条文・判例・学説を体系的に整理
妨害予防請求権と過去の損傷
所有権に基づく妨害予防請求権は物権侵害のおそれがあれば行使でき、相手方が過去に一度も損傷させたことがないことは、その行使を妨げない。
妨害排除請求権と消滅時効
所有権に基づく妨害排除請求権は、所有権が存続する限り消滅時効にかからない。
大正5年6月23日大審院民録22巻1161頁(損害賠償請求)
物権的請求権と相手方の故意・過失
土地の所有者が、洪水のため土地に流されてきた自動車の所有者に対し、所有権に基づく妨害排除請求権の行使として撤去を求めた場合、自動車の所有者は、所有権侵害について故意過失がないことを主張立証しても、その請求を拒むことはできない。
未成年者に対する物権的請求権
土地に無断で自転車を放置した者は、土地所有者から所有権に基づく妨害排除請求権の行使として撤去を求められたときに、自己が未成年者であることを理由としてその請求を拒むことはできない。
地上権に基づく妨害排除請求権
地上権者は、地上権の目的である土地に無断で自動車を放置した者に対し、地上権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車の撤去を求めることができる。
従物の要件と主物所有者への帰属
物の所有者がその物の常用に供するため従物とすることができるのは、自己の所有に属する他の物を附属させた場合であり、他人の所有に属する物を附属させても従物にはならない。
天然果実の帰属(分離する時)
天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。
未分離の天然果実の取引と明認方法
未分離の天然果実も、明認方法を施すことにより、独立の物として取引の対象とすることができる。
抵当権の従物への効力と別段の定め
抵当権は、設定行為に別段の定めがある場合には、付加して一体となっている物に及ばず、従物は主物の処分に従うとの規定(民法87条2項)も任意規定であるから、当事者が従物に抵当権の効力を及ぼさない旨を合意したときは、抵当権はその従物に及ばない。
法人合併による物権の混同
法人合併により同一法人が地上権と地上権を目的とする抵当権を取得したときは、地上権を目的とする抵当権は混同により消滅するが(民法179条2項本文)、地上権自体は消滅しない(地上権と土地所有権が同一人に帰したわけではないため)。
一筆の土地の一部に対する物権
物権は、一筆の土地の一部についても成立することがある。
昭和30年6月24日最高裁第二小法廷民集9巻7号919頁
物権的請求権の譲渡と独立の消滅時効
所有権に基づく物権的請求権は所有権と独立に譲渡することはできず、所有権とは別に消滅時効にかかることもない(所有権は消滅時効にかからないため)。
大正5年6月23日大審院民録22巻1161頁(損害賠償請求)
賃貸借終了後の所有権と契約の返還請求
建物の賃貸借契約が終了したとき、建物の所有者である賃貸人は、賃貸借契約の終了に基づく返還請求のほか、所有権に基づく返還請求(物権的請求権)をすることもできる。
建物収去土地明渡請求の相手方
他人の土地に権原なく建物を建てた者が、その建物を第三者に賃貸した場合でも、土地の所有者は、建物の所有者に対して建物収去土地明渡しを請求することができる。
昭和35年6月17日最高裁第二小法廷民集14巻8号1396頁(建物収去土地明渡請求)
物権的請求権行使の故意過失の不要
所有権に基づく妨害排除請求権の行使には、相手方に事理弁識能力があることも、妨害状態の発生について故意又は過失があることも必要でない。
共有者の保存行為による全体の妨害排除
畑として使用されてきた共有地を第三者が一部の共有者の承諾を得て造成して宅地にしようとした場合、他の共有者は、単独で、共有持分権に基づく物権的請求権(保存行為)の行使として、土地全体について造成行為の禁止を求めることができる。
平成10年3月24日最高裁第三小法廷集民187号485頁(共有持分権に基づく妨害排除、遺言無効確認等)
建築中の建物の独立不動産性
建築中の建物は、屋根及び周壁を有し、土地に定着して用途に供し得る状態になった段階で独立の不動産である建物となり、屋根瓦を葺き荒壁を塗り床及び天井を張ることまでは要しない。
独立性のない増築部分の付合
建物の増築部分が、構造上建物としての独立性を欠き、従前の建物と一体となって利用され取引されるべき状態にあるときは、既存建物に附合してその構成部分となり(民法242条)、既存建物の従物ではない(最判昭43.6.13)。
昭和43年6月13日最高裁第一小法廷民集22巻6号1183頁(家屋明渡請求)
売買目的物の引渡前の果実の帰属
賃貸中の動産を売却した場合、引渡し前にその物が生じた果実(法定果実である賃料)は売主に帰属し、買主が売買契約時に賃料債権を取得するわけではない(民法575条1項)。
明認方法による立木の物権変動の対抗
物権法定主義の下でも、立木や未分離果実の物権変動については、法律に規定のない明認方法が慣習上の対抗要件として認められており、法律に規定された登記や引渡し以外の対抗要件が認められないわけではない。