条文・判例・学説を体系的に整理
制度化された制憲権と憲法改正の限界
憲法改正権は制憲権が憲法典に取り込まれた「制度化された憲法制定権力」であり、自己の存立基盤である制憲権の所在(国民主権)を変更することはできないから、この理解からは憲法改正には限界があることになる(改正限界説)。
八月革命説と憲法改正限界説
ポツダム宣言の受諾により主権の所在が天皇から国民に移ったとする八月革命説は、憲法改正には限界があるという立場(改正限界説)を採りつつ、明治憲法の改正手続を経て成立した日本国憲法の制定を正当化しようとするものである。
憲法改正国民投票の実施時期
憲法96条1項は、国民の承認について「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票」によるとしているから、憲法上は必ず特別の国民投票が実施されなければならないわけではなく、衆議院議員総選挙や参議院議員通常選挙の際に国民の投票を求めることも認められる。
憲法改正の過半数と硬性憲法
憲法96条1項の「その過半数」を有効投票の過半数と解する見解が支配的とされるが、憲法改正の重要性や硬性憲法であることを重視する立場からは、ごく少数の賛成で改正が決まることを避けるため、投票総数の過半数など、有効投票の過半数より厳格に解することになる。
憲法前文の主権と対外的独立性
憲法前文の「自国の主権を維持し」にいう「主権」は、国家の統治権ではなく、国家意思の対外関係における独立性・最高性を意味する。
国民主権の正当性説と民意反映の要請
国民主権の意義を国家権力の正当性が国民に由来することと解する立場からすると、国民主権の原理は国家権力の行使が全国民の名の下で行われるべきことを意味するにとどまり、実際に国家の意思決定に国民の意思が的確に反映される仕組みを作ることまでは要請されない。
国民主権原理と天皇の国民性
日本国憲法の国民主権原理が明治憲法の天皇主権の否定として表明されたものだという趣旨からしても、天皇が国民でないことは当然には導かれず、天皇が憲法上の国民に含まれるかについては議論がある。
ポツダム宣言の主権と統治権
ポツダム宣言8項の「主権」は国家の統治権の意味であり、国政のあり方を最終的に決定する権力ないし権威を意味する憲法1条の「主権」とは意味が異なる。
天皇による内閣の助言承認の拒否
天皇の国事行為には内閣の助言と承認が必要で内閣がその責任を負い、天皇は国政に関する権能を有しないから、天皇は内閣の助言と承認が不当であると判断した場合でも、これを拒むことは認められない。
国事行為についての内閣の責任
天皇の国事に関するすべての行為には内閣の助言と承認を必要とし、内閣がその責任を負うから、天皇が国事行為の責任を問われることはなく、天皇の発案に基づいて国事行為を行うことも予定されていない。
衆議院解散と天皇の政治責任
天皇の国事行為である衆議院の解散(7条3号)は内閣の助言と承認によって行われ、その責任は内閣が負うから(3条)、天皇に解散権があるとしても、国会が天皇の政治責任を追及することは認められない。
天皇の国事行為と国政権能の否定
憲法4条1項により、天皇は憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しないから、国事行為以外に国政に関する権能を行使することが認められる場合はない。
天皇の国事行為の委任
憲法4条2項により、天皇は法律の定めるところによりその国事に関する行為を委任することができるから、天皇の権能が一身に専属し他に委任できないわけではない。
摂政の国事行為と内閣の責任
摂政は天皇の名でその国事に関する行為を行い(憲法5条)、その行為には内閣の助言と承認を要し内閣が責任を負う(5条後段による4条1項の準用、3条)から、摂政が自らの名で国事行為を行いその責任が摂政に帰属するわけではない。
総理大臣任命への内閣の助言承認
天皇による内閣総理大臣の任命(憲法6条1項)について、通説的見解は内閣の助言と承認が必要とするが、国会の指名がある以上助言と承認は無意味とする見解(宮沢俊義)もあり、憲法が定める天皇の任命行為がすべて内閣の助言と承認に基づいて行われると断定することはできない。
国会開会式のおことばと儀式説
国会開会式の「おことば」を憲法7条10号の「儀式を行ふこと」に含めて理解する見解に立てば、それは国事行為であるから、3条により内閣の助言と承認が必要となる。
自衛権の肯定
憲法9条は我が国が主権国として持つ固有の自衛権を否定するものではなく憲法の平和主義は決して無防備・無抵抗を定めたものではない。
昭和34年12月16日最高裁大法廷刑集13巻13号3225頁(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反)
憲法9条と私法上の行為
憲法9条の宣明する国際平和主義・戦争の放棄・戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範はそれに反する私法上の行為の効力を一律に否定する作用を営むことはない。
平成元年6月20日最高裁第三小法廷民集43巻6号385頁(不動産所有権確認、所有権取得登記抹消請求本訴、同反訴、不動産所有権確認、停止条件付所有権移転仮登記抹消登記請求本訴、同反訴及び当事者参加)
外国軍隊と戦力の概念
憲法9条2項が保持を禁止した戦力とは我が国が主体となってこれに指揮権・管理権を行使し得る戦力をいうものであり外国の軍隊はたとえそれが我が国に駐留するとしてもここにいう戦力には該当しない。
昭和34年12月16日最高裁大法廷刑集13巻13号3225頁(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反)
三菱樹脂事件の秘匿と本採用拒否
三菱樹脂事件判決は、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも当然に違法となるものではないとしたが、本採用の拒否(留保解約権の行使)は客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるとしており、入社試験の際に学生運動歴を秘匿していたことを理由に本採用を拒否できるとはしていない。
昭和48年12月12日最高裁大法廷民集27巻11号1536頁(三菱樹脂事件)