と検閲の定義
教科書検定は、検定で不合格とされた図書を一般図書として「思想の自由市場」に流通させることを何ら妨げるものではなく、発表禁止目的や発表前の審査等の特質がないから、憲法21条2項の「検閲」には当たらない。
平成5年3月16日最高裁第三小法廷民集47巻5号3483頁(損害賠償請求事件)
大学の自治と学長人事
学長人事は、大学の自治の重要な内容の一つである。
昭和38年5月22日最高裁大法廷刑集17巻4号370頁(暴力行為等処罰ニ関スル法律違反)