2026年 予備試験 論文式 倒産法 第1問
問題
配点 50点[倒 産 法]
次の【事例】について、以下の設問に答えなさい。
なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、令和8年1月1日現在において施行されている法令に基づいて答えなさい。
【事例】
外壁塗装業を営むA株式会社(以下「A社」という。)は、令和7年10月1日、B株式会社(以下「B社」という。)との間で、B社が所有する商業ビルの外壁塗装工事を請負代金3000万円で施工する旨の請負契約(以下「契約①」という。)を締結した。この契約には、「A社の責めに帰すべき事由により工期内に工事が完成しないために契約が解除された場合、A社はB社に対し、請負代金の10%に相当する300万円を違約金として支払う。」という特約(以下「本件違約金条項」という。)があらかじめ定められていた。その後、A社は現場にて順次外壁塗装工事を進めていた。
他方、A社は、令和8年1月15日、内装業を営むC株式会社(以下「C社」という。)との間で、A社が所有する事務所ビルの内装工事を請負代金1000万円でC社が施工する旨の請負契約(以下「契約②」という。)を締結し、C社は直ちに内装工事を開始した。
同年3月下旬になると、A社は主要な取引先の倒産により資金繰りがひっ迫した。そこで、A社の代表取締役Dからの懇請を受けたE銀行は、同月31日、A社に対し、救済融資として1500万円を貸し付け(以下、E銀行のA社に対する貸金債権を「本件貸金債権」という。)、同日、Dの伯父Fが、本件貸金債権を被担保債権として、Fの所有する甲土地に抵当権を設定した。しかしながら、A社は、その後も経営状況が急速に悪化し、資金繰りに目途が立たなくなったため、顧問である弁護士Gに相談し、破産手続開始の申立てを依頼した。同年4月15日、弁護士Gは、A社の代理人として、全ての取引先・債権者に対して、A社は事業を停止し、破産手続開始の申立てをする予定である旨の通知を送付した。
これを受けてC社は、全体の約半分(出来高は500万円相当とする。)まで内装工事を進めた状況で工事を一旦中断した。
一方、B社所有の商業ビルの外壁塗装工事の現場では、A社の資金不足により、必要な資材の調達ができなくなったため、全体の1割(出来高は300万円相当とする。)の施工を終えた時点で工事が中止されていた。
同月20日、A社は、破産手続開始の申立てをし、同年5月1日、A社について、裁判所により破産手続開始の決定がなされ、破産管財人として弁護士Hが選任された。
〔設問〕以下の1から3については、それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1 B社は、施工期限までにA社による外壁塗装工事が完成する見込みがなくなったため、令和8年4月16日、契約①を解除し、本件違約金条項に基づき、A社に対し、300万円の違約金債権を取得した。
同年5月25日、破産管財人Hは、B社に対し、契約①が解除されるまでにA社が既に施工を終えていた出来高部分の未払報酬300万円の支払を請求した。これに対しB社は、上記違約金債権300万円を自働債権として相殺する旨を主張し、支払を拒絶した。
B社による相殺の可否について、破産管財人Hによる反論を踏まえつつ論じなさい。
2 A社所有の事務所ビルの内装工事の現場を調査した破産管財人Hは、ビルの内装工事を更に進める必要があるか検討している。C社もまた、内装工事を中止した場合に、既に発注して納品されている資材のキャンセル料など合計400万円の損害が見込まれるため、対応を検討している。
⑴ 破産管財人Hは、契約②を解除することができるか。その理由とともに、説明しなさい。また、契約②を解除することができる場合には、施工済みの出来高に係る工事代金500万円とC社の損害金400万円は、A社の破産手続においてどのように扱われるかについても説明しなさい。
⑵ C社は、契約②を解除することができるか。その理由とともに、説明しなさい。また、契約②を解除することができる場合には、施工済みの出来高に係る工事代金500万円とC社の損害金400万円は、A社の破産手続においてどのように扱われるかについても説明しなさい。
3 E銀行は、A社の破産手続において、本件貸金債権1500万円につき、破産法の規定に従い、破産債権の届出をした。なお、中間配当の手続は行われなかったものとする。A社の破産手続の最後配当の手続に先立ち、F所有の甲土地に設定されていた抵当権が実行され、その担保不動産競売手続において、E銀行は、本件貸金債権に対する弁済として、令和8年6月1日、甲土地の売却代金から1000万円の配当を受けた。その後に行われるA社の破産手続の最後配当において所要の手続をとったE銀行への配当について、配当額の計算の基礎となる破産債権の額はいくらか。その理由とともに、説明しなさい。ただし、本件貸金債権の利息及び損害金は考慮しないものとする。
出典:法務省「2026年司法試験予備試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。