条文・判例・学説を体系的に整理
法の支配の意義
法の支配とは、専断的な国家権力の支配、すなわち人の支配を排し、権力を法で拘束することによって、国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理である。
法の支配における法の実質的適正
法の支配における「法」とは、議会が制定したという形式的要件だけでなく、その内容が適正でなければならないという実質的要件を含む観念であり、基本的人権の思想と結びついている。
政府解釈の憲法9条二項の目的
政府は、憲法9条2項冒頭の「前項の目的を達するため」という言葉は、1項全体の趣旨、すなわち自衛権は否定されず自衛のための必要最小限度の武力の行使が認められているということを受けたものと解し、自衛のための必要最小限度の実力の保持は2項が禁じる「戦力」に当たらないとしている。
新三要件と集団的自衛権の政府解釈
現在の政府解釈は、新三要件を満たす自衛のための必要最小限度の武力行使について、国際法上集団的自衛権を根拠とする場合も認める。
憲法98条二項の条約の範囲
憲法98条2項にいう「日本国が締結した条約」は、日本国と外国との間の文書による合意を広く含むが、日本国が外国の国有の土地を賃借する契約のように、両当事者が純然たる私人の立場で結んだものは含まない。
特別裁判所の禁止と司法権の強化
憲法76条2項前段の特別裁判所の設置の禁止は司法権の拡大強化を示すが、後段は行政機関が終審として裁判を行うことを禁じるにとどまり、行政機関による裁判の全面的禁止ではない。
私人間の人権非適用説と国家社会二元論
人権規定は特段の定めのある場合を除いて私人間に適用されないとする説は、憲法は国家対国民の関係を規律するという考え方を根拠とし、人権がすべての法秩序に妥当すべき価値であるとの考え方は、この説への批判として挙げられる。
人権の直接適用説への批判
憲法の人権規定を私人間に直接適用する説に対しては、私的自治の原則(契約自由の原則)が害されること、基本的人権の対国家的性質が変質ないし希薄化するおそれがあることが批判として挙げられる。
私人間の人権非適用説と間接適用説
社会的権力による人権侵害の危険性の増大を看過しているという批判は、人権規定は私人間に適用されないとする非適用説に向けられるものであり、私法の一般条項を通じて憲法の趣旨を取り込む間接適用説はこれに応える通説・判例の立場である。
社会的権力と国家支配の性質の区別
私人間の社会的力関係の優劣は、法的裏付けないし基礎を欠く単なる社会的事実としての力の優劣にすぎず、国又は公共団体の支配が権力の法的独占に基づいて行われる場合とは性質上の相違があるとして、人権規定の適用ないし類推適用を認める見解は採用できないとされる(最大判昭48.12.12)。
昭和48年12月12日最高裁大法廷民集27巻11号1536頁(三菱樹脂事件)
京都府学連事件の容貌撮影の自由
京都府学連事件判決は、憲法13条に基づき、個人の私生活上の自由の一つとして、何人もその承諾なしにみだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するとしたが、これをプライバシーの権利と呼んではいない。
昭和44年12月24日最高裁大法廷刑集23巻12号1625頁(公務執行妨害、傷害)
一般的自由説と保障の程度の区別
幸福追求権の内容を人格的生存に不可欠な利益に限定しない一般的自由説をとることは、個々の自由や権利の保障の程度について人格との関連性を考慮することと必ずしも矛盾しない。
人格的利益説と髪型の自由の範囲
人格的利益説では、どのような権利・自由が人格的生存にとって不可欠な利益であるかは必ずしも明らかでなく、髪型の自由のような自己決定権についても、論者の間で不可欠な利益に当たるか否かの見解が分かれる。
条例による地域差と平等原則
地方公共団体が売春の取締りについて各別に条例を制定する結果その取扱いに差異を生じても憲法14条1項に反しないとした最大判昭33.10.15の多数意見は、憲法が条例制定権を認める以上、地域による差別は憲法みずから容認するところであることを論拠とした。
昭和33年10月15日最高裁大法廷刑集12巻14号3305頁(売春等取締条例違反)
非嫡出子相続分決定の合理性審査
非嫡出子相続分を2分の1とする旧民法900条4号ただし書前段を合憲とした平成7年7月5日大法廷決定の多数意見は合理的根拠と著しい不合理性を審査し、共同反対意見は立法目的自体の合理性及び手段との実質的関連性についてより強い合理性を検討した。
平成7年7月5日最高裁大法廷民集49巻7号1789頁(遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告)
尊属殺違憲判決と執行猶予の不能
尊属殺に関する削除前の刑法200条を違憲とした最大判昭48.4.4の多数意見は、酌量減軽しても執行猶予を付すことができない点を刑の不均衡の理由の一つとしており、執行猶予の要件が緩和されて可能になれば違憲ではないと解する余地がある。
昭和48年4月4日最高裁大法廷刑集27巻3号265頁(尊属殺人)
再婚禁止期間の目的と父性立証の容易化
女性のみに再婚禁止期間を定めていた民法733条の立法趣旨は、父性の推定の重複の回避と父子関係をめぐる紛争の防止にあるとされ(最判平7.12.5)、父子関係の立証が容易になった現状の下でも、この立法目的の合理性を肯定することは可能である。
平成7年12月5日最高裁第三小法廷集民177号243頁(損害賠償)
人権の理念上の不可侵性
憲法11条及び97条は、基本的人権を侵すことのできない永久の権利として定めており、人権が理念として不可侵であることを明らかにしている。
憲法13条の自由と指紋押捺の強制
最高裁は、憲法13条に基づき、みだりに容ぼう・姿態を撮影されない自由のほか、みだりに指紋の押なつを強制されない自由も個人の私生活上の自由として認めており、前科をみだりに公開されない自由に限られない。
平成7年12月15日最高裁第三小法廷刑集49巻10号842頁(外国人登録法違反)
在留外国人の出国と再入国の自由
日本に在留する外国人には出国の自由はあるが、再入国の自由については争いがあり、判例は在留外国人に外国へ一時旅行する自由は憲法上保障されないとする。
平成4年11月16日最高裁第一小法廷集民166号575頁(再入国不許可処分取消等)